第十話∶意志
【下野鉄太】
最近、康介をその辺で見かけたって噂を聞く。
自分が世界で一番不幸だって顔して、金もねーくせに松葉杖でうろついてるみたいだ。
それで最近は時間も出来たことだし、ちょっとその辺歩いてみたら、ホントに雑巾みたいな感じでそこにいた。
「おい、康介。」
アイツはダセぇジャージで地べたに座り込んで、転がした松葉杖の横でずーっと地面を見てた。
「おう。」
「⋯⋯鉄太君。………元気?」
「この前会ったろ。まぁ、ちゃんと話すのは久しぶりだな。」
「昔はいつも一緒だったのにね。」
「おー、いっつも俺の後ついて来てたのにな。まぁ、俺はお前と違って、もっと色んなことしてーんだよ。」
「ダラダラして何もやってないだけじゃん。本当はもっとすごいくせに。」
「言うようになったじゃねーか。いーんだよ、俺はこれで。てか、お前病院出てきて大丈夫なのかよ。まぁいいか。よっと、これ食う?」
俺は康介の隣に座って、コンソメパンチの袋をバリっと開いた。
「いいよ、ありがと。入院は⋯そう長く入ってもいられないから。まぁ、じっとしてられなくてここにいるんだから丁度良かったんだけどね。」
「あっそ。ちなみにコレが俺のしたいことの一つ。」
コンソメパンチをバリバリと口いっぱいに頬張って、食べカス散らかしながら自慢げに笑ってやった。
康介は相変わらずしょぼくれてやがる。
コイツは昔っから予想を裏切らねー。
俺は立ち上がって康介を見下ろした。
「期待通りダセぇな。どうよ、俺は。やりたいことやってるぜ。俺を縛ったり制限するやつなんていねーんだ。イキイキしてるだろ。自慢してやろうと思って、見下してやろうと思って来てやった。」
二重顎作ってデニーロみたいなポーズでおちょくってやったぜ。
って、ここまでしてやったのに下ばっか向いて見もしねー。
「相変わらずウジウジしてやがる。ちょっとエラソーになったかと思えば、昔と変わんねー。ホレ、これ食うか?」
もう一回コンソメパンチを差し出した。
「要らないっていってるだろ!!」
あー!このヤロウ、俺のコンソメパンチを叩き飛ばしやがった。
「勿体な。美味いのによ、これ。何やりたいんだよ、お前は。美味いもん食うのも我慢してよ。やりてぇことやればいいだけだろが。お前はあべこべだよ。」
「………鉄太みたいに簡単じゃないんだよ。」
「ほら、ウジウジ言い訳してやがる。さっさと特待獲ったら見直してやるよ。もうムリって決まった訳じゃねーんだろ、なにがあったか知らねーけどよ。とにかくだ。それまで、お前はやりたいことやってる俺様と対等に話ができる身分じゃねーんだ。ガキの頃みてーにもっと卑屈になるか?自分の分際をわきまえてシコシコ励めよ。」
康介は地面を見たままだ。
あー、やれやれだぜ。
俺は言うだけ言って気持ちよくなったから、帰ってゲームでもしよーっと。
って思ったら、昔は俺のゲーム機を羨ましそうに見つめてたコイツの顔を思い出した。
「うらぁあ!!ムカつくな、テメェは!クソっ!!」
俺は拾ったコンソメパンチを康介に投げつけた。
治りかけだった右掌の傷が開く。
俺は俺で楽しくやってんだよ、文句あるかよ。
「………頑張れよ。」
「……………うん。」




