↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/20

第十一話∶刃

【濱田耕次/ハマダコウジ】


ほんの小さな気の迷い。

それが台無しにした。


高校でやり直せばいい?

違う。

元を絶たなければまた繰り返す。


それは部活に限らず、人生において通じる真理だ。

心配しなくちゃいけないことは徹底的に排除しておくんだ。

俺は生き方を変える。




先ずは、あの三人にわからせてやることから始めよう。

低脳でダラダラ遊んでるだけのクズ共にとことん付き合ってやろうじゃないか。


「面白いものを見せてやるから、立ち会ってくれないか?」


暇そうにしてる似たような奴らに声をかけて回って、そいつらと三人を夜の高架下に集めた。


「十万ある。一対一でやろう。誰か一人でも俺に勝てたらくれてやる。」


期待した以上の大歓声だ。

奴らに降りる選択肢は残さない。


当たり前だが、その少し後に一人目が俺の足元に転がった。

ただ、これで終わりじゃない。

俺は馬乗りになって殴り続けた。


「おい、もうやり過ぎだろ!」


観客の一人がしゃしゃり出てきて俺の肩を掴んだ。


「お前、レフリー?違う、俺は用意していない。つまりここじゃ当人同士で気が済むまでがルールだ。黙ってろ。」


俺は再び殴り始めた。


「やめ⋯や⋯謝る⋯ごめ⋯ごめんなさ⋯やめ⋯すい⋯許し⋯」


何か言ってやがるが、言い終わるより先に拳を落とし続ける。

目的は怪我をさせることじゃない。

わからせてやることだ。


その後、俺はそれを二回繰り返した。

終わってから拳の激痛に気付き、流石に無理し過ぎたとは思った。

ただ、ここからが一番大事なんだ。


「お前ら三人、来月から俺に金持ってこい。ていうか、ねぇ誰かコイツらから金を回収してきてくれないかな。そしたら、その半分をプレゼントするよ。」




その「システム」は当たった。

不良共に娯楽の刺激と秩序をもたらした。


俺は月に一度、あの三人から集めた金を賞金にしてマッチメイクを組んだ。

最初は因縁のある者同士だったのが、段々とエンタメになっていった。

あと、流石にレフリーは要るだろって話で一番ガタイの良いやつに任せた。

負けた奴は三人と同じく上納金を支払い続ける羽目になるが、その金はレフリー報酬含めた運営費と賞金に充てられる。


何回か乗っ取りを目論んだ奴も来たが、その都度俺がきっちり返り討ちにしてやった。

危なかった勝負でも800メートル走で鍛えた折れない心で押し切れた。

根性が違う。


気付いたら俺はこのエリアを取り仕切る、ちょっとしたスターになっていた。

最近じゃ試合前にチョコを食う俺のことをチョコハンマーと呼ぶ奴も出てきた。

流石にダサい呼び名が気に食わないから、そう言ってるやつを見つけたら締め上げてるうちに、俺はハマさんと呼ばれるようになった。




それからは暫く順調に進んでいたんだが、問題が発生した。


負けた奴が上納金を作るために特定のイジメられっ子からカツアゲを続けたらしく、そいつが自殺してしまった。

そんなことは想定していたから、事前にそれを禁じて監視役まで付けて運営してたのに、監視役ごとそのカツアゲに加担してやがった。

特に監視役は警察の拘束が終わったら、他の奴らにも届くように徹底してわからせてやらなきゃいけない。


それと、このシステムを継続するには人員と教育の見直しが必要だ。

頭が悪くたっていい。

こんな話を気に食わないって思うやつ。


そう言えば、最近チョコを買いに行かせてるガキがいたな。

この前は季節限定とか言ってふざけたやつを持って来たバカだが、アイツは使えるかもしれない。




「すいません。そーゆー話、俺には無理っす。頭悪いし。勘弁してください。」


夜の公園に呼び出した鉄太は、俺に向かって普通に断りやがった。


「お前、度胸あるな。」


俺はベンチから立ち上がって鉄太の前に詰め寄った。


「断れるわけねーだろ?言っとくけど追い込まれるのお前だけじゃなくて、お前の兄貴もだからな。」


「あ、俺アイツ嫌いなんで大丈夫っす。問題ないです。」


俺は苦笑いした。

そうか、こうなるケースもあるか。

そりゃそうだよな。


「あー!メンドクセー!!いいからやれってんだよ!!殺すぞ!!」


俺は思わずナイフを出して突き付けた。

その時、鉄太が頭を押さえた。


「痛って⋯。耳鳴り⋯⋯?」


「あ?何言って⋯⋯」


次の瞬間、鉄太がナイフを掴んだ。

俺が予想外の展開を理解できずにいるうち、鉄太はそのナイフを奪って咄嗟に防御した俺の腕に突き刺しやがった。

コイツ、今殺す気で腹を刺しに来たぞ!?




「待て!」


俺はナイフが刺さったままの腕で制した。

確かにしっかり刺さってる。

こりゃ暫く使い物になりそうにない。


俺は大きな溜め息を吐いた。


「⋯⋯⋯ダメか。詰んだな、潮時だ。この大事なタイミングでこんなことなっちまったら統制なんてやりきれない。」


鉄太は自分がやったことに驚いて整理がついてない感じだ。

それでいて、俺の反撃に怯えて身構えている。


「逃げろ。もういい、行け。俺も悪かった。このナイフは知らんやつに襲われたことにしといてやる。」




今度は素直に俺の言う事聞いて、鉄太は走り去った。


こーゆーのって抜くと出血ヤバいんだよな?

じゃあ病院まで刺しっぱなし?

エグっ。




痛みを誤魔化したくて星を見上げた。


そう言えば、そろそろまたブロック大会の頃だな。

一年前じゃこんな状況、予想もせんかったわ。


康介ってやつ、活躍してんだろーなー。


あー、痛って⋯ぇな⋯⋯。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。