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才能EXの落ちこぼれ召喚士〜成長の鍵は地脈だった!?〜  作者: SN


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第5話 成長


正月休みも残りわずか。

蓮たちは学園へ戻ってきていた。


「まずは確かめよう」


向かった先は学園の訓練場。

ゴロは戦闘形態となり、何度も訓練標的へ拳を打ち込む。


鈍い音が響く。

以前よりも深く標的が揺れた。

移動速度も速い。

踏み込みも軽い。


「やっぱり違う」


蓮は小さく頷く。

存在階位が上がったことで、ゴロの身体能力そのものが底上げされていた。


「数字だけじゃない。

 ちゃんと強くなってる」


ゴロは嬉しそうに胸を叩いた。


──どんっ。


夏希も笑顔になる。


「これなら迷宮でも試せそうだね」

「ああ」


蓮は頷いた。


「明日、行ってみる」


◇


翌日。


蓮はゴロを連れ、学園近くの迷宮へやって来た。


夏希は学園で訓練中だ。

実力差もあり、迷宮攻略は蓮一人で行うことになっていた。


挑むのはE級迷宮“牙爪ノ森”。

蓮たちが何度も挑戦してきた迷宮だった。


「久しぶりだな」


ゴロも頷く。


ここは牙と爪が発達した獣系魔物が多く出現する迷宮として知られている。


牙爪兎。

牙爪猪。

牙爪熊。


出現する魔物の多くが、鋭く大きな牙や爪を武器としていた。


これまで攻略できたのは第一階層まで。

第二階層以降は魔物の強さが一段階上がり、蓮たちは何度挑戦しても突破できなかった。


だが。


「今日は違う」


蓮はゴロを見る。


神社巡りで、ゴロの存在階位は大きく上昇した。

どこまで通用するのか。

その答えを確かめるために、二人は再び牙爪ノ森へやって来た。


「行くぞ」


ゴロが頷く。


蓮は召喚紋へ触れた。

魔力が流れ込む。

待機形態だった小さな身体が大きく膨らむ。


成人男性の胸ほどの大きさ。

短い脚。

タルのような分厚い胴体。

そして異様に長く太い両腕。

圧縮された土で構成された重厚な肉体。


戦闘形態となったゴロが拳を握った。


「攻略開始だ」


◇


第一階層。


出現したのは──“牙爪兎”。


ウサギほどの大きさ。

だが口元には鋭い牙が並び、前脚には大きく鋭い鉤爪が生えている。

爪牙ノ森最下級の魔物だった。


とはいえ、以前の蓮たちにとっては油断できない相手だった。

≪大地ノ拳≫を何度か当ててようやく倒せる。

そんな相手だった。


だが。


今はもう違った。


牙爪兎が飛び掛かる。

ゴロは一歩前へ出た。

拳を振るう。


──ドゴッ!


牙爪兎が吹き飛ぶ。

そのまま消滅。


「……え?一撃?」


蓮は目を瞬かせた。


一撃だった。

スキルすら使っていない。

ただ殴っただけ。

それだけで倒してしまった。


「まじか……」


ドヤ顔のゴロ。


次は群れ。

三体の群れが襲い掛かる。


だが結果は同じ。

ゴロの拳が振るわれるたびに魔物が吹き飛び、消滅する。


あっという間に。

群れは全滅していた。


「強くなってる……」


数字ではなく、実感として分かった。

ゴロは確かに強くなっていた。


ゴロも胸を叩く。


──どんっ。


かなり得意気だった。


「そうだな」


蓮は笑う。


「本当に強くなったな」


◇


第二階層。


何度も撤退をさせられた領域。


出現したのは──“牙爪狐”。


赤茶色の毛並みを持つ狐。

細く長い牙と鋭い前爪を持ち、素早さに優れる。

学園の資料では、初心者を翻弄する厄介な相手として記載されていた。


牙爪狐が駆ける。


左右へ。

前後へ。


攪乱するような動き。


だが。


ゴロは落ち着いていた。

飛び掛かってきた牙爪狐へ拳を叩き込む。


──ドゴっ!


牙爪狐は大きく吹き飛んだ。


流石に第一階層のように、一撃で倒すことはできない。

それでも。

続く追撃で、牙爪狐はあっさりと光になった。


続いて現れた三体の牙爪狐も危なげなく倒す。


「第二階層もいける……!」


蓮は思わず拳を握った。


◇


第三階層。


初めて踏み入れる領域。


出現したのは──“牙爪鹿”。


体格は小柄な鹿。

口元から鋭い牙が覗き、前脚には鎌のような爪が生えている。

さらに頭部には大きく枝分かれした角。


「鹿……?」


蓮は少し意外に思った。


だが。


次の瞬間。

牙爪鹿が駆けた。


「速っ!」


一瞬で距離を詰めてくる。

ゴロが拳を振るうが──空振り。


牙爪鹿は軽やかに横へ跳び、そのまま背後へ回り込んだ。


角。

爪。

牙。


次々と攻撃を繰り出してくる。

攻撃そのものは防げる。


だが。


ゴロの拳は当たらない。

何度目かの攻防で、ようやく一撃が直撃する。

牙爪鹿は後方に後ずさる。


しかし。


それだけだった。

再び駆け出す。


「攻撃の通りが悪いな……!」


力では負けていない。

だが、このままでは決定打を与えられない。


ゴロも同じ結論に至ったらしい。

蓮へ視線を向ける。


蓮は頷いた。


「やるぞ」


蓮は牙爪鹿の動きを見つめる。


右へ跳び。

ゴロの背後へ回り込む。

先ほどから、同じ動きを繰り返していた。


「次は右だ」


ゴロが小さく頷く。

ゆっくりと拳を構えた。


「≪大地ノ拳≫!」


ゴロの拳へ魔力が集まる。


牙爪鹿が駆けた。

正面から迫り、直前で右へ跳ぶ。


だが。


今度はゴロも追い掛けない。

振り向きざま。

牙爪鹿の進行方向へ、硬く強化された拳を振り抜いた。


──ドゴッ!


拳が直撃する。

牙爪鹿は大きく吹き飛び、そのまま光となって消滅した。


「よし!」


蓮は拳を握る。


ゴロも満足そうに──どんっ。

と胸を叩いた。


攻略法が分かれば早かった。

複数で現れた牙爪鹿も順調に倒し、第三階層を突破する。


「第三階層も問題なさそうだな」


◇


第四階層。


出現したのは──“牙爪狼”。


大型犬ほどの体格。

口元から突き出た牙と、異様に発達した前脚の爪が特徴だった。


牙爪鹿とは違う。

群れで連携して狩りを行う危険な魔物だ。


低い唸り声。


気付けば三体の牙爪狼がゴロを取り囲んでいた。


「来るぞ」


次の瞬間。


正面の一体が飛び掛かる。

ゴロは拳を叩き込んだ。


──鈍い音。


牙爪狼が吹き飛ぶ。


だが。


消えない。


その隙だった。

左右から二体が飛び掛かる。


鋭い爪が肩を裂き。

牙が腕へ深く突き刺さる。


「くっ……!」


蓮は顔をしかめた。


一体なら問題ない。

だが、三体が連携すると厄介だった。


一体が注意を引く。

その隙に、残る二体が死角から襲い掛かる。


まるで獲物を追い詰める猟犬だった。


しかも。

その牙と爪はゴロの硬い身体に通じている。

無視することもできない。


ゴロも理解したらしい。

蓮を見る。


「長引くと不利だ」


蓮はタイミングを計り、叫ぶ。


「≪大地ノ拳≫!」


ゴロの拳へ魔力が集まる。


踏み込み。

硬く強化された拳を振り抜いた。


──ドゴッ!


正面の牙爪狼が吹き飛び、光となって消えた。


「よしっ!」


残る二体も傷を負いながら迎え撃つ。


受け。

凌ぎ。

反撃。


激しい攻防の末。

最後の一体も光となって消滅した。


静寂が戻る。


「≪修復再生≫!」


淡い光がゴロを包む。


肩の傷。

腕の噛み傷。


少しずつ塞がっていった。


「大丈夫か?」


ゴロは力強く──どんっ。

と胸を叩く。


問題ない。

そう言いたいらしい。


蓮は第五階層へ続く森の奥を見つめた。


「第四階層までは安定して攻略できる。

 でも傷は確実に増えている。

 第五階層は……まだ早そうだな」


今なら突破を狙えなくはない。


だが。


無理をする理由はなかった。

今の実力を確認できただけで十分だった。


◇


迷宮を出た蓮は、小さく息を吐いた。


「ここまで来られるようになるなんてな」


少し前まで第二階層で限界だった。

それが今では第四階層まで安定して攻略できる。


ゴロも誇らしげに胸を叩く。


──どんっ。


「でも、まだ先がある」


蓮は笑う。


「神社を巡れば、お前はもっと強くなれる」


ゴロは力強く頷いた。


存在階位は確実に上がっている。

成長しないと思われていた召喚獣は、今も少しずつ強くなり続けていた。

その事実だけで十分だった。


蓮は拳を握る。


「もっと強くなろうな」


ゴロが大きく胸を叩く。


──どんっ。


その音は以前よりも、ずっと力強く響いていた。


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