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才能EXの落ちこぼれ召喚士〜成長の鍵は地脈だった!?〜  作者: SN


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第30話 週次ランキング戦・剛拳ノ猪鬼


水曜日。


黒曜ノ体の検証を終えた後、蓮はホテルへ戻る前に近隣の神社をいくつか巡った。

ランクアップしたことで、再び存在階位が上がるようになったのかを確かめるためだ。


結果はすぐに出た。


本殿を前にしたゴロが地面へ両手をつくと、石の身体が淡く光り、存在階位が一つ上がった。


「やっぱり、また上がるようになってるな」


以前はF-MAXで止まっていたが、E級へランクアップしたことで再び先へ進めるようになっている。


その後もいくつかの神社を巡り、翌木曜日も遠征から戻る途中で神社巡りを続けた。

その中には、以前一度だけ訪れた場所もあった。


「ここ……」


蓮は境内を見回し、すぐに思い出した。


F-MAXだった頃。

本殿を前にしたゴロが地面へ両手をつき、身体が淡く光った。


だが。


あの時は光が途中で消え、存在階位もF-MAXのままだった。


成長条件そのものは満たしている。

それでも、何かに阻まれて上がれない。


当時はそう考えていた。

今なら、その答えを確かめられる。


蓮が本殿へ近付くと、肩に乗っていたゴロが反応した。


──バッ。


地面へ飛び降り、そのまま本殿の前まで進む。

静かに両手を地面へつくと、石の身体が淡く光り始めた。


「やっぱり反応する」


前回と同じ。

だが、今回は違った。


光は途中で消えず、そのまま少しずつ強さを増していく。


やがて光が収まり、蓮はステータスを確認した。


存在階位。

上昇。


「……やっぱり」


今度は、ちゃんと上がっている。


「前は条件を満たしてた。でも、F級の上限で止められてたんだな」


こくり。


これで、以前は上がらなかった神社もランクアップ後なら再び成長の候補になることが分かった。


水曜と木曜。

二日間で巡った神社を合わせ、ゴロの存在階位はE5まで上昇していた。


「これなら、明日のランキング戦も楽しみだな」


こくり。

ゴロの深緑の瞳が輝いた。


◇


金曜日。


昼休み。


午後の週次ランキング戦で蓮と戦う剛田は、教室で昼食を取っていた。

そこへ、一人の男子生徒がやって来る。


「剛田。ちょっといいか」

「なんだ?」


友人は向かいの席へ座ると、スマホを机へ置いた。


剛田とは違う第三実技クラス。

順位もすでに進級圏内へ入っている。


それでも最近は。

進級ラインを大きく下回っている剛田を心配し、ランキング戦の相手について調べたり、戦い方を助言したりしていた。


「午後、岩崎とやるんだろ?」

「ああ」

「なら、一つ情報がある」


友人がスマホの画面を確認する。


「岩崎の召喚獣。ランクアップしてるらしい」

「……は?」


剛田の手が止まった。


「今朝の第五実技で確認された。

 基本の身体が土から石に変わってたそうだ」

「今朝?」


剛田が眉を寄せる。


同じ第五実技。

本来なら、自分でも気付いていておかしくない。


友人も同じことを思ったらしい。


「お前も第五だろ。見てなかったのか?」

「知らねえよ。俺はケンキの訓練してた」


剛田は悪びれもしない。


実技クラスが同じだからといって、全員が同じ場所で同じ訓練をするわけではない。

今朝の剛田は訓練場の別区画で、ケンキの打撃訓練を続けていた。


他人の召喚獣など。

ほとんど見ていなかった。


「……はぁ、お前らしいな」


友人が小さく息を吐く。


「で、その石ってのがランクアップなのか?」

「たぶんな。見たやつの話だと、今までの肉体変化とは違う。最初から石の身体だったって」

「ふーん」


剛田は少しだけ考える。


ランクアップ。

一瞬、嫌なものが胸に浮かぶ。


だが。


すぐに消えた。


「まあ、大丈夫だろ」

「その根拠は?」

「ケンキの方が強えから」


即答。


友人は何も言わず剛田を見る。


「なんだよ」

「いや。続けて」

「ケンキはもうE級だぞ。それもD級まであと少しだ」


剛田は自信満々に笑った。


己の召喚獣“剛拳ノ猪鬼”。

名はケンキ。


二メートル近い巨体に、分厚い胸板。

何より目立つのは、異様なほど発達した両腕だった。


近接戦闘特化。


腕力。

耐久。

突進力。


身体能力だけなら、剛田がいるランキング帯を明らかに上回っている。

それでも順位が低い理由は、ケンキにあるわけではない。


問題は──召喚士である剛田の方だった。


「次にランクアップすりゃ、もっと強くなる。

 そうなりゃ順位なんてすぐ戻せるだろ」


友人の眉が僅かに寄る。


「その“次にランクアップすれば”が間に合う保証はないから、今のうちに勝てって言ってるんだけどな」

「間に合うって」

「何を根拠に?」

「もう少しなんだから、もう少しだろ」


友人が黙った。


数秒。


「……そういうところを心配してるんだよ」

「心配しすぎなんだって」


剛田は気にせず昼食を続ける。


ケンキは強い。

身体能力だけなら、今いる順位帯の召喚獣に負けるとは思っていない。


自分たちが下にいるのは、少し運が悪かっただけ。

剛田は本気でそう考えていた。


そして。


ケンキがD級へ上がれば、もっと力で押し切れる。

今みたいに、運で負けることもなくなる。


「岩崎のゴーレムだって、今ランクアップしたばっかなんだろ?」

「ああ」

「なら問題ねえよ」


剛田は笑う。


「こっちはD級目前。真正面からやりゃケンキが勝つ」


友人は小さく息を吐いた。


「……一応、岩崎の戦い方ももう一回確認するぞ」

「またかよ」

「お前が忘れるからだよ」

「忘れてねえって」

「じゃあ言ってみろ」


剛田は面倒そうに箸を置く。


「相手に合わせて身体を変える。弱点を突いてくる。泥と雷と火」

「今確認されてるのはな。それ以外もある可能性が高い」

「はいはい」

「聞け」


友人の声は落ち着いている。

だが、少しだけ圧が増した。


「岩崎は最近四連勝中だ。

 駆爪鼠には泥を使って速度を落とした。別の相手には雷の身体。その次は火。

 相手を見て、有利な身体を選んでる」

「知ってる」

「だったらケンキに有利な身体へ変えてくる可能性も考えろ」

「変えさせりゃいいじゃねえか」

「……どういう意味だ?」


剛田は拳を握る。


「弱点を突かれたところで、それ以上の力で潰せば終わりだ」


友人が黙る。


数秒。


「本気で言ってる?」

「当たり前だろ」


岩崎蓮が考えて戦うタイプなのは知っている。


相手を見る。

弱点を探す。

それに合った身体へ変える。

相性を取る。


そこまでは剛田も理解していた。


だが。

ゴロの身体能力そのものが、ケンキを上回るとは思っていない。


むしろ。


そこだけなら、ケンキの圧勝だと思っていた。


「相性だの弱点だの、全部まとめて殴り潰せばいい」


剛田は笑う。


「ケンキが真正面から負けるわけねえよ」


友人はしばらく剛田を見た後、諦めたように息を吐いた。


「……分かった。ただ、俺が言ったことくらいは覚えとけ」

「分かってるって」

「試合始まった瞬間に忘れるなよ」

「しつこいな」


そう言いながら。

剛田の顔には、すでに勝つ気しかなかった。


◇


午後。

週次ランキング戦。


訓練場に観客はいない。


いるのは対戦する二人と召喚獣。

そして、試合を監督する教師だけだ。


向かい側には岩崎蓮。

その足元にゴロが立っている。


剛田は目を細めた。


「……本当に変わってやがる」


土ではない。


灰色の、硬質な石の身体。

以前よりも重く、頑丈そうに見える。


だが、それを見ても剛田の考えは変わらなかった。


石なら砕けばいい。


「やるぞ、ケンキ!」


待機形態から戦闘形態へ変化し、光が弾ける。


現れたのは、二メートル近い巨体──“剛拳ノ猪鬼”。


太い鼻に突き出た牙。

分厚い胸板と、丸太のような両腕。


──ドンッ!


ケンキが拳同士を打ち合わせる。


「今日も力で行くぞ、ケンキ」

「ブオッ!」


向かいでは蓮もゴロへ視線を向ける。

ゴロが静かに構えたところで、監督教師が両者を確認した。


「始め!」


「行け、ケンキ! 正面から潰せ!」


剛田から魔力が伸びる。


「≪剛力付与≫!」


ケンキの全身へ力が満ち、膨れ上がった筋肉がさらに張る。


──ダンッ!


巨体が一気に加速した。


「そのまま吹っ飛べや! ≪鬼拳突き≫!」

「ゴロ。≪大地ノ甲殻≫」


──ドゴォンッ!


強烈な拳を、ゴロは甲殻状に変形させた両腕で真正面から受け止めた。

石の足が床を僅かに滑る。


それだけだった。


「……は?」


剛田の笑みが消える。


≪剛力付与≫を乗せた≪鬼拳突き≫。

剛田の自慢の技。

それを受けても、甲殻には目立った傷すらない。


「もう一発だ!」


続く拳が今度は胸を捉え、石の表面へ細い亀裂を走らせる。


「よし!」


通った。

そう思った直後。


「ゴロ。≪大地ノ拳≫」


──ドゴォンッ!


ケンキの巨体が大きく後ろへ滑った。


「ケンキが……押された?」


剛田の目が見開かれる。


それからもケンキは≪鬼拳突き≫や≪猪突剛拳≫を使い、真正面から攻め続けた。

ゴロも≪大地ノ拳≫や≪大地ノ角撃≫で応じる。


小細工はない。

相性による一方的な封殺でもない。

互いにスキルを使いながら、真正面から力をぶつけ合う。


それは、ケンキが最も得意とする戦いだった。


なのに。


「おい……なんで押せねえんだよ」


剛田の顔から、徐々に余裕が消えていく。


ケンキの拳も当たっている。

ゴロの石の身体には亀裂が入り、小さな石片も飛んでいた。


だが、動きがほとんど鈍らない。


一方でケンキは、ゴロの拳を受けるたびに明らかに動きが重くなっていた。


──ドゴッ!


「ブゴッ!」


腹へ拳を受け、ケンキが大きくよろめく。


その姿を見て。

剛田の目が変わった。


条件を満たした。


「来た……!

 ケンキ!お前の本当の強さを見せてやれ!」


右手を突き出す。


「≪奮起≫!」


ケンキの身体から魔力が噴き上がった。

一定以上のダメージを受けた時にだけ使用できる、剛田の強化スキル。


筋力。

速度。

耐久。


一時的に身体能力を大きく引き上げる。


「ブオォォォッ!」


ケンキが吼えた。


──ダンッ!


先ほどまで重くなっていた動きが一気に戻り、ゴロへ迫る。


「≪鬼拳突き≫!」


──ドゴォンッ!


拳が腕へ直撃する。


──バキッ!


今度は大きな亀裂が走り、石片が飛び散った。

続く≪猪突剛拳≫で、ゴロの身体が大きく後退する。


「よし! 行けるぞ!」


剛田の顔に笑みが戻った。


届いた。今度こそ。

ケンキの力がゴロへ通じている。


「このままぶっ潰せ!」


だが。


喜べたのは、ほんの僅かな間だけだった。


ゴロもすぐに踏み込む。


「≪大地ノ拳≫」


──ドゴォンッ!


ケンキの顔面を拳が捉える。

それでも≪奮起≫で踏み止まり、殴り返す。


ゴロにも傷が増える。

確かに、先ほどまでよりもケンキの攻撃は通っている。


それなのに。


「……なんでだよ」


剛田は気付く。


差が縮まらない。

むしろ、時間が経つほど広がっていく。


ゴロの攻撃を受けるたび、ケンキの動きが鈍る。

踏み込みが遅れ、拳を戻すのも遅くなり。

その分だけ、さらにゴロの攻撃を受ける。


対して、ゴロは違った。


「……あ?」


剛田が目を凝らす。


先ほどケンキがつけたはずの胸の亀裂。

それが、薄くなっている。

砕けた石の表面も、少しずつ元の形へ戻っていた。


「治ってる……?」


その間にもゴロは動き続けている。

ケンキが与えたダメージは、戦いながら少しずつ修復されていた。


一方。


ケンキの傷は残ったまま。


「そんなの……」


剛田の喉が詰まる。


力でも。

耐久でも。


そして。


ダメージの与え合いでも。


ケンキが負けている。


「ケンキ!」


それでも剛田は叫ぶ。


「最後だ! 全部ぶつけろ!」

「ブオォォッ!」


ケンキが残った力を振り絞り、右腕を大きく引く。


「≪鬼拳突き≫!」

「ゴロ。≪大地ノ拳≫」


双方が踏み込む。


──ドゴォンッ!!


拳と拳が真正面から激突した。


一瞬、拮抗する。


そして。

弾かれたのは──ケンキだった。


「なっ──」

「≪大地ノ拳≫」


大きく開いた胸元へ、ゴロが踏み込む。


──ズドォンッ!


石の拳が深く突き刺さった。


ケンキの巨体が吹き飛ぶ。

その身体が床へ落ちるより先に、光の粒子へ変わり始めた。


「ケンキ!」


剛田が叫ぶ。


だが、もう遅い。


致命傷。

戦闘形態を維持できなくなったケンキの身体が完全に光へ変わり、召喚獣界へ帰還していく。


訓練場から、その巨体が消えた。


監督教師が確認する。


「そこまで!」


静かな訓練場へ声が響いた。


「勝者、岩崎蓮」

「……」


剛田は何も言えなかった。


≪剛力付与≫を使った。

ケンキ自身のスキルも使った。


さらに。

切り札の≪奮起≫まで使った。


それでも。


最後まで、ゴロを上回ることはできなかった。


剛田は向かい側へ視線を向ける。


そこには、ゴロが立っている。

腕や胸には、確かにケンキの拳を受けた跡がある。


だが。


「……」


その亀裂もすでに大部分が塞がっていた。

戦闘中に砕けたはずの場所も、ほとんど元の形へ戻っている。


蓮がゴロを見る。


「大丈夫か?」


こくり。

ゴロは何事もなかったように頷いた。


その姿を見て。


剛田はようやく理解した。


≪奮起≫の強化で攻撃は通っていると思っていた。


ゴロにもダメージを与えている。

このまま殴り続ければ倒せる。


そう思っていた。


だが。


実際には、ゴロの動きを止めるほどの損傷にはなっていなかった。

しかも、その傷すら戦っている間に修復されていた。


「……馬鹿な」


相性を取られたわけじゃない。


泥でもない。

雷でもない。

火でもない。


ただ、石の身体のまま。

真正面からケンキを倒した。


午前にランクアップしたと聞いた時、剛田は思った。


ゴロはE級になったばかり。

存在階位だって、まだ低いはずだ。


対してケンキはE-MAX。

あと必要なのは、D級へのランクアップ条件を満たすことだけ。

身体能力なら、どう考えてもケンキの方が上。


そう思っていた。


だが。


「ランクアップしたばっかだろ……?」


剛田はゴロを見る。


実際には、ゴロの存在階位はすでにE5まで上がっている。

だが、そんなことを剛田が知るはずもない。


普通なら、存在階位は魔物との戦闘や訓練を重ね、少しずつ上げていくものだ。


ランクアップしたばかりの召喚獣が、数日のうちにE5まで上がっているなど、考えもしていない。


だからこそ。


E級になったばかりのゴロが、E-MAXのケンキを真正面から上回るなど。

剛田には、まるで理解できなかった。


力で負けた。

耐久でも負けた。


切り札の≪奮起≫まで使って。

それでも届かなかった。


「……」


剛田は拳を強く握る。


悔しい。

腹も立つ。


だが。


言い訳はできなかった。


今までは。

ケンキが強ければ、それでいいと思っていた。


あと少しでD級になる。

そこまで行けば、期次ランキング戦でも勝てる。

進級だってどうにかなる。


そう考えていた。


だが、今日。

自分より低いと思っていた相手に力だけで負けた。


「……俺も、少しくらい考えた方がいいのか?」


思わず、そんな言葉が漏れる。


向かいでは、蓮がゴロへ何か声を掛けている。

ゴロはこくりと頷くだけ。


剛田はしばらく、その石の身体を見つめ続けていた。


◇


試合後。


訓練場を出ると、昼休みに話していた友人が壁際で待っていた。


「終わったか」

「……ああ」


いつもの剛田なら、負けてももっと騒いでいただろう。

だが今日は妙に静かだった。


友人もそれに気付いたらしい。


「どうだった?」


剛田は少し黙ってから答える。


「ケンキが、力で負けた」


友人の眉が僅かに上がる。


「真正面から?」

「ああ。≪剛力付与≫も使った。≪奮起≫も使った。それでも負けた」

「相手は?」

「石のまま。途中で他の身体にも変わってねえ」

「……なるほど」

「なるほどじゃねえよ」


剛田が顔をしかめる。

だが、いつものような勢いはない。


少し歩いてから、ぼそりと呟いた。


「なあ」

「ん?」

「やっぱ俺……もうちょい考えた方がいいのか?」


友人が足を止める。


「……今さら?」

「うるせえ」


友人は少しだけ笑った。


「でも、それに気付いたなら今日負けた意味はあったんじゃないか」

「負けた意味とかいらねえよ。勝ちたかったわ」

「それはそうだな」


剛田は乱暴に頭をかく。


「ケンキがD級になれば何とかなるって思ってた」

「今も?」


少し間が空く。


「……ああ。

 でも、それだけじゃ駄目かもしれねぇとも思った」


昼休みまでなら、何を言われても力で押せばいいと答えていた。

だが今日、その一番自信のあった力で負けた。


だからこそ。


少しくらいは、自分でも考えた方がいい。


ようやくそう思えた。


「じゃあ次からは、俺の話をちゃんと聞け」

「長えんだよ、お前の説明」

「お前が覚えないから長くなるんだよ」

「短くしろ」

「分かった。三つまでにする」

「二つ」

「……三つ」


少しだけ、いつもの空気に戻る。


そのまま歩いていると、友人がスマホを取り出した。


「剛田」

「今度はなんだ」

「今回のこと、掲示板に使っていいか?」


剛田が嫌そうな顔をする。


「……またそれかよ」

「またそれだ」


これまでも何度かあった。


友人はランキング戦で得た情報をすぐには出さず、まず掲示板で他の生徒へ情報提供を求める。


詳しい内容が知りたいなら、そっちも情報を出せ。


そう持ちかけ、ある程度集まったところでこちらからも手札を出す。

そして得られた情報の中から、剛田に必要そうなものだけを整理して渡していた。


実際、それで助けられたこともある。


ただ。


今までの剛田は、その重要性をほとんど理解していなかった。


ケンキが強ければ勝てる。

相手が何をしてきても、力で押し切ればいい。


そう思っていたからだ。


「今回は岩崎の情報が欲しいやつが多い。ランクアップしたって分かれば、かなり情報は集めやすい」

「で、また他のやつから情報を出させるのか?」

「ああ。岩崎だけじゃない。期次ランキング戦までに、他の相手の情報もできるだけ集める」


いつもなら、面倒だと流していただろう。


だが。


今日は違った。


昼休み。

友人は岩崎の戦い方も、ゴロがランクアップしていたことも教えてくれた。


それを大して気にせず。


結果として負けた。


「……こういう情報も、ちゃんと見た方がいいってことか」


友人が剛田を見る。


「そういうことだ」


剛田は小さく舌打ちする。


自分でも考えて戦うなら、相手が何をしてくるのか、何が得意なのかを知る必要がある。

今までは友人が勝手に集めてくるものだと思っていたが。


これからは。


少しくらい、自分から使った方がいいのかもしれない。


「……分かった。使っていい」

「いいのか?」

「ああ。その代わり、使えそうなのが入ったらちゃんと俺にも寄越せよ」


友人の眉が僅かに上がる。

剛田の方から情報を欲しがるのは珍しい。


だが、何も言わずに頷いた。


「最初からそのつもりだ」

「で、今回はどこまで書くんだ?」

「ランクアップしたこと。石の身体のままケンキと正面から戦ったこと。それと──」


友人が剛田を見る。


「ケンキが力負けしたことまで出したい」


剛田の顔が僅かに引きつる。


「そこまで書くのかよ」

「その方が情報の価値は高い。こっちが詳しく出せば、向こうにも同じだけ求められる」


少し迷う。

負けた話を広められるのは、やはり面白くない。


それでも。


「……なら、そのまま書け」

「いいのか?」

「中途半端に出して、中途半端な情報しか返ってこねえんだろ?」

「ああ」

「なら全部出せ」


剛田は乱暴に頭をかく。


「負けたもんは負けたんだ。次は、その情報使って勝ちゃいい」


友人は少しだけ目を見開き、小さく笑った。


「分かった」


その横で、スマホへ視線を落とす。


少しして。


第二学年の召喚士総合スレに、新しい書き込みが一つ投稿された。


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