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才能EXの落ちこぼれ召喚士〜成長の鍵は地脈だった!?〜  作者: SN


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第11話 電獣洞


二日後。

日曜。


この日は迷宮実戦日。


学園では週に二日。

日曜と火曜が迷宮実戦日に指定されている。


生徒たちはそれぞれ迷宮を選び。

実際の攻略へ挑む。


蓮とゴロが選んだのは。


F級雷属性迷宮──“電獣洞”。


二人は今。

その入口へとやって来た。


遠くからでも入口はよく目立っていた。


巨大な石造りの門が静かに佇む。

門柱には狼や熊、猪など獣たちの彫刻が刻まれ、その全身には稲妻を思わせる紋様が走っている。

門の中央では青白い光が揺らめき、その向こうには異空間が広がっていた。


「ここが電獣洞か……」


蓮は思わず足を止めた。


入口へ近付くだけで空気が違う。


乾いた岩の匂い。

肌を撫でるような微かな静電気。

そして身体の奥まで刺激する濃密な魔力。


「やっぱり違うな」


角獣ノ森や甲獣平原とは、明らかに空気が違う。

空気そのものに雷の魔力が混じっている。


学園では何度も聞かされた。


属性迷宮は、その属性魔力によって満たされている。

だからこそ。

そこで生まれる魔物も無属性迷宮より一段強い。


ゴロも周囲を見渡している。


いつものような余裕は少ない。

どこか警戒している様子だった。


蓮は小さく笑う。


「緊張してるのか?」


ゴロは少し照れたように頷いた。


──どんっ。


胸を軽く叩く。


「俺もだよ」


蓮は肩をすくめる。


「でも、一緒なら何とかなるさ」


ゴロはもう一度力強く頷いた。


二人は並んで迷宮へ足を踏み入れた。


◇


迷宮の中は洞窟。

その中は、不思議な光景だった。


黒い岩肌のあちこちに青白い鉱石が埋まり、淡い光を放っている。

天井から垂れ下がる水晶には時折小さな放電が走り、乾いた破裂音が静かな洞窟へ響いていた。


「まるで洞窟そのものが帯電してるみたいだな」


蓮が周囲を見回した、その時。


──パチッ。


青白い火花が走る。


次の瞬間。


岩陰から一匹の猫型魔物が飛び出した。


一見すると普通の黒猫。


だが、その四肢は青白い毛皮に覆われ、歩くたびに細かな電光が弾けている。

尾の先も放電しており、爪の間からも微かな火花が散っていた。


「これが電猫か」


電猫は素早く飛び掛かる。

鋭い爪へ青白い電撃が迸った。


「ゴロ!」


ゴロは正面から拳を振るう。


──バチィッ!!


爪と拳がぶつかった瞬間、電撃がゴロの身体を走った。


しかし。


ゴロの動きは止まらない。

そのまま拳を振り抜く。


──ドゴッ!!


電猫は吹き飛び、そのまま光となって消えた。


「大丈夫か?」


ゴロは自分の腕を見下ろし、不思議そうに首を傾げた。

何ともなさそうだ。


「やっぱり相性がいいな」


地属性は。

魔力的に雷へ強い。


それに。


ゴロの身体は土でできている。

生身の身体とは違い、電撃を受けても痺れにくい。


「これくらいの電撃なら、ほとんど問題なさそうだ」


ゴロは誇らしげに──どんっ。

と胸を叩いた。


◇


その後の攻略は驚くほど順調だった。


“電猪”。

“電熊”。


現れる魔物はどれも、攻撃の瞬間だけ牙や爪へ電撃を纏う。


本来なら。


電撃で動きを止め、そこへ牙や爪を叩き込む。

それが雷属性魔物の強みなのだろう。


だが。


ゴロにはその一手が通じない。


「効かないなら怖くはない……!」


蓮の指示に合わせ、ゴロは真正面から殴り合う。


──バチッ!

──ドゴッ!


電撃は何度もゴロの身体を走る。

それでもゴロの動きが止まることは一度もなかった。


電猫も。

電猪も。

電熊も。


得意の電撃が通じず、そのまま力負けして光へ変わっていく。


「完全に相性勝ちだな」


蓮は苦笑する。

ゴロもどこか得意げに笑い、


──どんっ。


と胸を叩いた。


危なげなく階層を突破。

そして二人は、第十階層への階段へ辿り着いた。


蓮は静かに息を吐く。


「……行こう」


ゴロは真剣な表情で頷いた。

二人は最深部へ足を踏み入れた。


◇


第十階層。


階段を下りた先は、広大な空洞だった。


天井には無数の青白い鉱脈……ではなく、電光が蜘蛛の巣のように走っている。

時折、洞窟全体へ放電音が響き渡る。


その中央。


一体の獣が静かにこちらを見据えていた。


「……あれが」


蓮は息を呑む。


“電狼主”。


大型の狼ほどもある巨体。

濃紺の毛並みの隙間を青白い電流が走り続けている。

鋭い牙からも火花が漏れ、尾は稲妻のように激しく揺れていた。


黄金色の瞳がゴロを捉える。


その瞬間。


──ゴォォォォ……


迷宮中の電気を帯びた魔素が電狼主へ集まっていく。


「来る!」


毛並みが逆立つ。

身体が一回り大きくなり、全身を覆う放電が紫電に変わった。


「やっぱりきたか……!」


蓮は身構える。


しかし。


その姿からは電撃の威力が強くなったこと以外分からない。


◇


「ガァァァッ!」


電狼主が咆哮した。


次の瞬間。


──バチィィィッ!!


電狼主の四肢に紫電が纏う。

そして、地面を蹴った。


「速っ!」


一気に間合いを詰め、ゴロの側面へ回り込んだ。

帯電した前脚が振り抜かれる。


「っ!≪大地ノ甲殻≫!」


──ガギッン!


ゴロの肩から腕にかけて、土が一瞬で変わる。

幾重にも重なった土の甲殻が腕を覆い、帯電した前脚を受け止めた。


──バチィィッ!!


衝撃は重い。

バチバチッと紫の稲光がゴロの身体を走る。


しかし。


ゴロは止まらない。

身体にも目立った損傷はなかった。

そのまま反撃の拳を振るう。


「よし!紫電でも問題ない!」


蓮は確信する。

紫電すらゴロには効いてない。


だが。


ゴロの拳も当たっていない。

電狼主はあっさりと躱していた。


ただ。


思わぬ反撃に警戒したのか。

電狼主はゴロと大きく距離を取った。


◇


再び咆哮。


口から電撃が弾け飛ぶ。

多数の電撃弾。


「突っ込め!≪大地ノ角撃≫!」


ゴロは蓮の言葉を信じ、一直線に突っ込む。

電撃弾がゴロの身体を打つ。


それでも。


加速は止まらない。

効いていない。


そして。


電撃弾を放った直後。

開いたままの口元へ。


──ドゴォッ!!


土の角が直撃した。


「ガァァァッ!!?」


咆哮ではない。

痛みによる悲鳴だ。


起き上がった電狼主は怒りに染まった目でゴロを睨んだ。


「さて、今度はどう来る…?」


電狼主が咆哮。


四肢に紫電を纏い、高速で地を駆ける。

紫電を帯びた爪で引っ掻いた。


一撃離脱。


そしてすぐさまその場から退避する。

ゴロの反撃は空を切る。


「ちっ…さすがに同じ手は通じないか」


電狼主の速さに翻弄される。

ゴロの攻撃は悉く空振る。


だが。


蓮は焦っていなかった。


「ゴロ!落ち着け!大丈夫だ」


蓮の言葉にゴロは落ち着きを取り戻す。

蓮はさらに言葉を続ける。


「速いが見えない速さではない。

 それに攻撃の瞬間は必ず止まる。

 そこが狙い目だ」


こくりとゴロは頷く。

焦るなよ、と蓮は小さく呟いた。


落ち着きを取り戻したゴロは。

無闇に追いかけなくなった。


構える。

待つ。


電狼主が一撃を入れるため。

間合いへ入ってきた瞬間だけ。


拳を振るう。


一度目。


──ブンッ!


僅かに早い。

電狼主が拳の先をすり抜ける。


二度目。


──ブンッ!


今度は遅い。

爪だけを受け、電狼主は再び離れていく。


だが。


蓮はその二度で十分だった。


「次だ」


三度目。

電狼主が飛び込む。


「今!」


──ドゴッ!!


「ガァッ!?」


捉えた。


ゴロの拳が頭部へ直撃。

電狼主が大きくよろめき、数歩後退する。


「今だ!逃がすな!」


ゴロが身体を低くする。


「≪大地ノ角撃≫!!」


──ドゴォォンッ!!


胸に直撃。

電狼主を吹っ飛ばした。


さすがに決まったかと、蓮は一息ついた。


だが。


まだ終わっていなかった。


「っ!まだ立つか」


かなりのダメージ。

それでも電狼主は立ち上がった。


全身の毛が逆立つ。


迷宮全体が震える。

洞窟中の電気を帯びた魔素が集まり始めた。


「……!」


蓮は息を呑む。


今までとは違う。


電狼主は大きく咆哮した。

電狼主の全身を紫電が纏う。


「第二ラウンドといったところか……。

 油断はできないな……」


蓮が呟くと同時に、電狼主が短く吠えた。


次の瞬間。


──バチィッ!!


ゴロの脇を。

一本の紫電が走り抜けた。


「……?」


そして。


その紫電をなぞるように。

電狼主の姿が一瞬で駆け抜ける。


──ザシュッ!


「なっ……!?」


遅れて。

ゴロの脇腹に爪痕が刻まれた。


電狼主はすでに後方。


「速すぎる……!」


第一形態とは、明らかに次元が違う。


なにより。


今度は攻撃の瞬間すら止まらない。

駆け抜けながら、そのまま爪を振るっている。


これでは、拳を合わせる隙すらない。


蓮の顔に焦りが浮かんだ。


◇


電狼主は決して正面から殴り合わなかった。


──バチィッ!!


紫電が走る。


次の瞬間。


その軌道をなぞるように高速移動。

すれ違いざまに爪を振るい、そのまま一気に離脱する。


それを徹底していた。


「ゴロ!≪大地ノ甲殻≫!」


ゴロの腕を土の甲殻が覆う。


──ガギンッ!


どうにか爪を受け止める。


だが。


次。

その次。


電狼主は角度を変えながら。

何度も高速で駆け抜けてくる。


ゴロの拳は当たらない。

追うこともできない。


耐えるたびに。

≪大地ノ甲殻≫へ魔力が消費されていく。


「このままじゃジリ貧だ……」


蓮の額へ汗が浮かぶ。


速すぎる。

目で追ってからでは間に合わない。


なら。


何を見る?


蓮は電狼主ではなく。

その周囲へ意識を向けた。


──バチィッ!!


紫電。


直後に、電狼主が駆け抜ける。


もう一度。


──バチィッ!!


紫電。


その軌道上を、電狼主が走る。


「……待て」


蓮の目が細くなった。


今まで。

電狼主が高速移動した結果として紫電が残っているのだと思っていた。


だが、違う。


紫電が先だ。


電狼主が動くより僅かに早く。

紫電が走っている。


そして。


電狼主は必ず、その軌道をなぞっている。


「そうか……!」


鍵は紫電だった。


あれは残像ではない。

電狼主が高速移動するための──道だ。


「ゴロ!」


ゴロが蓮を見る。


「狼を見るな!」


──バチィッ!!


また紫電が走る。


「紫電だけ見ろ!」


ゴロの深緑の瞳が、地面を走る光を捉える。


「その先に拳を置け!≪大地ノ拳≫!」


ゴロが拳を振るう。


──ブンッ!


だが、僅かに早い。

拳は空を切った。


次の瞬間。


──ザシュッ!


脇腹に新たな爪痕が刻まれる。


「まだ早い……!」


蓮は紫電を睨む。


距離。

角度。


紫電が走ってから。

電狼主が現れるまでの僅かな間。


もう一度。


──バチィッ!!


「今だ!≪大地ノ拳≫!!」


ゴロが拳を振り抜く。


その瞬間。


紫電の軌道上へ。

電狼主が飛び込んできた。


──ドゴォォォォン!!


「ガァァァァッ!!」


正面衝突。


ゴロの拳。

そして、電狼主自身の加速。


二つの力が真正面からぶつかる。


電狼主の顔面へ。

ゴロの拳が深く叩き込まれた。


巨体が大きく吹き飛ぶ。


──ドガァンッ!!


岩壁へ激突。

そのまま地面を何度も転がっていく。


「……!」


蓮は身構えたまま。

電狼主を見つめる。


一秒。

二秒。


──動かない。


やがて。


電狼主の身体が淡い光へ変わり。

静かに消えていった。


「……ふぅ」


ようやく。

蓮は大きく息を吐いた。


「勝った……」


ゴロもその場へ座り込む。

身体には、いくつもの爪痕が残っていた。


蓮はすぐに≪修復再生≫を発動する。

傷ついた土が、ゆっくりと元へ戻っていく。


「今回は相性に助けられたな」


雷が通じにくく。

そして、痺れないゴロだったからこそ。


最後まで紫電を恐れず。

その軌道へ拳を置くことができた。


もし相手が違えば。

同じ戦い方はできなかっただろう。


それでも。


相手の速さを追うのではなく。

その前兆を読むことで勝った。


蓮は小さく笑う。


ゴロも嬉しそうに。


──どんっ。


と胸を叩いた。


◇


その時だった。


最深部の中央。

そこへ、見覚えのある巨大な黒水晶が静かに姿を現した。


「また出たな」


蓮は小さく笑う。


人の背丈ほどもある漆黒の結晶。

禍々しい魔力を放ちながら、静かに佇んでいる。


驚きはもうない。


蓮はゴロの傷が完全に塞がるのを待ち、静かに口を開いた。


「やるか」


ゴロは力強く頷く。


「≪迷宮浄化≫」


その瞬間。

ゴロの拳が白く輝き始めた。


柔らかな光。


神聖さすら感じる白い輝きを纏いながら、ゴロは黒水晶へ歩み寄る。


そして。


拳を振り抜いた。


──バキィィンッ!!


轟音と共に黒水晶へ亀裂が走る。

白い光が溢れ出し、巨大な結晶全体を包み込む。


黒が消え、白へ染まる。


やがて。


巨大な結晶は無数の光の粒となり、静かに砕け散った。

その光の一部が、ゆっくりとゴロの身体へ吸い込まれていく。


「っ……!」


ゴロの全身が眩く輝いた。

土だった身体が、ゆっくりと姿を変えていく。


結晶が幾重にも重なった太い腕。

腕の内部では青白い電流が脈打ち、拳を握るたびに火花が弾ける。

背には電気を蓄える巨大な結晶が突き出し、脚もまた、重厚な電晶で形成された力強い形へ変わっている。


「……!」


蓮は目を見開いた。


「身体そのものが……変わった?」


まるで電気を帯びた結晶のゴーレムへ生まれ変わったようだった。


土ではない。

結晶でできた身体。


しかし。

数秒後。


白い光が静かに消える。


結晶の身体は土へ。

背の巨大結晶は崩れ落ちるように消え、脈打つ電流も音もなくほどけていった。


気付けば、いつもの土の身体へ戻っていた。

ゴロも不思議そうに自分の腕を見つめている。


「今のは……」


蓮はすぐにステータスを開いた。


──────────────────────


【ゴロ】

存在階位:F-MAX

スキル:

 ・≪大地ノ拳≫

 ・≪大地ノ角撃≫

 ・≪大地ノ甲殻≫

肉体スキル:

 ・≪電晶ノ体≫ NEW!

特殊スキル:

 ・≪迷宮浄化≫


──────────────────────


「肉体スキル……?」


蓮は思わず呟く。


「身体そのものを変える……スキルなのか?」


先ほどの変化を見る限り。

その可能性は高い。


だが。


詳しいことはまだ分からない。


「検証が必要だな」


そして。


お待ちかねのランクアップ条件。

蓮は自身のステータスを表示させた。


──────────────────────


【岩崎蓮】

ランクアップ条件:

 ✔ 召喚獣の存在階位をF-MAXにする

 ✔ F級雷属性迷宮を浄化する NEW!


 ・未達成条件 7件 → 6件


──────────────────────


「……!」


蓮は思わず笑みを浮かべた。


「条件が……進んだ」


ようやく一つ。


残る条件は六つ。

FランクからEランクへ上がるだけで合計八つもの条件。


普通では考えられない数だ。


それでも。


蓮に落胆はなかった。


「あと六つか」


むしろ。


その声には僅かな期待が混じっていた。


条件を満たせば、その先へ進める。

まだ、強くなれる余地が残っている。


◇


帰宅後。


蓮は机へノートを広げていた。

そこには、これまで浄化した三つの迷宮が書かれている。


“角獣ノ森”。

得たのは──≪大地ノ角撃≫。


“甲獣平原”。

得たのは──≪大地ノ甲殻≫。


どちらも無属性迷宮。


そして。


今日浄化した。


F級雷属性迷宮“電獣洞”。

得たのは──≪電晶ノ体≫。


蓮はその文字を見つめる。


「……やっぱり違う」


今まで手に入ったのは。


≪大地ノ角撃≫。

≪大地ノ甲殻≫。


どちらも。

ゴロの土の身体を利用するスキルだった。


だが。


今回表示されたのは。


≪電晶ノ体≫。


しかも分類は──“肉体スキル”。


浄化の直後には。

ゴロの身体そのものが結晶へ変化していた。


「……身体を変えるスキル」


可能性は高い。


だが。


まだ実際に発動すらしていない。

詳しいことは、検証してみなければ分からない。


そして。


今回だけはランクアップ条件も一つ進んだ。


違いがあるとすれば。


「属性……か?」


蓮は小さく呟く。


角獣ノ森も。

甲獣平原も。


無属性だった。


だが。


電獣洞には雷属性がある。


「無属性迷宮ではスキル」


ノートへ書き込む。


「属性迷宮では……肉体?」


その横に、大きな疑問符をつけた。


まだ一度しか試していない。

偶然の可能性だってある。


なら。


「もう一つ試してみるか」


蓮は静かに笑った。


まだ答えには届いていない。

それでも、確実に前には進んでいる。


「まだまだ強くなれそうだな」


ゴロは嬉しそうに頷く。


そして。


──どんっ。


いつものように。

力強く胸を叩いた。


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