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テンプレ通りッッ!!  作者: ひよこ倖門


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6/8

ヒロインside

 入浴を終えて食堂に現れたニース卿の顔色はだいぶ良くなっていた。お風呂に入って血液が循環するって、やっぱり重要なのね。

 夜も遅いし、ガリガリすぎる彼の胃に負担とならないよう、用意されたのは野菜スープなどの栄養価は高く、柔らかく調理されたものばかりだ。

 色々と詳しく話もしたいけど、わたし自身、記憶の混同で落ち着いてないし、全て明日以降ってことにしておく。ニース卿も頷いてくれたので、それで解散となった。

 ふぃ〜とベッドへ倒れ込む。ふかふかの布団が受け止めてくれて、そのまま睡魔に負けそうになるけど、ガバっと起き上がって「寝ちゃダメだわ」と頬を軽く叩いた。

 よし、眠気が少し飛んだかな。

 とんとん、と指で顎を弾きながら、わたしは突如思い出した【せれ愛】と前世の情報を整理することにした。

 夜会で婚約破棄されたことから、【せれ愛】ヒロインである聖女マリアンヌはカルナートルートを選んだことは間違いないのだろう。

【せれ愛】は【大精霊に愛されて】というタイトルの乙女ゲームだ。

 中身としては王道の、精霊に好かれて聖女になったヒロイン:マリアンヌが、聖女として活動してる内に出会う攻略対象者と恋愛し、最後には大精霊の加護を貰って国の守護者となる、愛されストーリーである。

 王道だけあって、魔法もあるし、聖女の力は突出して高いけど身分は平民だし(後々(のちのち)養子縁組して貴族の身分は得るけど)、魔物の暴走があって聖女の力を使って攻略対象者と仲を深めるし、悪役だってやっぱり存在しているわけだ。

 で、その悪役の一人が、王子:カルナートの婚約者であるベルガモット・シガー侯爵令嬢。

 つまり、わたしのことだ。

 ハピエンでベルガモットが国外追放なのは、暴漢に襲わせる計画だけが漏れた未遂だったからで、バドエンでは婚約破棄された(あと)に計画が実行され聖女が死んでしまうため、死刑となる。

 そう、先程までいた夜会の(あと)、暴漢に襲わせて、女の子としての尊厳とか色々奪った挙句、殺しちゃうっていうね。

 え、今その計画は実行されてないのかって?

 実行されてないわ。何せ依頼しようと計画してところだったからよ。カルナートも襲わせようとしたって言ってたもの。

 ベルガモットは本当にカルナートが大好きで、平民から子爵令嬢となったマリアンヌにカルナートを取られるのが嫌で、侯爵家の力を使って排除しようとしちゃうのよね。今考えるとちょっと恋愛脳過ぎじゃないってなるけど、それだけ好きになれるのもすごいわ。

 ドコが好きだったのかしら。わたしみたいにご尊顔眩しってなってたのかしらね。

 ちなみに侯爵家はベルガモットを(かば)わず、国外追放にも死刑にも同意する。これは侯爵家に叛意がないと示す意味と、王家に今後も忠誠を誓う意味もあった。

 王家としても侯爵家一つ潰すと、色々と政治面や内政面で揉めることは必至なので、ベルガモットを切り捨てるなら許してあげる的なヤツになる。

 まぁ、この辺りはあんまりゲーム内では出されない設定なんだけど、現実のベルガモットは王子妃教育の中で似た事例を学んでいた。

 ゲームは攻略対象者の誰を選んでも、魔物の暴走が起きて聖女が活躍する。つまり、魔物の暴走だけはどう足掻(あが)いても()めることのできない設定なわけだ。

 ストーリーとして、婚約破棄されたけど国外追放にはならなかったから、ストーリーの確変があったとは思うんだけど、魔物の暴走がなくなったとは言い切れない状況なのよね。

 婚約破棄した(あと)、それを認めるために現れるはずの国王陛下や、教皇が夜会に現れなかったのも気になるところだし。

 侯爵――父親がいなかったのも、ベルガモット的には困るヤツよ。だって、勝手に婚約破棄されて、婚約して祝福されたのに。

 ハマってたとはいえ、ゲームでわたしが動かしてたのはヒロインなわけで、悪役令嬢ではない。攻略対象者ごとのルート内容を覚えてるとはいえ、それはヒロインが取る行動なわけで。

 あれ、これを詰んでるというのでは!?

 ニース卿まで巻き込んでるのに詰んでるとか、ヤバい。

 王子の婚約者じゃなくなったから、しばらく夜会は出なくても大丈夫だけど、お茶会はそうもいかない。けどお茶会は女性の政治であり、ケチがついた令嬢など(おとし)められる一方だ。

 お家に引きこもっていたいところだけど、婚約者が変わればその挨拶は必要で、お茶会は強制参加である。

 やーだーなー。

 とりあえず、明日からは婚約者となるニース卿を太らせることにしよう。問題の先送りとか言わないで。ゲームでは国外追放や死刑になってベルガモット出て来なくなるんだから、自由に生きたって良いはずよ。

 良い……わよね?

 誰か良いって言ってぇぇぇっ!

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