40.対抗戦開始
対抗戦の会場であるリーガル王国王立ホールが開場した。
チャールズのレプリカジャージに身を包んだカリーナは、何か思い詰めたような表情で席に着く。
カリーナは、会場の雰囲気がそれまでの変わっていることに気づいた、これまではチャールズとマリガンを応援する横断幕しか掲げられていなかった。
だが今日は、『フレア様万歳!』や『最強 ロシモフ!』と書かれた横断幕がいくつか見受けられた。
(何がフレア様万歳よ! 魔女を応援するなんて何を考えているの……)
カリーナの表情が険しくなる。
その頃、フレアと森のゆかいな仲間たちは控室のモニターで会場の様子を伺っていた。
「なるほど、皆さんプロレスの楽しみ方を分かってきたようね」
「プロレスの楽しみ方?」
フレアの呟きにダニーが問い返す。
「わたくしやロシモフの横断幕が出ているでしょう、わたくし達のようなヒールも応援しても良いものだと気づいたのでしょう」
「まぁ、『殺す』とか、『潰す』とか言っておりますが、実際そんなことは致しませんからね。虚実入り交じる世界そのものを楽しめるようになった、ということでしょうね」
今日がデビュー戦のダニー達には、自分の横断幕が掲げられるなど想像も出来なかったが、そんなものか頷いた。
対抗戦が始まる。
先鋒戦、オリバー・ブラウンVSランド・ウォーカー。
試合前に陽気な音楽がかかると、ランドは南方の民族ワフー族に伝わるダンスを披露した。
「アトキンス将軍、ランド・ウォーカーという選手はどういう選手なのでしょうか?」
困惑を隠しきれない様子でアナウンサーはアトキンスに尋ねる。
「彼は、ロシモフの戦友です。当時はまだ少年でした。かっての戦争では彼のような少数民族出身の少年もこの国の為に戦ってくれました。今はフレアの元にいるのは残念ですが、立派な戦士でしたよ」
「我々は彼らのことも、もっと理解し、受け入れるべきなのかもしれません」
「なるほど、それではオリバー選手のほうはどうですか? 騎士団出身と聞いていますが」
少し重い雰囲気になりかけたのを察し、アナウンサーは話を切り替えた。
「彼は非常に真面目に訓練をする選手ですね、王族の護衛隊に配属されたせいか、武器を持たない状態での体術に興味があったようです。リズムの良い打撃を得意とするランド選手とは対照的に、相手を組み伏せる技術には定評があります」
どこから情報を仕入れたのかアトキンスは両サイドの選手について詳しく解説してみせた。
ゴングが試合開始を告げた。
まるで踊るようなステップのランド、じわじわと用心深く詰め寄りながら相手の様子を伺うオリバー。
後に名勝負を繰り返すことになる二人の初対戦だった。
「大したものね、デビュー戦とは思えないわ」
控室で二人の対戦を見ながら、フレアは、ロシモフに声をかける。
もともと身体ができていて動けるメンバーを選んではいるが、それでも練習期間も準備も十分とは言えない。そのため、頭から相手を落とすような危険な技は禁止していた。
その制約の中で、それぞれのキャラクターを立たせながら戦う二人をフレアは称賛した。
「そうか? 調子に乗り過ぎじゃないかアイツ」
技を決めたあと、すぐにフォールへ行かず踊るムーブを挟んだせいだろう。会場からはブーイングが飛んでいた。
「ロシモフは、彼に厳しいわね」
その厳しさが長いつき合いで生まれた絆のように見えて、フレア少し羨ましく感じた。
試合は、ランドがミドルキックでオリバーをダウン寸前まで追い詰めたが、蹴り足をキャッチしてドラゴンスクリューからの足四の字固めに移行したオリバーがギブアップ勝ちを収めた。




