39.お前は追放だ!
「|お前は追放だ!《ユアー ファイヤード!》」
フレアから東方の剣士ケンドーはそう宣告を受けた。
「何故です? 私は、体力もあるし、真面目に練習しています! 色々な技だって身に着けた」
黒い髪、東方系の引き締まった顔のケンドーの顔が青ざめる。
「…何故? そんなこともお分かりにならないのかしら、あなたはこのチームにふさわしくないわ!」
フレアは、自慢の縦ロールをさっと指でかき上げながら言った。
「どうして…俺だけ」
ケンドーは、突然の解雇を受け入れることが出来ない。
「あなたには、チャールズのチームでベビーフェイスとしてデビューして頂くわ。あっちは良い人材がなかなか見つからないらしくてね」
試合でフレアが煽ったこともあり、応募は多いのだが質の方が追いついていないと報告を受けていた。
「そんな……俺はフレア様の為に働けないのですか? 俺なんかいらないって言うんですか!」
超促成育成のため、ひと月ほどの合宿だったが、ずいぶん懐かれたものである。
「いいえ。あなたには、わたくしの為に働いて貰うわ……!」
フレアは悪魔的な微笑みを浮かべ囁いた。
リーガル王国正規軍VS極悪同盟『フレアと森のゆかいな仲間たち』の団体対抗戦は、5五対五のエリミネーションマッチで行われると発表された。
リーガル王国正規軍 極悪同盟『フレアと森のゆかいな仲間たち』
先鋒 オリバー・ブラウン ランド・ウォーカー
次鋒 パーシバル・ブラックウッド ミランダ・ティラー
中堅 マリガン・カスタード ギガンティック・ロシモフ
副将 ケンドー・カブキ ダニー・コピィロフ
主将 チャールズ・リーガル フレア・ブラッシー
顔ぶれを比較するとリーガル王国正規軍は騎士団から引っ張ってきたらしく無骨なメンバーが揃っていた。
その中で東洋のミステリアスな風貌を持つケンドーが異彩を放っている。
かたや、『フレアと森のゆかいな仲間たち』のニューフェイスはよく言えば個性的だった。
女性もいれば、南方系の血を引くがっしりとした男にチョビ髭の頼りなさそうなおじさんもいる。
悪く言えば寄せ集め感が強かった。
『悪の同盟を迎え撃て! 今度は戦争だ! 絶対に負けられない戦いが始まる!』
魔法ビジョンのCMはそう言って締めた。
「平和な戦争もあったもんだ」
チョビ髭の頼りなさそうなおじさんが画面を見ながらそう呟いた。
『フレアと森のゆかいな仲間たち』のメンバーは、試合を控えてブラッシー家の一室に滞在していた。
「ダニー、不満そうね?」
「いんや、殺したり殺されたりしない戦争っての悪くねぇ……俺みたいなのは、また戦争にでもならなきゃ表舞台に立つことは無いと思ってたからな」
「それよりフレア様に悪役らしくって言われたから、言われた通りにしたけど、私のメイク濃すぎない? なんかモニター通すと老けてみえるんだけど!」
(老けて見えるのは元から……)
ダニーは喉元まで出かかった言葉を吞み込んだ。
(平和が一番だ)
「俺なんか戦士の死化粧だぞ! あんなの昔話だけの作法だっての」
CMでは顔の所々に白いラインを入れていたランドが笑う。
「ノリノリでやってたのはお前の方だろ。 今でも祭りとかではするんだろ?」
「フレア様がキャラ立ては重要だって言ってたからな」
「何それ、ずるくない? 私も何か考えないと!」
先祖より差別を受けてきた南方種族の風習、それをズルいと羨ましがられたのは初めてのことだった。
ランドの顔に思わず笑みが浮かぶ。
『フレアと森のゆかいな仲間たち』
フレアの父エリックがせめてもの女の子らしさをと、無駄な抵抗をしてつけたネーミングだった。
(変なチーム名だが……案外俺たちに合っているのかもな)
ダニーはそんな風に思い、静かに笑った。




