26.試合前夜
”親友”の為にあの男が魔女退治に立ち上がった!
友情パワーが鮮血の魔女を駆逐するのか?
60分1本勝負
友情騎士 鮮血の魔女
マリガン・カスタード VS フレア・ブラッシー
NOW ON SALE!
魔法ビジョンで流れるCMをチェックしながら、エリックとフレアはチケットの販売状況やスポンサー収入の報告を受けていた。
ノンタイトル戦にもかかわらず、今回もチケットはソールドアウトの見込みで、スポンサーもさらに増えている。
魔法ビジョン自体の売れ行きも好調で、生産が追いつかないほどだという。
スポンサーCMにはチャールズが引っ張りだこで、彼を起用した商品も飛ぶように売れていた。
エリックは、内需の膨らみが国全体に活気を与えているのを感じていた。
もちろん、この好況の原因がプロレスだけというわけではない。だが、エリックが水面下で進めていた数々の施策によって蓄えられていた力が、プロレスによって一気に解放されたのは間違いなかった。
「フレア、あの英雄は協力してくれるのか?」
エリックはフレアにスカウトの結果を尋ねた。
「はい。今度の試合では、セコンドに立っていただけますわ」
娘が二メートルを超える人相の悪い大男に執心している――。
執事から聞かされたときは驚いたものだが、命の恩人であり、かつての英雄ともなれば話は別だった。
「良い出会いをしたな。落ちぶれたとはいえ英雄だ。粗末な扱いをするんじゃないぞ」
エリックはそう釘を刺した。
「言われなくてもそうしますわ。わたくしの命の恩人ですもの」
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「変われば変わるもんだな。俺に散々やめろと言っていたお前が、フレアとリングに立つとはな」
チャールズは、自室を訪ねてきた友人に語りかけた。
「嫌味か? 俺だって不本意だし、自分でも驚いてるよ……でも負けちまったからな」
マリガンは少し拗ねたような口調でぼやく。
「おいおい、あの噂、本当だったのかよ。まさかお前を負かす女がいるとは思わなかったぞ」
軽い口調ではあったが、チャールズは本気で驚いていた。
「油断していたのもあるが、アイツは本物だ」
「俺とフレアは幼馴染だ。ここ数年は、あいつのワガママにうんざりして避けていたが、アイツの事は分かっているつもりだった」
「それがここ数か月のあいつは別人みたいだ。過去の面影なんて欠片もない。お前を倒したあの技術だって、どこで身につけたやら……」
チャールズは、フレアの内面の変わりようにも驚いていた。
試合だけでなく、秘密のトレーニングでも、フレアは受け身のような基礎から見栄えの良い技や動きまで、嬉々として教えてくれた。
どこで学んだのかは頑なに教えてくれなかったが……。
「女は秘密が多すぎる。改めて思うよ、女は怖いな」
マリガンが漏らした言葉に、チャールズはプロレスを教えてくれたフレアの姿を思い出す。
かつての、ワガママで人を振り回して楽しんでいるような姿は見受けられず、甲斐甲斐しくコーチ役を務めてくれていた。
秘密が多いという点には同意できたが、「怖い」という言葉には納得しかねた。
「まぁいいや。俺にもプロレスを教えてくれよ。さすがにあの女に習うのは癪だからな」
(なんだかんだ言いながら、ちゃんと準備しようとするあたり、こいつも根は真面目だよな)
チャールズはそんな風に友人を評しながら、準備を始める。
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孤児院『虎の穴』にも試合の招待状が届いていた。
「アリス、本当に私たち、試合に行けるの? 試合のチケットって、とっても高いんでしょ?」
「ベス、心配いらないわ。この日は、私たちみたいな孤児のために招待席を用意してくれる特別な日なの」
「コリンね、フレア様に会いたい!」
各陣営とも、着々と準備を整えていた。
試合が始まる。




