25.チャールズファンクラブ
リーガル王立学園の校舎の片隅――放課後だというのに暗幕が張られた怪しい教室。
周囲に人がいないことを確認してから、カリーナは扉をノックした。
「合言葉を……」
教室内から小さな声が漏れた。
「チャールズ様、最高!」
カリーナが声を潜めて答えると、扉が開いた。
『第58回 チャールズファンクラブ会合』
教室の黒板に大書された文字をみながらカリーナは席に着いた。
怪しい行動には訳がある、厳粛なリーガル王立学園では、『はしたない言動が目立つ、淑女にふさわしくない』との理由でチャールズファンクラブの活動を禁止されていたのだ。
しかし情熱は止められない!
チャールズファンクラブは地下に潜った。
だが地下で燻っているような私たちじゃない。チャールズ様の為ならなんでもやってのける命知らず。不可能を可能にし、邪悪な魔女を粉砕する、私たち、チャールズファンクラブ!
私は会長のジョディ・スミス生徒会副会長。通称ハンニバル。礼儀礼節と宮中工作の名人。私のような天才策略家でなければ、百戦錬磨のつわものどものリーダーは務まらない!
私はティナ・ペック。通称フェイスガール。自慢のルックスに男はみんなイチコロよ。誘惑かまして、プラチナチケットからレアグッズまで、何でもそろえてみせるわ。
ボニー・バラカス、通称コング。魔道具の天才よ。鉄の宰相でもぶん殴って見せるわ!でも、船旅だけは勘弁して!
お待たせいたしましたわ! 私こそカリーナ。通称クレイジーモンキー。木こりとしての腕は天下一品!平民?庶民?だから何??
私達は、道理の通らぬ世の中に敢えて挑戦する、頼りになる神出鬼没の、『チャールズファンクラブ』!
「えー、それでは第58回チャールズファンクラブの会合を始めます」
ジョディが会議の開催を宣言した。
「早速ですが、この間の試合に乱入されたマリガン様をどう思います?」
ティナが皆に問いかける。
「乱入により試合自体が不成立になってしまったのは残念に思いますが、敢えて言わせていただけるならば……私は『良い』と思う」
上座に座ったジョディが右手を肩の辺りまで挙げ、手の平を見せながら決を採るような姿勢を取った。
「「「良い…」」」
他の三人も同じポーズで同意を示す。
「私は思わず、伝説となったパーティでの事件を思い出してしまいましたわ。あの時、フレアの顔を蹴り飛ばしたマリガン様の雄姿を――」
カリーナが目を瞑り、恍惚とした表情で語る。
「そういえばカリーナは、パーティ会場でご覧になっていたのですね。羨ましいわ」
運悪く体調を崩しパーティに参加が出来なかったボニーがこぼす。
「私もパーティ会場で見ていたわ。皆さま、ごめんなさい。私、チャールズ様のファンクラブの一員でありながら、もしかしたらあの時からマリガン様にも惹かれていたのかもしれないわ……」
ティナは、自らの不誠実を詫びる。
「謝らないでティナ! マリガン様はチャールズ様の親友。チャールズ様は、きっと許してくださるわ!」
ジョディがティナの手を取る。
「私もパーティでのマリガン様の雄姿が見られなかったのは残念だけれど、これからマリガン様の活躍が見られるかと思うとワクワクしているの!」
ボニーが後ろからティナの肩を抱きしめる。
素晴らしい友情と団結を前に、カリーナは目頭を押さえていた。
「それでは皆様、今回はマリガン様のコールの練習もいたしましょう!」
ジョディが音頭を取ると4人の顔が引き締まる。
「「「「チャールズ!」」」」
「「「「チャールズ!」」」」
「「「「チャールズ!」」」」
「「「「マリガン!」」」」
「「「「マリガン!」」」」」
「「「「マリガン!」」」」
「「「「デカシリ!」」」」
「「「「デカシリ!」」」」
「「「「デカシリ!」」」」
腕を突きあげながらコールを続ける四人は、とても充実しているように見えた。
「しっ、静かに!」
ジョディは一転、声を潜めると他の3人を落ち着かせるような手振りで警告する。
廊下から足音が聞こえた。
「不味い見回りよ」
そう言いながらボニーは黒板の文字を消す。
「誰かいるのか?」
見回りの教師が教室の扉を開けたとき、四人の姿は闇に消えていた。
パロディです。
コードネームがそのままなのはパロデイなのを分かりやすくする為、別にコードネームで呼び合ってないけど。
チャールズファンクラブは、今後特に活躍しないです…たぶん。




