表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/22

15.ゴング

花道を歩く間、罵声を浴びせられ続けたフレアとは対照的に、歓声に包まれながらチャールズはリングに入った。

フレアはコーナーマットに持たれながら不敵な笑みを浮かべているが、その目はにチャールズを睨みつけていた。

二人がリングに上ると暗闇の魔法が解けた。


ゆったりとした動きでこの試合のレフリーを務めるアトキンスが声を響かせるマイクのような魔法具を片手にリングに上がる。

かって歴戦の名将として名を馳せた男の登場に会場ーー特に年配の観客がどよめいた。

観客に応えるように手を振った後、アトキンスは選手のコールを行う。


「赤コーナー 105パウンド 鮮血の魔女 フレア・ブラッシー!」

観客へ手を振るが返ってくるのはブーイングばかりだった。

気を悪くしたのかフレアは対峙するチャールズそっちのけで観客に向かって指を立てる。


「青コーナー 171パウンド リーガル王国正統後継者 チャールズ・リーガル!」

自分のことなど眼中に無いかのようなフレアの態度に、チャールズは面白くなさそうな表情を浮かべていた。

しかいコールを受けると一転して笑顔になり、観客に両手を挙げてアピールをした。

場内が様々な歓声に包まれる、女性の黄色い歓声からダミ声の『フレアを処刑しろ!』などという野太い怒号まで。


「ジャッジ フラット・アトキンス!」

そう自己紹介すると「おおーっ」と歓声が上がる。

アトキンスは胸の内に高揚感を覚える。

将軍として功績を積み、幾度となく大勢の前で表彰を受けてきた彼だったが、チャールズが語っていた「あの場に立った者にしか分からない感覚」というものを、少し理解できた気がした。


「国歌斉唱!」

チャールズは一歩前に出るとアトキンスからマイクのような魔法具を受け取る。

荘厳なイントロが流れ、チャールズはリーガル王国の国家を歌い始めた。

観客もそれに合わせて歌い出すが、一部の女性客はチャールズの顔が印刷された団扇を振りながら歌っており、その光景はまるでアイドルのコンサートのようだった。


(殿下、あんまり歌上手くないな…)


ヒールが一緒に歌うわけにもいかない。

フフレアはそんなことを考えながら、つまらなそうにそっぽを向いてあくびをし、観客の憎悪をさらに煽る。


「試合は失われた王国伝統の『レスリング』によって行われる!」

観客は、王国伝統の『レスリング』なるものは1か月前に初めて聞くようになったのだが、英雄として名高いアトキンス将軍が言うのだからとなんとなく納得する。


「肩をマットに押さえつけて3カウントを取るピンフォール、相手を叩きのめしてして10カウントを取るノックアウト及びギブアップによってのみ完全決着となる!」

よくわからないルールだが比類なき武名を誇るアトキンス将軍のいうことなので観客はなんとなく納得する。


「それでは試合前に両者の健闘を願い、選手に花束贈呈を行う!」

年頃の綺麗な女性が二人リングに上がるとにそれぞれフレアとチャールズに花束を手渡す。

謎の儀式だが軍の重鎮たるアトキンスが認めるのだから深い意味があるのだろうと観客は納得する。


花束をリングサイドにいるセコンドに渡すとまだ距離を取ったままフレアとチャールズは睨みあう。

アトキンスは二人を制するように両手を広げ、その間へ割って入った。

観客は、空気が張り詰めていくのを感じていた。


ゴングが鳴る。


アトキンスは二人を促すように両手を交差させた。

フレアが右手を上げると、それに呼応するようにチャールズも右手を上げ、互いにがっしりと腕を組み合わせる。

続けて左手同士も同じように組み合った。

観客の狂騒とは対照的に、試合は静かに幕を開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ