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10.密談

フレアとチャールズのタイトルマッチはチャールズがフレアを裁くというスタンスで連日大々的に報じられた。

学園の特設リングには多くの客席が用意されることになり、チケットは安くはない価格に設定されたにも関わらず即日完売となり、魔法ビジョンでも生放送を決まった。


チャールズは、一躍時の人となり王国が販売したチャールズの公式グッズは飛ぶように売れている。

元々容姿が整っておりそれなりの固定ファンがついていたが、改めて売り出された公式プロマイドは供給が追いつかないほど、タオルやぬいぐるみも売り出され国庫を潤すほどになるのではと言われている。


ーーかたやエリック侯爵の屋敷は悲惨なことになっていた。

塀には『死ね!』だの『魔女を吊るせ!』といった落書きが消しても消しても書かれるためそのままにせざるを得なくなっていた。

庭にはわざとゴミが投げ捨てられるばかりか投石されることもある。

この世界の純粋な住人が悪役をシンプルに憎んでしまうのは仕方ないことなのだが屋敷が幽霊屋敷になりつつあることをフレアは父親に悪く思わざるを得なかった。

その一方で昭和の悪役レスラーのような扱いを楽しむ気持ちが無かったといえばウソになるが…。


そんな屋敷の中でフレアは試合に向けてトレーニングをしていた。

先日、ひらひらのドレスを着ていたとはいえブルドッキングヘッドロックを仕掛けた際にすっぽ抜けて無様に腰を打ちつけたのは苦い思い出だ。

それ以外にも殿下とのチョップの打ち合いですぐにグロッキーになってしまった、この身体は鍛え方が足りない。

スクワットをしながら暴れた翌日に、父親に連れられ殿下のもとに釈明に時のことを思い出していた。


フレアが父親に連れられて秘密裏にチャールズ殿下の元を訪れたのはパーティホールで暴れた翌日のことであった。

チャールズの傍らにはアトキンス将軍が控えていたがこちらに対して警戒しているふうではなかった。

フレアは父親に言われた通り、昨日の事は忘れたかのようにスカートの裾をつまみながら微笑みながら淑女の礼をした。


「エリック、フレア、約束通り何を考えているか話して貰うぞ」

そう私たちに促したのはアトキンス将軍だった。


フレアがエリックに言われていたのは、指示があるまで何も話すな暴れるなということだった。(人を蛮族か何かと思っているのだろうか?)

エリックは私の発言を許さず話を始めた。王国の智謀、鉄の宰相の見せどころである。

「現在、我が国の財政は回復傾向にあります。しかし周辺諸国に比べ資源や特産物に乏しい為、貿易収支のバランスも悪く、脆弱な経済状況となっています」


いきなり経済の話が始まってしまった、現代知識のある私は多少なりとも理解ができる。

殿下も興味深げに聞いている、将軍は必死に自分の中でかみ砕いているように見える。


「この対策として内需の喚起と新産業の育成を提唱してきました。ただ内需に関してはこれまで緊縮財政で過去の戦争経済からの立て直しを図った影響もあり、国民の財布の紐は固いように感じます」


「待て待て、それとこの間のフレア嬢の乱行に何の関係がある!」

さすがに将軍が口を挟む。


「話は最後までお聞きください。 あれは必要なことだったのです」


すました顔でリーガルはそう言ったが、肉親であるフレアの眼は口元の僅かな強張りを見逃さなかった。

(パパ、無理を通そうとしてるなぁ…)


「今まで様々な策を講じて個人消費の喚起を行ってきましたがどれも効果的とは言い難く、私は頭を悩ませていました…そんな時、フレアは言ったのです」


「『時代はヒーローを求めている』と!」


チャールズははっとした表情で聞きかえす。

「まさかそのヒーローというのは…」


「殿下です…」

不敵な笑みを浮かべながらフレアは初めて声を上げた。

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