#94 俺と調査隊。(2)
コイツ、最高に良い奴じゃん!!
『分か――』
「(これほど戯言を並べられると、逆に感心してしまいんす。見え透きすぎて、ゴブリンですら騙されやしないでありんしょうに)」
『――ッ!!』
ユクス!?そ、そうだよね!分かってたけどさ!マジで分かってたけどさ!
『馬鹿にするな』
「うっ!?そ、そんなつもりでは!」
俺はいつだって冷静だからな。こんな奴に騙されたりしないんだ。(人間だった頃の)家に筋トレ器具がどんどん増えていったのだって、自分が本当に欲しいと思ったから買ったにすぎない。
決して通販番組の巧みな話術に乗せられて買ったわけじゃないんだから!
って、何を考えているんだ俺は。
ちなみにユクス(小鳥)は俺の体の中に作った小部屋でじっとしている。
騎士達が来る前に『狭くて疲れないか?』と心配をしたところ、「ルベルア様の魔力に包まれているだけで至極の安らぎでありんす」なんて訳の分からないことを言っていた。
多分、大丈夫ってことだろう。
「(ルベルア様、メル達がベクール王の近衛騎士に案内されておりんす)」
『ふむ』
つまり、そろそろ謁見が始まるという事か。今は俺達がフスカに着いてから約四時間半、メル達は予想よりも早く謁見に漕ぎ着けたという事になる。
リエルだとかリエルだとかリエルだとか、とにかくリエルが何かをやらかして一悶着があるかと思ってたけど、順調にいったようで何よりだ。
向こうが順調ならば、そろそろ俺の正体を解禁しても良い頃かな?
「我らに敵対の意思はありません!ここに在った村の行方についても我が国の王には不問にするよう進言致します!」
「マーク隊長!!何を言っているのですか!?」
「うるさい!お前達も早く剣を収め、全ての荷を差し出さないか!」
必死か。まぁ、そりゃそうだよな。
他の騎士の反応を見るからに、本来は責任感のある隊長に違いない。ただ、むざむざ部下の命を差し出すくらいなら荷物を捨てる方を選ぶ、という事なのだろう。
コイツ、やっぱり良い奴だな。
だからと言って“テッテレー!ドッキリでした!!”なんて言う訳にはいかないんだけどさ。
「(ルベルア様、レコード・ルーラーから決行を促す声が届きんした)」
おーけー。
『クックク。そう必死になるな、哀れな人族よ。何も貴様らの様な魔力の乏しい連中の命を奪うつもりはない。俺の目的はもっと大きく、大量の魔力がある場所だからな』
「何を言って……!?」
「隊長……!まさか……!!」
「……ベクール!!?」
『クハッ!クハハハハッ!』
「総員!剣を構えろ!!悪いが俺達の命運はここまでだ!!この化物をベクールに近づかせるな!!」
「「「ハッ!!」」」
うおおお!?急に!?お前らマジで!?カッコいいかよ!!
「対応は【蜂】で!?」
「無論だ!我ら!ベクールの剣なり!」
「「「我ら!!ベクールの剣なり!!」」」
ひぃーっ!蜂って何か分からんけどカッコいいぃぃい!俺も言いてぇぇ!!
良い感じで盛り上がってるところに水を差したくはないんだけど、俺には俺の事情があるから許してくれぇ!
「うおおおおっ!!」――キンッ!
「でぁあああっ!!」――カァン!
「(ルベルア様、後方の隊から二人ほど抜け出し、ベクールの方へと向かって行きんした)」
あっ、本当だ。あの二人を知らせに走らせ、この場に残った人員は命懸けで俺の足止めか。立派な覚悟だけど、捨て身はいかんよ。命は大切にな。さて――。
『良い、良いぞお前達!虫けらにしては随分と格好が良いではないか!俺は感動したぞ。クッハハハ!褒美に、真の姿を見せてやろう。お前達が自ら進んで道を開けたくなるようにな!』
全身に纏わせていた影を霧散させると同時に、抑えていた魔力を解放し徐々に高めてゆく。
意識するのは巨大な蕾が花開く様な動き。大げさに、ド派手に、ハリウッド映画さながらの演出で。
この状態で捕まえている騎士二人を放っておくのは不自然だ、絡ませた影で高く持ち上げてやろう。
うん、良い感じだ。かなりソレっぽい雰囲気が出せたはず。
「そんな……馬鹿な……!」
「魔王……だと!?」
「死んだ筈では無かったのか……!?」
『己の身の程を理解したのなら、退け』
いつもよりも数倍大きく、無数に出した帯状の影でおどろおどろしさの増した俺の姿。それを見上げ、分かりやすく顔色を変えた騎士達。血の気が引くとはまさにこういう事だろう。
勇ましかった数分前とは打って変わって逃げ腰の騎士達。マークと呼ばれた隊長の男だけが依然として俺のことを睨み付けてくるが、他の者達は震え、鎧をカチャカチャと鳴らしている。
「くっ……!馬鹿者共!狼狽えるな!!家で待つ家族の為にも覚悟を決めろ!」
「で、ですが!魔王相手にこの人数で立ち向かったところで……!」
「これほど強大な魔力への対処法を……私は知りません!」
「お前達!しっかりしろ!!」
『かつての魔王と俺を同一視するのは感心しないが、貴様らの覚悟は認めてやろう』
「何が……言いたい……?」
『クハハッ、素直に逃げ出すのなら喰わずにおいてやろうと言っているのだ』
ついでに持ち上げたは良いけど、その後の扱いに困ってた騎士二人を返しておこう。ただひとつ、二時間ちょっと捕まえていた所為で自分達の状況に慣れてしまったのか、この二人の顔からはもはや緊張が感じられないのが少し腹立つけどね。
「っうっん!」「ぶぁふっ!」
「イム!ラグ!」
『お前ら二人も不味そうだ。逃がしてやるからせいぜい命を大切にするんだな』
「ま、待て!……魔王ではないと言うのか?」
『ふん、人族には幻魔族の見分けがつかぬか』
「……ベクールに向かうのか?」
『だったらどうする?お前が俺を止められるか?ククク』
「……くそったれ……!」
ふぅ。新手の悪魔お披露目会はこんなところかな。これ以上しつこく相手をすると、逆に向かってくる可能性がある。反撃出来ないというのに、そんな面倒臭い事はご免蒙りたい。
「(――!ルベルア様、レコード・ルーラーが伝信を始めるようでありんす)」
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