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#82 赤の腕輪/青の腕輪。(2)

 「フフ、大丈夫、それほど長くはありんせんので、このまま話を続けるとしんしょう」


「ありがとうございます!お願いします!」


「赤の腕輪にはメルの魔力を染み込ませた羽、つまりメルの魔力とラピスラズリを。青の腕輪にはルベルア様の魔力を使用した指輪、その指輪もルベルア様の魔力としてラピスラズリと合わせた訳でありんすが――」


『なるほど、あの時メルの手を取ってたのは魔力を羽に染み込ませる為だったのか』


「はい。して、ルベルア様が直接ラピスラズリに触れると幻魔族としての能力に制限が掛かり、状況的にラピスラズリから離れると【消えた存在】になってしまう可能性がある。という問題でありんしたね」


「改めて聞くと、凄く難しい問題ですよね。でも、ユクスさんの腕輪を着けたら本当に解決できて良かったです!」


「成功の中身は、天を象徴する石、世界と世界を繋ぐとされる宝石、ラピスラズリの力とメルとルベルア様それぞれの魔力を込めた【二つで一つの腕輪】を作り装着した事」


『この腕輪は二つで一つなのか……俺とメルの関係に似てるな』


「古い文献に、ラピスラズリは分かたれると、再び一つに戻るまでの間、自らの片割れを守るとされておりんす。その時に自らの魔力の殆どを片割れの側に送る特性があるともされ、今回作った一対の腕輪はその特性を利用しんした」


「自分ではなく相手を守る為に魔力を使うなんて、なんだか素敵な石ですね」


「はい。片割れ同士が遠く離れた場所に在っても、魔力で繋がっているとされており、それこそが世界と世界を繋ぐ宝石と言われる由来になったのでありんしょう」


 うん、難しくて全然分かりましぇん!!


『つまり、どういう事!?』


「青の腕輪に込められたラピスラズリはメルに、赤の腕輪に込められたラピスラズリはルベルア様に作用しているという事でありんす」


『へぇ、なるほどね!』


 結局分からん!けど、まぁ良いや。


「メルにはラピスラズリの魔力増強効果を、ルベルア様はラピスラズリに直接触れていないので、恩恵だけを得られる。といった効果になりんす」


『恩恵だけを、って事は人型にもなれるし透明にもなれるって事?』


「はい。あの服も腕輪に込めてありんすので、人の姿になる分には問題ないかと。姿が消えるかどうかは試さねば分かりんせんが、予想通りならば腕輪を外せば消える事も出来るのかと」


『じゃあ早速、そいやっ!』


 どうせ試すなら早目にやっとくが吉!と、無造作に外して放り投げた青の腕輪は、俺の手元から放たれた瞬間に強力な磁力に引っ張られるようにメルへと飛んでいった。


 直ぐに「カチンッ!」と硬い音が響き、見ると青の腕輪はメルが腕にはめた赤い腕輪にピタリとくっ付いていた。


「ちょっとルアさん!折角作って貰ったばかりなのに乱暴にしちゃダメだよ!もし無くしたらどうするの!?」


 めっちゃ怒られた!


(『はうっ……ごめん。一瞬体から離すだけでも試せるかと思ったからさ、軽く放り投げて、そのまま受けとるつもりだったんだよ。まさかメルに向かって飛んでいくとは……』)


「もうっ!ユクスさんの説明で何となく想像できたでしょ?返すから、ちゃんとしてね!」


『はい!以後、気を付けます!』


「本当にもう!…………あれ?お父さん、お母さん?どうしたの?」


 おお、確かに二人とも凄い顔をしている。メルが怒るのを見るのは初めてだったのか?クックック、メルは可愛いけど、結構怒るんだぜ!


「いやぁ、急にルベルアが消えるんだもん。消えると知っていても急だとビックリするね」


「本当にメルちゃんにだけ見えてるのね。私たちには、マーちゃん消える、メルちゃん怒る、マーちゃん現れる、の三拍子だったわよ」


「えっ?」『マジか!』


「どうやら、メルとルベルア様には普段と消えた時の違いが無い様でありんすね」


『そう、みたいだな。それまた不便だけど、腕輪の効果は確かみたいだし、次からは腕輪を外した時は姿が消えてるって認識にしておくよ』


「それが良いね。僕らもメルが腕輪を二つ着けてたら、どこかに透明のルベルアが居るもんだと思うようにするよ」


 悪戯(イタズラ)もやりにくくなる訳か……残念!


『とまぁ、ここでする話はこんなとこかな?』


「んー、かな?ベクールに向けての作戦は教会で皆と話す予定だしね!」


「あの、もう一つだけ気になってた事があるんだけど、良いかな?」


『うん?』


「ルベルアとユクス様って、僕が思ってた以上に親しそうなんだけど……いや!親しいのは良いことなんだよ!?ただ、一応ルベルアの親として聞いておきたいと言うか……どういう関係なのかなって」


「それ、聞き辛くて黙ってたけど、お母さんも気になってたの!」


 ああ、確かに。言わないのは不自然か。うん、今は堂々と言える仲になったんだし、胸を張って教えてあげようではないか!


『おほん!ユクスとは、出会って間もないし、あまり良い出会い方をした訳でもないけど――!』


 ゴクリ!と聞こえた訳ではないが、モルドーとエリスが固唾を飲み込んだのは鈍い俺でも手に取るように分かった。


『実は俺達――』


「ルベルア様のお心遣いにより、(つがい)となりんした」


『……うん。それな!』


「「「ブフーッ!!?」」」


 三人して吹き出さなくても良いだろ。そりゃあ相手はユクスだから驚かれるかな?なんて想像はしてたけども。


「親である二人に教え遅れた事については、その、許してくりゃれ」


「いいいや!しし失礼!ええええっと、本当……なんだね?なんですね?」


 うおお、モルドーが凄くキョドってる!


「アババババ!みゃーちゎんが!?ユクス様と!?どどんどぅ!?」


 エリス、なんて?


 いくら何でも驚きすぎだろ!メルなんか、石化したみたいに固まっちゃってるしさ。ん?つがい?ツガイ?(つがい)って何だっけ?“お付き合いする事になりました”って意味だよね?


「はい。其方らが驚くのは当然でありんしょう。ですが、幸せになっても良いという価値が妾にもあるのならば、どうか認めてくんなんし」


「俺からユクスにお願いしたんだ。認めてもらえなくても、俺は考えを変える気は無いよ」


「そ、そうなんだ。うん、ちょっと驚いたけど認めるに決まってるさ。それに、幸せになっても良い価値は誰もが持っているものですよ」


「妾の様な嫌われ者にもそう言ってくれるのでありんすね。ありがとう」


 んん、この笑顔。これですよ、これ!


『ありがとう!メルも、宜しくな!』


「あっ!うん!もちろん!けど、ユクスさんはお母さんのお母さんみたいな存在で、ルアさんはお母さんの子供だから、お母さんのお母さんはお母さんの子供になったって事だよね?」


 クッ!このままやり過ごそうと思ってたのに、流石メルだぜ!ややこしいトコ突いてきやがった!


『何て言うか、ユクスとエリスの関係は魔力で生み、生まれたらしいから、ギリギリセーフかなぁ?って……』


「僕もエリスも、気にする訳じゃないんだけどさ、ただその――」


「ふむ。そう言えば、ルベルア様もメル達も、元は人族の生まれ。人族には貞操観念を持つ者も多いとか。安心しなんし、妾はまだ破瓜(はか)の痛みを知りんせん」


「ハカーッ!?ちちちょ!それを気にしていたはありませんよ!ただちょっと複雑だなって思っちゃっただけで!」


「そそそうよ!もうマーちゃんたら!ちょっと複雑だけど、絶対にユクス様を……いや待って、マーちゃんと結婚したんだから私の子供でもあるのよね?ユクスちゃん……かしら?とにかく!絶対に幸せにするのよ!」


 えっ?結婚て言った?もしかして、ツガイってのは夫婦って意味か!?ユクスと俺は恋人同士どころか夫婦だったの!?


 いつのまに!?


 別に嫌な訳じゃあないけれど、というか嬉しいけど、一体いつ夫婦になったのかしら。ユクスに聞くのは失礼だろうし、素直に受け入れておこう。


 それと、なんか複雑な関係になっちゃうのは認めるよ。すまんの!


「ハカ?ってなぁに?」


「こほん、メルは気にしなくても良いんだよ」


『馬鹿だなぁ。ハカは(はか)だろ。墓の痛みを知らないって事はえーと、アレだ!結婚したことが無いって事だ!』


「ハハ。大体そんなとこかな?」

(ルベルア?全然意味が分からないけど、きっとメルには早い話だと考えて誤魔化してくれたんだね!ナイス!)


「そうなんだ、知らなかったよ」


『さて、遅くなる前に教会に行くとするか!どうせ他の皆はもう集まってるだろ』


「うん、そうだね!行こっか!」


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