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#42 フスカ北西戦。

 空と陸から押し寄せるモンスターの大群を前に高まる緊張感、

 メル、ミハエル、テスタント、リエルはフスカ村から北西を目指して駆けていた。



 ◇◆◇ツナウ山脈西部・雲海の谷◇◆◇



暗い部屋で眼を瞑り、ブツブツと一人呟く者が居た。


「ふふっ、慌てておるな。さて、妾も会いに行くとしんしょうか……」


「イッテラッシャイマセ ジョオウサマ(・・・・・・)


 ◇


◇◆◇


 ――タタタタッ……ザッ!


「よし、ここらで待ち受けるとするか!見通しの良いここならば背後からの奇襲を受けることもあるまい!」


「はい、ここなら主も思い切り剣を振るえますし私も立ち回り易いかと」


 ググッと体を伸ばしたテスタントは体に魔力を巡らせ、一種の身体強化状態を作り出す。


 ミハエル達はフスカ村でモンスターの大群を待ち伏せたのでは、いくら建物を強化したとはいえ村が更地になってしまうと判断し、北西の草原地帯へと移動したのだ。


「私はアリエス様達にここで待つ事を知らせてきます!」


「メル、私もついてく!アリエス様はきっと空に居ると思うし」


「うむ、アリエスらが既に空のモンスターと戦闘になっていたならそのまま加勢してやるが良い!」


「分かりました!」――ドッ!スタタタタッッ!!

 力強く踏み込んだメルは一気に加速し風のように走って行く。


 ――タタタタッ……。


「わっ、メル早すぎっ、ホワイトフェザー!」


 メルに走って追い付くのは無理と判断したリエルは、白い翼を羽ばたかせアリエスを目指す。


 その頃、先陣を切ったアリエスらはミハエルの予想通り、進行の早かった鳥型モンスターと戦闘状態となっていた。


「陸のモンスター共が向かう前に、コイツらだけでも始末しとくぞ!」


 ククアドラゴンは緩急をつけ敵の間を縫って飛び、アリエスが槍と斧が合わさった武器 《ハルバード》を華麗に振り回しモンスターを落としてゆく。


「ああ!空と陸のモンスターが共闘しだしたら面倒だからな!」


 トマスが手にする武器も長柄武器(ポールウェポン)だが、アリエスの武器とは違い、柄も刃も長い剣 《パルチザン》である。それを巧みに操り敵を切りつける。


「はぁ、とんだ大群だな。ククア、先に行かれると面倒だ、ここで全て落とそう」


「ピィィッ!」


 白く美しい毛並みしたククアドラゴンが踊るように舞う度、アリエスのハルバードが“ヒュヒュン”と小気味良い音を立て、モンスターが次から次へと空から墜ちてゆく。


 この時点で多くのモンスターを倒しているにも関わらず、二人にはかすり傷すら出来ていなかった。


 それとは対照的な戦闘をするトマスとノート。


「ノート、次はアイツらを叩こう!」


「ガガァッ!」


 ―――ドッォン!ビュビュンッ、ズッバァッ!


 毛を持たぬ代わりに体が大きく鱗も厚く硬いノートドラゴンが三~四体モンスターが密集する所へ体当たりで突っ込み、その周りを飛ぶモンスターをパルチザンの一振りにより切り伏せるトマス。


 かすり傷など物ともせずに敵を撃墜してゆく二人だが、敵の強攻撃には敏感に対処し、深い傷を作らぬように立ち回っていた。


 モンスターは絶命してから暫くすると塵と魔力の結晶に変わり消えてしまうが、そうで無かったのなら地上にはとてつもない量の死体の山が出来上がっていた事だろう。


 先陣を切った四人は、それほどの数のモンスターを討伐していたのである。が、鳥人型“魔族”の登場によってその快進撃は止められてしまった。


 ――ギッギィッン!


 間一髪で魔族の接近に気付いたトマスは鋭い鉤爪が目先寸前に迫った所を長柄で受け止めた。


「ぐっ、貴様は……!」


「カカカカッ!随分と多くの手下を倒してくれたモノだナ!黒ノ王が何故あんなチンケな村を襲うように命じたのか考えていたガ、コウイウ事カッ!」


 現れた魔族は全身が赤い羽に覆われた鷹の鳥人“レッドホーク”、あのギャザンと同じ種族の魔族だ。


「チッ、新手か!ククアッ、トマスの所に!」


「ピィィッピィィッ!!」


 慌てた様子で鳴くククアドラゴンはアリエスの言葉を無視して体を翻した。次の瞬間、ククアドラゴンの翼から鮮血が飛び、美しい白の毛が赤く染まった。


「カッカァッ!我らはレッドホークの兄弟ズズとゲゲ、ここでオマエ達を狩ればオレタチ兄弟の地位は約束サレルからな、死んでもらうゾ」


「しまった……ククアッ、私を庇ってくれたのか!?貴っ様らよくもっ!!絶対に生かして通さんぞっ!!」


 怒り猛るアリエスだが、叫び虚しく傷を負ったククアドラゴンと共に落下してゆく。


 ――ギギ……ギギチ……。


 未だ拮抗を続けるトマスとズズ、パルチザンと爪は押し合いを続け、お互いが駆け引きを制そうと攻撃に切り替えるタイミングを窺っている。


「ククア!アリエス!くそっ、お前ら許さん!ノート頼む!」


「ガアァッ!」


 ――ドッ!!

先に仕掛けたのはノートドラゴン。正面からの攻撃に警戒していた敵の死角を上手く突く事に成功した。


「カハッ、オノレッ無駄な足掻きヲ!」


 ノートドラゴンが体を丸め、その太い尾でズズを叩き吹っ飛ばしたのだ。体勢を崩したズズの首元目掛けてトマスのパルチザンが伸びた。


 が、それをゲゲに阻止されてしまい、トマスとノートドラゴンの前には二体のレッドホークが構える事となった。


「ハァ、ハァ、ノート……魔族相手だが俺達のやることは変わらない、ここを突破してアリエス達を助けに行くぞ!」


「グルルゥ」


 二体の魔族の登場により攻撃対象から逃れた鳥型モンスター達は、次々にこの戦域を抜けフスカ村へと向かい進行した。


「カッ、大層な物言いダガ、オレタチ兄弟を相手に勝算ナドあるものカッ」


「チガイ無い、さっさと殺って小さな村ヲ潰しに行くゾ」


 二体が左右対照に構え、トマスを挟み込む様に左右に分かれ始めた為、ノートドラゴンはその動きに対し完全に挟み込まれぬ様に、敵を見据えたまま後方へ移動した。


 膠着状態となり、場にはピリリとした空気だけが流れだす。


 しかし、その間もフスカ村に向かい飛んで行くモンスター、そのうちの数匹が下へ向かい降下していった。


 それを見たトマスの脳裏に嫌な予感が過る。



 (下には落ちた二人が居る……アリエスが無事ならあんなモンスターに遅れは取らないと思うが、もし落下でアリエスまで怪我をしていたらマズイ事に、このままノートに急降下してもらうか?


 いや、それだとこの二体までついてくる事になる……くそっ!)


――トンッ

 右足でノートドラゴンの首の付け根を蹴ったトマス。それに反応したノートが素早く右のレッドホークへと向きを変え、それと同時に尾を振り、後ろに居るもう一体を牽制。


 それと同時に長い柄をギリギリまで使って突き出されたパルチザンの刃がゲゲの肩を掠めたが、致命傷にはならない。


 ――ブシュッ「グガァッ!」


ズズの鉤爪がノートドラゴンの尾に深く食い込みノートドラゴンが呻き声を出す。


「すまん!ノート、耐えてくれ!!」


 突き出したパルチザンを軽く手元に引き戻し、遠心力に任せて後ろへ振ったトマス。


 その刃はズズの翼に傷を与えたが、ズズが咄嗟にノートドラゴンの尾から鉤爪を離して避けた為に、かすり傷程度に終わる。


 攻めあぐねているのは二体のレッドホークも同じだが、分が悪いのはトマスとノートの方だろう。


「カッ、キサマは厄介な武器を使うナ、これ以上時間を使うのもオシイ、上と下から挟むゾ」


「クソガッ、俺の翼に傷をつけヤガッテ……了解ダ兄弟」


 堂々と作戦を言い、舞い上がったゲゲと降下を始めたズズ、実際ドラゴンナイトとしては左右からの挟み撃ちより上下からの挟み撃ちの方が戦い難く、トマスが対処に迷った――――その時。



「ギァアッッ!」

 戦況の緊迫する中、けたたましい叫び声が上がった。



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