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ポピュラリティゲーム  ~神々と人~  作者: 薔薇ハウス
十一章 明かされて行く謎
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王宮の地下へ

 再び意識を取り戻した時、目の前には大海が広がっていた。

 輝く星に地上を照らす月。現在は半円の状態に近い。

 いや、こちらでの名前を知らないので、それが月とは言い切れないのだが、それを見た俺はようやく気付き、夜空だと理解して慌てて起きるのだ。

 あれからどうなったのか。それを知る為に。


「あ、起きた。目覚めの第一声をお願いします」

「どうなったんだ!? それにここは!?」


 聞いて来たのはユートであった。場所はどうやら家屋の上らしい。

 俺が意識を失った場所……は、ここからでは正直把握が出来ないが、右手の先には王宮らしき物の、開け放たれた門が見えた。

 左手にはユートと、それに師匠。ユートは直後にむくれた顔で、俺の目の前に飛んで来る。


「もー……ヒジリのカクンじゃ無かったっけ? 質問に質問で返しちゃダメだって……」


 正直ちょっとイラっ……としたが、「あー……」と切り出して我慢する。

 実際そうだし、意識はしているが、時と場合と言う物がある。

 俺だって生死を分ける場面で「どっちに行く!?」と聞いて「それよりアレを見ろ! 落とし穴じゃないか!?」と返って来ても、「質問に質問で返すな!」とは言わない。

 勿論目の前、要するに、優先順位が高いと思われる事柄の方を優先するし、今回の事に当てはめるなら、ユートの意味の無い遊びに付き合うより、ギースの安否を知る方が重要だ。


「兎に角どうなったんだ? なんでここに居るんだ?」

「兎に角!? オーボー! オーボーだよヒジリー!」


 故にもう一度、改めて言うと、怒ったユートに頭を叩かれる。

 しかし、ダメージは全く無いので、それを無視して師匠に向かった。

 それに気付いた師匠は一言。「ギース君は」と言って右手を伸ばす。


「多分あそこじゃ。彼が逃げて行った方向から、察して居るというだけの事じゃがね」


 それから王宮……と考えられる、開かれた門の先にある建物を指差した。

 横には広く、縦に低い。建築素材はおそらく土か。それは、この家屋を含む皇都の建物の殆どがそうで、藁ぶき小屋のあの集落とは一線を画しているのであろう。

 それでも文明の度合いと言うか、建築レベルは相当に低いが、そこは今の俺達にとっては全く関係の無い事である。

 それよりもギースだ。

 逃げて行ったと言う事は、師匠はギースを撃退したらしい。そこには素直に敬意を抱くが、ギースが逃げた理由が分からない。

 いや、そもそも俺を攻撃した理由も、ハッキリと分かって居る事では無いが、その前に感じたあの高音が原因ではないかと薄らとは思う。

 あれは何だったのか。師匠も俺も、不快感は覚えたがそれだけだった。

 なのになぜギースだけが、おかしくなってしまったのだろうか。


「思うに。アレは洗脳じゃろう」


 不意に、師匠がそう言った。俺はただ「洗脳……?」と繰り返す。


「魔物か、半魔にしか効果が無い洗脳……

 そう推測すれば、ギース君だけでは無く、先の戦争の理由にも繋がる。

 なぜ、操るのかと言う理由は分からんし、その目的がどこにあるのかも分からん。

 その上、根拠もありはせんがね」


 だが、そう考えるなら、ここまでの事には納得が行く。

 戦いの後に救われた兵士も、「記憶が無い」と言っていたし、例の集落にやって来た兵士も、普通に考えるなら行動がおかしい。

 ギースが俺を殴った事も……いや、最近遊んでなかったから、スネていただけかもしれないが、少なくとも殴ると言う行為の前に、何かワンクッションはあって良い筈だ。


「と、いう事を踏まえた上で。さてどうするか。行くかね? あそこに?」


 答えはイェスだ。決まっている。ギースを放置して帰るなんて出来ない。

 もし、洗脳されているなら、洗脳している奴を倒せば良いし、万が一、俺に怒って居るなら、土下座をしてでも謝れば良いだけだ。

 まぁ、後者の可能性は殆どゼロと言って良いが……


「行きます。どちらにしろ、あそこには色々ある気がしますし、ギースを放置して帰れませんから」

「じゃあボクがテーサツしてくるー?」

「いや、もう偵察は良いよ。お前だって女の子だし、危険だからな」


 それに純粋に俺が心配だ。マジェスティ以外の攻撃では死なない事は分かって居るが、逆を返せばマジェスティが居れば、ユートの姿は見られてしまう。

 そして、攻撃が通用する以上、ユートは危険に晒される訳で、そんな事を思いついた以上は、これからはおいそれとは偵察に出せない。

 過保護に磨きがかかったとも言えるが、ユートの大切さに気付いたとも言える。


「ヒジリがボクを女の子扱いした……! それは恋なの? 目覚めちゃったの?」

「知るかよ……」


 大切さには気付いたが、恋かと言われるとまだまだ違う。何より、それをしたとしてもユート相手では報われない恋だ。

 故に俺はそう言って誤魔化して、その場に立ち上がって王宮を見た。

 兵士は居ない。見回りすらも。明らかに異常な光景である。開け放たれた門はまるで、俺達の侵入を誘っているかのようだ。

 罠……の可能性もあるかもしれない。


「後ろはワシが務めよう。ユートちゃんは上。ヒジリ君は前じゃ。それでええかな?」

「勿論です。頼りにしてますよ、師匠」


 そう思っていると、師匠が言って来たので、言葉を返してユートを乗せる。

 その後に俺達は大きく跳躍し、城門の一部に足を着けた。




 探索を開始して一時間程が過ぎたか。

 俺達は今、地下へと降りている。

 上――つまり、一階建ての王宮だが――そこには生憎誰も居なかった。

 広間はおろか詰所にも、玉座の間にすら誰も居らず、若干、気の抜けたタイミングで、ユートが階段を見つけたのである。

 場所としては玉座の間だが、別に隠されていた訳では無い。普通に、入口から見るのであれば、右手の通路の先に存在し、調べるべき場所が他に無いので、俺達はそこに向かった訳だった。


 階段を下り始めて二分程が経ったか。かなり下に灯りが見える。

 距離で言うなら二百m程だろうが、段数にするとちょっと分からない。

 現状、階段には灯りが無いので、おそらく相当に暗いと思う。

 だが、俺には暗視がある為に、そこには何の不自由も無かった。


「ヒジリは分かるけどライバードさんは何で? やっぱり本当はマジェスティなんじゃない?」


 左肩に乗るユートが言った。言われてみればそこは不思議で、振り向きはしないが言葉に注意する。

 すると、師匠は左目のレンズが、マジックアイテムでうんたらこうたらで、その結果として左目限定で、暗闇の中でも見えるのだと言っていた。

 他にも景色を拡大したり、行った事がある場所なら映す事も出来ると言う。

 右肩で浮遊する謎の金属もそうだが、師匠にはまだまだ不思議が一杯だ。

 今は兎も角、落ち着いた際には色々と聞くのも良いかもしれない。


「そう言えばこの間、迎えに行く前に、館の玄関を映して見たんじゃが、ヒジリ君。

 キミはメイド達から「あのゴミ」等と呼ばれとる。

 何をしたかは追及せんが、改めた方がええかもしれんな」

「あ、は、はい……そんな事も見えるんですね……っていうか、声も聞こえるんですね……」


 出来ればそれは知りたく無かった。態度から薄々察してはいたが。

 特にパンツ。これがヒドイ。ダナヒやカレルは手洗いをしてくれるのに、俺の物だけ棒に刺し、桶の中を数回泳がせてそれで終わりとしてしまうのだ。

 干した後の回収も、手袋を三重にしている所を見たし、その上で顔を大きく逸らして運んでいる所を何度も見て来た。

 まぁ、やらかして来た事がやらかして来た事なので、ダナヒに告げ口等する気は無いが、賃金を貰って働いている以上は、嫌な事でもして欲しいとは思う。

 別に「脱げ!」とか、「舌を出せ!」とか、規則外の事を言っている訳では無いのだし……

 と言うか、こんな事を思っているから、何となく察した女性達メイドに引かれてしまっているのだろうか。

 そうなら俺自身にも原因はあるのか。


 そんな事を思いながら更に下り、近付いて来た灯りに警戒をする。

 どうやら左手の空間……と言うか、部屋の中からの灯りのようで、電車のドア位の大きさのそこから、灯りが漏れていただけのようだった。

 人の気配を探ってみると。


「いっ!?」


 思わず驚く。小さな声でだが。驚いた理由はその中に数百人の気配を察してしまったから。

 少なくともそれは二百から、三百人位は居ると思われ、入口まで最早五十mも無いのに、物音一つ発さずに居た。

 こちらの気配に気付いていないなら、声や咳払いが聞こえても良い筈。

 物音一つ聞こえないのは、流石に不自然と言って良い。

 高い確率で気付かれている。或いは待ち伏せをされているのかもしれない。

 その事を手短に師匠に言って、ユートを離して慎重に近付く。

 そして、壁に背中をつけて、ゆっくりと中を覗き込むと。


 ――宛ら礼拝堂のような場所で、整列している者達が目に入り、その者達の先の先に、赤子を抱いている女性が見えたのだ。

 ただし、赤子の肌の色は不気味なまでに紫色で、抱いている女性は頭に冠。

 つまり、皇帝の証たる、金の冠を頂いていた。



新作ですが、色々あって「妖怪+近未来もの」に、なると言う予定が高まってきました。

と言うか、現在はそのつもりで設定とプロットを組みつつあります。

どうでも良い情報かもしれませんが、おそらく「俺とぼっち~妖怪奇譚~」等と言う名前でいずれ上げると思われますので、見かけた際に興味が湧けばよろしくお願いしたいと思います。


あと、この作品を読んで下さっている方々だけに先行してちょっとのネタバレをすると、「ぼっち」というのは一人ぼっちと言う意味もあり、「だいだらぼっち」と言う妖怪の固有名詞の意味でもあります。

つまり、俺=主人公と ぼっち=だいだらぼっちが、小さい頃に出会った結果…………になるような物語になります。

基本的にはバトルもので、だいだらぼっちは女体化します(笑)

その上ダイダラ・ブレードだとか言って、ウエポン化までしちゃう予定です。

期待して下さい! とまでは言えませんが、「何かアホな事企んでるな…」と覚えて居てくれると嬉しいですね!


長々とすみませんでした!

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