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ポピュラリティゲーム  ~神々と人~  作者: 薔薇ハウス
五章 世界一下品な祭り
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物音の正体

 訳の分からないその何かは、すぐにも食堂に飛び込んできた。

 顔は人で、体は蜘蛛。長さとしては一m程か。

 脚の部分は宛ら剣で、それを器用に動かしながら、左右の階段からなだれ降りて来た。


「何あれキモォォッ!!!」


 目にするなりにユートが叫び、俺の頭の後ろに隠れる。

 

「キシャアア!!」


 奇声を発して一匹が飛んだので、槍を召喚して横に払った。

 その攻撃は相手を捕らえたが、態勢を直して壁に着地し、重力に逆らって這うようにして降りて来て、そいつは再び飛びかかって来た。


「何だコイツらは?! マジきめぇ!!」


 その頃にはダナヒも戦闘に入り、数匹の敵を迎撃したが、俺と同様ダメージを与えられず、周囲の敵を増やしただけに終わった。

 現状の数は三十か四十。或いはもっと居るかもしれない。

 次から次に飛びかかって来られるので、正直数えている暇が無いのだ。


「離れてろユート!」

「アイアイサー!」


 念の為にユートを離し、一匹に飛び乗って顔を突く。


「何っ!?」


 が、あまりの硬さに刃が欠けて、動揺しながらテーブルに飛び乗った。

 その直後には何匹かが飛び、突き刺すようにして俺を狙う。

 それを走って避けた事で、テーブルが端から破壊されて行った。


「何なんだコイツらの硬さはぁ?! 思春期の少年顔負けじゃねえか!」


 そう言いながらも斧を振り、伸ばされた首をダナヒがかわす。

 首はそのまま壁にぶつかり、頭が壁に噛みつく事で、本体をそちらに強引に引き寄せた。


「キッモ!!?」


 そう叫んだユートが見守る中で、そいつは床に降りてダナヒに向かった。


「もしかしてこいつらの事か!?」

「何がですか?!」


 ダナヒが言って俺が聞く。

 その間にも一匹の背中を突くが、攻撃はやはり通らない。


「さっきのメモだよ! 攻撃は通じねぇ! だからどっかを狙えとか、オメェがさっき言ってたじゃねぇか!」

「メモですか!?」


 言われた為に目を細め、防御をしながら思い出す。


「くそっ! こいつらっ……!?」


 しかし、攻撃がなかなか激しく、思い出す為には集中力が欠けていた。


「腹を狙えとか切り落とせとか言ってたよー!」


 とは、戦いを見守るユートの言葉で、「それか!」と、殆ど同時に言ったのが、俺とダナヒの二人であった。

 腹と言うなら頭の下だが、奴らの外見は殆ど蜘蛛で、それにあてはめて考えるなら、腹の部分は胴体の下だろう。

 跳躍した敵に狙いを定め、胴体との継ぎ目を素早く切りつける。


「ブチャリ!」


 と、飛び出したのは何らかの液体で、切られた腹が地面に落ちる。

 切られた敵はそのまま攻撃し、かわされた後に壁に突き立った。

 その後の動きは明らかに緩慢で、やがては活動を静かに停止。

 これで行ける! と思った俺達は、残りの敵の掃討に入った。


「こいつは鯨油げいゆか……おもしれぇ!」


 戦いながらにダナヒが言って、直後に「ヒジリ!」と声をかけてくる。


「何ですか!?」


 と、切りつつ返答すると、「魔法が使えたよなぁ!?」と質問して来た。


「それが何か!?」

「俺様の斧に炎を撃ってくれ! 軽ーい奴を一発な!」


 訳が分からず「はぁ?!」と言うと、「良いから撃て!」とダナヒが急かす。


「どうなっても知りませんよ!?」


 と、一言言ってから、隙を見つけて火球を撃った。


「よしきたぁ!!」


 ダナヒが飛んで斧を振り、火球が斧に引火する。

 着地したダナヒは「ヒャッホー!!」と喜び、燃え盛る斧で敵に向かった。


「どういう事!?」


 それを目にして驚くと、「オメェもやって見ろ!」とダナヒが言った。


「あ、いや、俺は別に……」

「良いからやるんだよ!!」


 やんわりと断るがそれを却下され、仕方が無しに槍に火を点ける。

 そして、そのままで攻撃すると、しばらくしてから敵が爆ぜた。

 原理は不明だが何かに引火し、内部から爆発しているらしい。


「ウッヒョォ! こいつはおもしれー!」


 それが余程に気に入ったのか、ダナヒのテンションは一気に上がり、


「次だ次! 殲滅するぞ!」


 と、周囲の敵を一掃し、通路の方へと走って行った。


「ちょっ! 待って下さいよ!」


 最後の敵を片付けて、爆発を見てから後ろに続く。


「うわっ?!」


 と、驚いたのは通路に出るなり、一匹の敵が爆発したからだった。

 それは、道なりに右手に続き、時間差で次々と爆発して行く。


「やっぱダナヒさんって強いよねー……」

「テンションが上がるとバケモノ化するよな……」


 それを目にしたユートが言って、そこには異論のない俺が答える。


「うぉぉぉぉぉ!」


 その後には突き進むダナヒの背を追い、打ち漏らした敵を片付けて行った。

 通路を進み、左に曲がると、突き当りにぶつかり左に曲がった。

 その先で見つけた倉庫のような場所で、二十匹ばかりの敵と遭遇。


 それらを全て片付けた後に、辺りはようやく静かになった。

 場所としては俺が最初に妙な物音を聞いた辺りで、おそらく奴らはここから動いて俺達を襲ってきたのだと考えられた。


「いやー、なかなかアチィ戦いだったな。どっちかっつーと物理的に」


 これは前髪を焦がしたダナヒで、他人のせいにしたいのか「ちろーん」と見て来る。


「やれって言ったのはダナヒさんですよ……? 俺の責任じゃないですよそれは」


 しかし、しっかりと抗議をしておき、「わかってるって」と言う返事を貰った。


「にしても、こいつらは一体何なんだ? こんな所で何をやってた? って、オメェに言っても仕方ねぇが、当然抱く疑問だわな」

「ですね……俺も同じ気持ちです。どうも見た目が機械っぽいですし、カレルさんに聞けば何か分かるんじゃないですか」


 続けた言葉に返事をすると、ダナヒは「あぁ」と一言を発した。


「てゆーか、さっきの曲がり角で、左に曲がらなかったらどこに行くのかな? ヨーするに真っ直ぐ行ってたらさ」

「ああ、なるほど」


 ユートのそれはダナヒには聞こえないので、直後に言って疑問を伝える。


「ああ、んじゃ行って見るか?」


 と、ダナヒがその気になった事で、道を引き返してそちらに行って見た。

 全ての敵を片付けたのか、そこから先は襲撃は無く、だが、時折遺体を見つけつつ、俺達はかなりの距離を歩いた。


「階段? 間違えたか?」


 現れたのは上り階段で、元の場所に戻ったのではないかと心配したダナヒが疑問する。


「いや、左に曲がったんで、戻っては無いと思いますけど…」

「だよなぁ」

「だよだよ」


 一応言うと、ダナヒが言って、ユートがそれの尻馬に乗る。


「上って見ますか」


 と言う、ダナヒに従い、警戒しながら階段を上がった。

 おそらく来た時と同じ位か、もしくはそれ以上に上っただろう。


「えー……」

「こうなるか」


 封鎖されている出口を見つけ、俺とダナヒは立ち止まるのである。


「ま、ここまで来たら行くっきゃねえよな?」


 その質問には黙って頷くと、ダナヒは斧を振り上げた。

 一度、二度とそれを振り、出口の封鎖の破壊に成功。


「くっ!」


 直後に目の中に入って来たのは、緑が支配する世界であった。

 その後に見えたのは朽ちた遺跡で、その上には鳥などの姿も見える。

 遺跡の殆どは潰れかけて居て、多くは樹海に飲まれつつあった。


「なんーーだ、ここは……?」


 それには本気で「さぁ……」としか言えず、しばらくは立ち尽くしていた俺達だった。




 潰れた遺跡を調べて回ったが、そこには一人も人は居なかった。

 住んで居た形跡自体はあったが、考古学者でも無い俺達には、それが何年前の事なのかは、推測する事すら不可能だった。


「ま、おそらく諸島の中だと思うが、見つからなかったってこたぁ、周りは崖か……」


 遺跡のひとつを調べて出てくると、待って居たダナヒがそう言った。

 それには分からないので何も言えず、無言でダナヒの後ろに続く。


「おっ」


 少し歩くと小さく声を出し、前を歩いていたダナヒが止まった。

 相も変わらず樹海の中だが、そこには二十段程の階段があり、その上には半分崩れかけた神殿のような建物が見えた。

 階段の右には翼を生やしたライオンのような彫像も見え、何とはなしに嫌な予感で見ていると、それの両目が青色に光った。


「オラ!」


 が、ダナヒがすぐに斧を投げ、何かをする前にそれを破壊。


「昔から先手必勝っつってな。何も待ってやる必要はねーやな」


 と、笑顔で言って階段に近付いた。

 ダナヒはその後に斧を持ち、それを担いで階段を上がり出す。

 どうにもケンカっ早すぎる気がするが、確かに何かがあってからでは遅く、言葉は返さないが苦笑いを返して、俺はダナヒの後ろに続く。


「ていうかモンドウムヨーって奴じゃない? 意味があったらどうするんだろ……」

「そうじゃない事を祈るしかないな……」


 ユートの問いにはそう答え、階段を上って入口に辿り着いた。

 神殿の天井は殆どが抜け落ちており、内部は瓦礫や雑草だらけ。

 ダナヒはすでに中へと入って、左に向かって何かを見ている。


「ちょっとダナヒさん、無警戒すぎますよ……」


 ダナヒは王で、リーダーである。

 強いと言うのは分かっているが、もう少し自重をするべきだろう。

 そう思ったが故に注意して、立っているダナヒの横に近付く。


「おお、見て見ろよ。訳は分かんねーが、なかなかどうして迫力があるよな」


 それで反省したかは謎だが、ダナヒが言って顎を動かす。

 指し示しているのは目の前にある、壁に描かれた壁画であった。

 一番左はおそらく人で、両手を頭上に掲げて立っている。


 その人数は六人で、両手の上には球のようなものがある。

 六人の右にも人が描かれ、右へと向かって歩き続け、途中の頭上に現れた者に多くの者達がひれ伏していた。

 その者は次に王冠をかぶり、眼下の者達に何かを指導。

 更に右では両手をついて、絶望したように四つん這いとなっていた。

 その者自体はそこで消え、その横からは龍になり、下に群がる者達に向け、雷と雨のようなものをお見舞いしている。

 そして、最後の部分では、高波に飲まれる者達だけが描かれ、そこから先の部分には謎の文字列が記されていた。


 正直言って薄気味悪く、あまり見て居たいとは思わないもので、最後の部分を一瞥した後に、ダナヒの方へと視線を移す。


「意味不明だな。考えるだけ無駄だわ」


 視線に気付いたダナヒは言って、両手を広げておどけて見せた。

 その後も周囲を調べてみたが、理解出来るものは何も無く、例のキモイ敵の残骸をカレルへの土産として帰るのである。




 その日の翌日。

 朝食の際に、カレルは自分の所見を述べた。


「どちらかと言うなら防衛用の兵器ね。

 理論はまだ分からないけど、おそらく何かを持って居ない相手に、襲い掛かるような仕組みだと思う。

 言い換えるなら攻撃機能を持った監視塔と言えば分かりやすいかしら。

 あるものを持って居ないと攻撃する、動く監視塔と言った所。

 動力源はヴィネッソ球で、材質は超高純度鉄。

 数値にするなら九十五%以上の恐ろしいまでに硬い鉄よ。

 でも、タンクの部分はなぜか樹脂製。

 だからこそ切り離す事が出来た訳ね。

 ちなみに燃料は鯨の油。これは手軽に入手できると言う点から燃料にしたのだと推測されるわ。その他の事は解析中だから、分かった事は追って報告するわね」


 それだけ言ってカレルは座り、右手を伸ばしてパンを取る。

 俺とダナヒとデオスは聞いても、意味が分からず硬直しており、「何か?」と、カレルが気付いてくれるまで、食器を片手に呆然としていた。


「あー……その、そいつはなんだ……兵器って事は間違いねーのか?

 それも近づかなければ問題が無い、防衛用の兵器って事で?」


 これはダナヒで、聞かれたカレルが「断言は出来ないけどね」と短く答える。


「ヴィネッソ球と言うのは?」


 続く質問はデオスのもので、カレルは「そうね」と一言言ってから、


「人間の体で置き換えるなら、心臓と脳が入っているような球よ」


 と、俺達にも分かるように教えてくれた。


「それっていつごろに作られたものなんですか? あの遺跡に住んで居た人達が作った物と見て良いんですかね?」


 最後のそれは俺の質問で、カレルは「うーん……」と唸った後に、「正直分からないわ」と、肩をすくめた。


「はいはーい! なんであんなデザインなんですか! 何か理由があるんですか!」

「そんなの関係無いだろ……」


 ユートが聞いて俺が言うが、「聞いても良いじゃ~ん……」と、ユートは不満気。

 それを見たカレルは「ふふっ」と笑い、


「それはもう製作者のセンスだったとしか言えないわ。個人的には理解のできないゲテモノアートの世界だけどね」


 と、丁寧に質問に答えてやっていた。


「ですよね~。アレは流石に無いよ~。首がこーーーう! 伸びた時なんて、ヒジリの両耳を引っ張ろうと思ったし!」

「それに意味は!?」


 直後の言葉がそれであり、驚いた俺がすぐに聞く。

 しかしユートは「さぁ…?」と言って、両手を広げて困惑していた。


「(困惑したいのは俺の方だよ……)」


 それには心の中だけでボヤき、右手を伸ばしてパンを取る。


「(なんかアレだな。米が食べたいな……)」


 不意に思ったのはそんな事で、それを理由にして動きを止めた。


「どうした?」


 心の動きに気付いたのだろう、ダナヒが直後に俺に聞いてくる。

 「あ、いえ」と焦って首を振るが、


「なんだぁ? ここに来て隠し事かぁ? ションベンでも漏らしたか? それともクソか?」


 と、食事中にも構わず思った事を言い、カレルに「ちょっと……」と怒られて、デオスに「やれやれ……」と両目を瞑られた。


「ははぁ~ん? さては両方か?」


 それに構わずダナヒは続け、確信的な表情で聞いてくる。

 「違いますよ!」と流石に返すと、ダナヒはまずは少し驚いた。


「じゃあ何だよ。気になるじゃねーか」

「いえ……その、食べ物の事でちょっと……って言ってもこっちにあるかどうか分からないモノなんで、口にするのもマズイかなと……」


 理由を言うと、ダナヒは「はぁーん?」と言い、「どんなものなんだ?」と続けて聞いて来た。

 どんなものかと聞かれるのなら、「米」と言うのが一番なのだが、それがこの世界に取って未知のものである可能性がある為に、俺は答えに困窮していた。


「えーと……形で言うならこんなんなんですけど」


 仕方が無しにパンを置き、両手を上げて形を作る。


「オイオイ、朝から何やってんだオメェは……」


 と、顔を顰めたダナヒは謎で、直後にデオスに何かを言われ、「あ、ああ、食いモンか……」と、改めて言ってきた。

 ダナヒの誤解が何だったのか。それは今でも俺には分からない……


「それは主食? それともおかず?」


 聞いて来たのはカレルである。


「主食です。国によっては小麦粉なんでしょうけど、俺が元居た国では、それが殆ど毎日の主食でした」

「色は?」

「あ、白ですね」


 聞かれた事の全てに答えると、「ロップの事かしら?」とカレルは言った。


「ロップ……?」

「そう、ロップ」


 訳が分からずそう言うと、カレルも同じ言葉を続け、「ああ、ロップですか」と、デオスが言ったので、今度はそちらに顔を向けた。


「(米があるのか……)」


 そう思うと、若干気持ちが嬉しくなってくる。

 もう何か月も食べて居ないが、脳裏にはほっかほかのそれが浮かび、腹の底から手が出るような、どうしようもない欲求に駆られた。


「確かにこの辺りでは食べませんが、デーゼル辺りでは主食のようですね。場所としては旧デイラー王国の更に西になるのですが」


 それには素直に「遠いですね……」と言い、欲求が若干萎えたのを感じた。

 行くのが面倒。それもあるが、そんなにここを離れられないからだ。

 言い換えるなら自分の我儘でそこに行けない事が分かってしまったのだ。


「良いんじゃね? 行って来れば?」


 が、ボスであるダナヒはあっさりと言い、「変わったモン食うんだな」と完全に他人事。


「そこは育った文化ですから」


 と言う、デオスに「それもそうか」と言葉を返した。


「やったねヒジリ! 行っても良いって!」

「あ、ああ……ちょっと遠いけどな」


 ユートに言われてそう返す。

 距離的に面倒と思わなくはないが、久々に食べたいと言う気持ちは大きい。


「じゃあ、すみませんが行って来ても良いですか……?」

「おお、行って来い行って来い。土産も忘れるな」


 故に言って、許可を貰い、デーゼルに行く為の準備を終えて、街の港に向かうのである。

 米が食べられる。あちらの世界ではそれは当たり前の事だったが、その当たり前の事に俺の心は思った以上に弾んでいた。



そろそろ世界一下品な祭りですが、前もって言って置くと本当に下品です。

多分火曜日の投稿になると思いますが、心構えをしておいて下さい(汗)

女子供は見てはいけない。それが恐怖のダ・チン祭……

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