表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帝都不可思議カフェ綺譚―婚約破棄は自称妖精王と共に―  作者: 桃月 とと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/24

8.5 看板

 カフェの二階は住居スペースになっている。カフェの開店準備期間中、オリヴィアは作業の合間に二階まで戻って、試作品としてコーヒーや紅茶をいれゴロリとソファでくつろいでいた。アーサーはいつも、フォルテはたまについてきては、人間との会話を楽しんで過ごしていたのだ。


「《アーサーさまの名前は誰がつけたの?》」


 名付けという行動が刺激的だったのか、フォルテはアーサーの目を見て興味津々に尋ねる。


「《あ~~~俺は……オリヴィアが……》」


 少し照れたように呟く妖精王だったが、フォルテは答えがわかればそれでよかったようで、


「《じゃあオリヴィアは?》」

「私? 私はお爺様が名付けてくれたの」

「《ぼくはアーサーさま!!》」


 これが一番言いたかったこどだったのか、小さなブラウニーはニコッと満面の笑みになっていた。もちろんオリヴィアは知ってるよ、なんて無粋な言葉はかけず笑顔を返す。


「《光栄に思えよ》」

「《うん!》」


 大きな返事の後、そのままぴゅーっと階段を降りていき、カフェへと戻って行った。


「いい名前つけたね」

「《オリヴィアもな》」

「あら。気に入ってくれてたんだ」


 ふふっと小さく笑うオリヴィア。同時に実は安堵していた。長年気になってはいたのだ。


(妖精王といえば”オベロン”だけど……どっちかっていうと”騎士王”って感じだったし……)


 アーサーと出会ってしばらく、


『《俺は妖精王だ!》』


 と名乗る彼の言う通りにしばらくは、


『ねぇ、ようせいおう~~~』


 と幼いオリヴィアは話しかけていた。彼との仲が深まるにつれ、本名が気になったので何気なく妖精王の名を尋ねたところ、


『……覚えてない』


 そのタイミングでオリヴィアは彼に記憶がないことを知ったのだ。その時のいつもと違って妙に心もとなげな表情なのを見て、


『じゃあ思い出すまでの名前つけよう! 私が考えてもいーい?』

『……悪くない考えだな。よし。王に相応しい名前にしろよ』

『王に相応しい名前……うーん……王様かぁ~……じゃあ、アーサー王だね!!』


 こんな経緯で彼は【アーサー】になった。オリヴィア本人も、凛々しい顔立ちの彼にピッタリだと内心にんまり。そんな思い出が彼らにはあった。


「《名前といえば……店の名前は決まったのか?》」


 看板を作るのにだって時間がかかるんだぞ、と思い出したようにオリヴィアを急かす。アーサーはカフェのオープンを今か今かと楽しみにしているのだ。


「そうねぇ~」


 少し思わせぶりに間を取った彼女だったが、ニヤリと妖精王の方を見て、


「まあ出来上がってのお楽しみ」

「《え!? いつの間に……!?》」


 実はこの場所に店を構えると決めてから、わりとすぐにカフェの名前を決めていた。


【カフェ レムナント】


 ちょっぴりしんみりしてしまう意味を持つ単語だが、オリヴィアは自分達にしっくりくる名だと、内心自画自賛していた。


 レムナント……残されたもの。遺物。名残。


 オリヴィアには前世の記憶の名残が。アーサーは妖精王という今ではもう過去の遺物。フォルテはこの建物に残されたもの。


「《お前なぁ~~~なんつー単語を当てはめてくれてんだ! 妖精王相手にっ!》」


 要するに縁起が悪いと、大袈裟に呆れたアーサーにオリヴィアは更に得意気な顔をして、


「いやいや。こういう”エモさ”っていいのよ! 大事!」

「《エモ……?》」 

「物語があるってこと!!」


 そういうところに人は魅力を感じて通いたくなるの、と鼻歌を歌いながらオリヴィアはまたカフェの開店準備に戻って行ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ