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帝都不可思議カフェ綺譚―婚約破棄は自称妖精王と共に―  作者: 桃月 とと


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15(閑話) 店休日

 カフェ・レムナントの店休日は週に二日。

 オリヴィアは昼までゴロゴロベッドの上で過ごしたり、別のカフェへと出かけることが多い。


「《ランドルフ家の屋敷の人間が見たらどんな顔するだろうな》」

「いや~自由を謳歌してる実感があるわ~妖精と三人暮らし最高~っ」


 一方で、フォルテだけは毎週やって来るこの二日間が退屈で仕方がないようで、


「《ねぇ……家の部分も掃除しちゃだめ……?》」


 と、聞いてくるほどだ。彼はカフェスペースの手伝いは任されているが、オリヴィアの住居部分は”何もしなくていい”と言われていた。

 ブラウニーという妖精の()()を知っているオリヴィアは多少心が揺れたのだが、


(お店まで手伝ってくれてるのに、いいのかな……)


 と、前世のブラック企業が如く、自分がこの愛らしい妖精をこき使っているように感じ、気がとがめたのだ。 


「《ま~たそんなこと考えてるのか》」


 妖精王にいつもの呆れ顔を向けられるのは想定内。


「《ねぇ……せっかく人間がこの建物に戻って来たんだ……僕も僕らしく生きたいよ。オリヴィアが困るわけじゃないんでしょ?》」


 ここまでフォルテが言うことは想定外だった。彼にとってはそうすることが喜びなのだ。オリヴィアにはその感覚が到底信じられないが……。


「じゃあ……週に一回お願い」

「《やったー!!》」


 その週に一回の掃除で家中を綺麗に仕上げるフォルテを見て、アーサーも、


「《……これまでがよっぽど寂しかったのかもな》」


 空き家時代のフォルテのことを考えながら、生き生きと動き回る小さな妖精を見ていた。


 オリヴィアが購入したこの店舗付き住宅は、一階がカフェスペース、二階が居住スペースとなっている。さらに屋根裏部屋もあるのだが、実はオリヴィアはここをアーサーのための部屋にしたのだ。ベッドにソファ、テーブルと椅子まで用意している。


『《オリヴィアって本当……変なこと考える人間だよな》』


 初めて家具を設置した屋根裏部屋を見たアーサーは、照れたように笑っていた。


『だってここはアーサーの家でもあるからね!』

『《そう言えば俺、二千年間自分の部屋がなかった……》』


 ぷっと吹き出して自分の境遇を笑っている。


『簡素な部屋で申し訳ありません、妖精王様』


 ふざけながら頭を下げ膝を折るオリヴィアを見て、さらにアーサーは笑い声を上げながら、


『《面を上げよ! 我が寛大な心を持って現状にて許してやろう!》』


 ふんぞり返ってそれらしく振舞った。


『《ありがとな》』


 きちんとお礼を言うことも忘れない。オリヴィアは彼のこういった所がとても好きだった。だからずっと()()()()いる。アーサーとなら、どこでも楽しく生きていけると確信していた。


「休日二日目の夜が憂鬱でないなんて信じられないわ」

「《どういうこと……?》」


 まったく意味がわからないといった風のフォルテの言葉に、ふふっとオリヴィアの笑い声が漏れる。


「明日も頑張ろう! って、ただそれだけ思えるってのは幸せだなって話!」


 答えを聞いてもやはりフォルテは理解できないのか、首を傾げたままだった。


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