表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ローデス  作者: 左門正利
8/60

はじめての戦闘

 アリッサについてゆく真悟たち一行は、「はじまりの村」を出て目的地の町へ向かう。

 入手すべき貴重なアイテムが、その町「レトロット」に関係しているのだ。


 先頭を歩くアリッサに、美希が話しかける。


「ねえ、アリッサちゃん」

「なあに?」

「要は、この世界で最後まで冒険を進めて、クリアすれば良いのよね」

「そうよ」

「だったら、このゲームの世界を作った五人の人たちを呼んだ方が、はやいんじゃないの?」


 もっともなことだ。


「それが、ね」


 アリッサは、ちょっと困ったという顔を美希に向ける。


「彼らは、この世界に入りたくても入れないの」


 アリッサが歩きながら話す説明は、妙にややこしい。

 異次元にいるゲームクリエイターたち五人の魂は、別の異次元に好き勝手に入れるわけではないという。


 もっとわかりやすくいえば、こういうことになる。


「例えば、あなたたちは漫画を読んでも、その漫画のなかには入れないでしょ」


 当たり前だが、そのとおりだ。三次元に住む人間は、二次元である漫画のなかには入れない。

 同じように、五人のゲームクリエイターたちも、いま彼らがいる次元から別の次元へ移行するのは、不可能なのだ。


「そういうことよ。わかった?」


 一応、納得した真悟だが、不意に疑問が浮かびあがる。


 いま、アリッサが話したことは、異次元における法則なのかもしれない。しかし、それは自分たちにも当てはまるのではないか?

 真悟はその疑問をアリッサに投げた。


「アリッサ、それならぼくたちは、どうやってこの世界にきたの?」


 アリッサは、感心した目で真悟を見つめる。


 ──なかなか鋭いわね


 そう思い、ふたたびくわしい説明にはいるのだった。


「五人のクリエイターたちは、この世界とあなたたちの世界をつなぐパイプを作ったの」

「パイプ?」

「そう。厳密にいうと異次元トンネル、異次元から異次元につながる『出入口』といえばいいかな」


 まず、真悟たちの世界に『入口』を作り、クリエイターたちの作った亜空間に誘いこむ。

 次に、『出口』をいま真悟たちがいるゲームの世界に作り、誘い出した真悟たちを送って行ったのだ。


「彼らは、あなたたちに触れることはできないし、他の次元に移動することもできないの」

「………」

「あなたたちは五人の誰かに会っているはずだけど、覚えてないわよね?」

「うん」


 それも異次元における法則のようだ。


「彼らは、自分が遊びたくてゲームを作ったんじゃないのよ。彼らが望むのは……」


 アリッサの声に、哀しみが帯びる。


「自分たちが作ったゲームを多くの人たちに遊んでもらって、楽しんでもらって、最後までクリアしてもらうことなのよ」


 生前、果たすことがかなわず、いまでもかなえられない彼らのやるせない想いが、アリッサの瞳にやどる。


「物語の主人公は、あくまでもあなたたちよ」


 アリッサは、きっぱりといいきった。



 アリッサたちは、森のなかに足をふみ入れる。先頭を歩くアリッサが、後ろにいるみんなの方をふり向いた。


「そろそろ、モンスターがあらわれると思うので、気をつけてね」


 真悟は、ふと思い出したようにアリッサに話しかける。


「モンスターとの戦闘になると、アリッサはどうやって戦うの?」

「あ、言い忘れたけど、わたしは戦闘には参加しないから」

「え?」

「わたしは単なるシステム案内役だから、戦闘フィールドには入れないの」


 モンスターがあらわれると、まわりの景色が左回りにぐるっと一回転する。その一瞬の間、みんなはモンスターともども、亜空間へ移動する。というか、飛ばされるのだ。


 この亜空間を、アリッサは戦闘フィールドと呼んでいる。いわば、戦闘専用の闘技場へワープするようなものだ。

 多くの場合、まわりの景色は移動するまえと変化がなく、闘技場という感じがしない。


 そして、アリッサは戦闘フィールドには入れない。だが、アリッサはフィールドの外から、みんなの戦う様子をうかがうことができるのだ。


 とりあえず、アリッサは戦闘フィールドでの戦い方を、みんなに教える。上手くできるかどうか、最初はやはり気にかかる。


「一応みんなに話したけど、モンスターが……!」


 アリッサが話している途中で、一匹のモンスターがみんなの前にあらわれた。

 アリッサはみんなの後ろにさがり、武がズイッと足をふみ出す。


「ようし、一丁やるか!」


 まわりの景色が、瞬時に左回りにヒュンッと一回転して、もとの景色にもどる。

 真悟は後ろをふり向いて、アリッサに声をかけようとする。


「アリッサ……あれ?」


 アリッサの姿は、すでにここにはない。モンスターと戦うにあたって確認したいことがあったのだが、間に合わなかったようだ。


 真悟は仕方ないと思いながら、アリッサがいっていたとおりに無言で「データ」と念じてみる。すると、自分をふくめた仲間の体力などのデータが、頭の中に表示される。


 ──ええと、HPは体力で、SPはスキルポイントっていってたな


 体力をあらわすHPは、敵の攻撃を受けると減ってゆく。これがゼロになるとゲームオーバーとなる。


 SPであらわされるスキルポイントとは、各自のスキルを発動するために必要なものである。

 スキルとは、たとえば真悟なら攻撃力の高い魔法であり、武なら威力絶大な必殺技となる。


 威力の大きいスキルほど、使用するSPも多くなる。HPもSPも、彼らの頭の中では数字とグラフであらわされるので、わかりやすい。


 味方のデータだけでなく、敵のデータも表示されるのは、ふだん真悟が遊んでいるゲームと同じだ。

 いま、みんなが真悟と同じことをやっている。


 武がモンスターに向かって、ふみ込んで行った。


「俺から行くぜ!」


 無言で「スキル」と念じれば、いまの自分が使えるスキルが、イメージとともに頭に浮かんでくる。


 武は、毛深い猿のようなモンスターに「直進突き」というスキル攻撃を発動させる。

 武の右中段突きが、ドガッとモンスターにヒットし、敵の体力は大きく減ってゆく。


 みんなの頭の中で、そのデータが示される。

 真悟が、思わず感嘆の声をあげた。


「すごいっ、敵の体力がほとんどのこってない!」


 だが、武の顔は不満げだ。モンスターを一撃で倒すことができなかったからだろう。


 美希が右腕をグルグルと回しながら、モンスターに近づいて行く。


「次は、わたしがやるわ」


 それを聞いた真悟は、あわてたように美希に近よって行った。


「いや、踊り子は体力も防御も低いから、むやみに攻撃……」

「でやあああああっ」


 美希は、真悟にはおかまいなしに、モンスターに向かって突進して行く。


「えいっ」


 コンッ


 美希の一撃が、瀕死の重症を負ったモンスターにトドメをさした。モンスターはシューッと音を立てて消えさるのだった。


 そこには、置き忘れたかのように宝箱がのこされていた。宝箱には鍵はなく、開けると中には「きずぐすり」のラベルを貼ったドリンクが入っていた。

 まわりの景色がギュンッと一回転して、真悟たちは戦闘前の場所にもどる。


 美希は両手を腰にあてて、自慢気に微笑んだ。


「えへっ、どんなもんよ」


 そういう彼女を見た真悟は、声に出さずに思うのだった。


 ──この先輩は、人の話を聞かない人なのね……



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ