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ローデス  作者: 左門正利
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最終決戦

 真悟は、武と桃子に大きな声で伝える。


「先輩、最初に緑色の蛇を、集中攻撃してくださいっ」


 武と桃子は了解し、美希が二人にかわるがわるエンチャントスキルをかける。


 この緑色の蛇に対しては、絶大というほどではないがダメージを与えられる。集中攻撃することにより、ゾルダーナの回復スキルが追いつかなくなる。


 もちろん、真悟も攻撃に参加する。


 そして──


「グギャアアアッ」


 緑色の蛇を倒した。ゾルダーナは口もとをギリッと歪ませる。


 真悟が、さらなる指示を送る。


「次は、真ん中の黄色い蛇ですっ」


 これまで、まったく攻撃が通じなかった黄色い蛇だったが、今度はこちらの攻撃がことごとく決まる。

 武、桃子、真悟による集中攻撃で、黄色い蛇も倒された。


 ゾルダーナが憤慨する。


「おのれえええ、貴様らあああ!」


 ゾルダーナは口から火炎を発射し、赤茶色の蛇が電撃を放った。だが、マリナのバリアが、その攻撃を余裕ではね返す。


 桃子が真悟に目を向ける。


「真悟、敵の攻撃力が落ちているように思うのは、気のせいか?」

「いえ」


 真悟は簡潔に説明する。


「さっき倒した黄色い蛇が、エンチャントスキルをかけていたんです」


 武たちが戦うのを見ているときに、確信したのだ。敵が攻撃するまえに、必ず黄色い蛇の目が、一瞬だけ光っていた。

 そのときに、攻撃力がアップするエンチャントスキルを発動していたのである。


「もう、それほど強い攻撃は、してこないと思います」


 桃子がうなずくと、武が真悟に確認をもとめる。


「真悟、次は、のこりの蛇を攻めればいいんだよな?」

「そうです」

「よっしゃ!」


 赤茶色の蛇にも、みんなの攻撃が通用する。武と桃子、そして真悟のスキル攻撃に、美希のエンチャントスキルが加わった攻撃パターンが、赤茶色の蛇を粉砕する。


 完全に真悟たちのペースだ。あとはゾルダーナ本体を倒すのみである。

 だが、これまでゾルダーナには、まったくダメージを与えることができていない。


 桃子が顔をひきしめる。


「真悟」

「はい」

「こいつに、わたしたちの攻撃は効くのか?」

「大丈夫です」


 真悟は自信をもっていった。


「緑色の蛇が、バリアを張っていたんです。蛇がいないいま、あいつにはダメージを与えられるはずですよ」

「わかった」


 武たちが攻撃するとき、緑色の蛇の目が光り、攻撃を受けるまえに強固なバリアを発動していたのだ。ゆえに、最初に倒さなければならないのは、この蛇だったのである。

 その蛇がいなくなれば、もうバリアを張ることはできなくなる。


 だが、安心はできない。美希は一抹の不安を抱えている。

 スキルバーのストックが、もうないのだ。つまり、SPを使いはたしたときに補充することは不可能であり、攻撃力の高いスキル攻撃が発動できなくなる。


 ここでゾルダーナに確実にトドメをさせなければ、逆に窮地に追い込まれることになりかねない。


 かなりSPを消費してきた美希は、あと一回しかエンチャントスキルが使えない。

 また、武も桃子もSPに余裕がなく、スキル攻撃ができるのは二人とも一回だけだ。


 ただ、真悟だけはSPが半分ちょっとと余裕がある。なにか秘策がありそうだ。

 美希が、それを真悟から聞き出そうとする。


「真悟」

「はい」

「あなた、とっておきの必殺技はあるの?」

「あります。究極のやつが」

「その技で、トドメをさせる?」

「断言はできませんが、たぶんできるんじゃないかと思います」


 美希のなかで、最後のエンチャントスキルは真悟にかけることが決まった。


 戦いが山場を迎える。まず、武が最大奥義を炸裂させる。


「行くぜっ。竜牙りゅうが三段突き!」


 一気にゾルダーナに接近すると、右、左、右と目にも止まらぬ速さで正拳を連発する。

 シンプルな技だが、破壊力はどんなスキル攻撃よりも大きい。


 すかさず、桃子も最大奥義を食らわせる。


炎烈虎砕爪えんれつこさいそう!」


 彼女が手にする槍が、炎をともなう。その刃で左右の袈裟斬りから槍をよこ一線に払い、そして上から叩きおろすと、最後は強烈な突きで決める。


 二人の最大奥義により、ゾルダーナの体力は、一気に半分以下になった。


「ぐっ……おおおおっ……」


 苦しみにあえぐゾルダーナ。だが、ゾルダーナは、やられっぱなしで終わる敵ではなかった。


「おのれっ。我が本気の実力を見せてやる!」


 ゾルダーナは両腕をバッと左右にひろげ、胸をはる。ズオッと、威圧感が真悟たちに押しよせてくる。


 ゾルダーナは、瞬時にみんなの方へ突進する。

 マリナが素早くバリアを発動した。


「ベルベット・シールド」


 マリナが備える最強防御スキルだ。


 しかし、ゾルダーナの攻撃も凄絶である。ゾルダーナが、長い両腕を豪快にふりまわす。鋭い爪が、バキーンとバリアを破壊する。

 さらに、口から火炎放射を浴びせる。黒煙が立ちのぼり、ゾルダーナはそこから一旦下がって距離をおいた。


 そして両腕をふりかぶり、身体を弓のようにしならせる。その手には、エネルギーの塊が形成されてゆく。

 ゾルダーナは、黒煙めがけてエネルギー弾をぶん投げた。ドガガーンと派手な爆発音がひびき、衝撃波がまわりにひろがる。


「フフフ。ローデス最強は、やはりこの……!」


 ゾルダーナは驚愕する。跡形もなく木っ端微塵に吹き飛ばしたと思った真悟たちが、煙のなかに立っているのだ。

 しかも、彼らは無傷だ。


 マリナのベルベット・シールドは、多段バリアである。

 ゾルダーナの最初の攻撃をプレ・シールドが防ぎ、それは破壊されるが二段目のアルマンド・シールドが、みんなを火炎放射から守る。

 これも破壊されるのであるが、三段目のサラバンド・シールドが最後のエネルギー弾に耐えて、みんなを守りぬいた。


 武がマリナに向かって、感嘆の声をあげる。


「すごいよ、マリナちゃん!」


 マリナは、はにかむように微笑んだ。


 そして、真悟が最後の攻撃に入る。


「今度は、ぼくの番だ」


 真悟の身体が、青いオーラに包まれる。左足を前に出し、両手でもった杖を敵に突きさすように向ける。

 杖全体が光を発し、瞬く間にライフルのような形に変わる。真悟の全魔力をエネルギー弾として発射する、魔功ライフルだ。

 真悟は狙撃態勢にはいると、ゾルダーナに狙いを定める。真悟の魔力が、ライフルにどんどん充填されてゆく。


 そして美希は、エンチャントスキルを発動する。

 美希の髪が黒くなり、肌も日焼けしたように浅黒くなる。胸はココナッツブラをまとい、腰にはパレオというミニスカートほどの丈の布を巻いている姿になった。

 足は裸足である。


 タンッと、打楽器の音がひびく。美希が、それに合わせて一瞬だけ左に腰をふる。もう一度タンッと音がして、美希は右に腰をふった。

 同じパターンが繰り返されたあと、打楽器の音がリズミカルになる。美希の腰が、左右に振動するように素早く激しい動きをする。


 タヒチ島に伝わる踊り、タヒチアンダンスだ。

 言語による意思の疎通が、まだ確立していなかった時代から存在したダンスといわれ、「自然」を表現する手の動きはシンプルだ。

 足の動きは複雑ではないが、そのステップは独特のものがある。


 エロチックなようではあるが、いやらしい感じはなく、とてもエキゾチックなダンスである。


 このダンスにおけるスキルは、攻撃力が二倍半になり、さらに100%のクリティカルまで付与される。

 美希が有するエンチャントスキルでは、最強のものだ。


 ダンスを踊り終えたとき、そのスキルが真悟にかけられる。

 真悟をまとう青いオーラが、燃え上がるように大きくなる。


「これで終わりだっ。エンダー・ストライク!」


 魔攻ライフルから、強烈なエネルギー弾が発射される。美季のスキルにより威力が倍以上になり、クリティカルまで付与された極大エネルギー弾が、ゾルダーナを直撃する。


 大きな爆発音がとどろき、こちらに向かってくる衝撃波をマリナがバリアで弾き返した。


 息もたえだえのゾルダーナは、身体がボロボロと崩れてゆく。その命が終わるのも、もはや時間の問題だ。


「我こそ……が……ローデス……最強……」


 武が胸のまえで腕を組む。


「ローデス最強なんかに、興味はねえけどよ」


 精悍な顔つきで、勝者の声をひびかせる。


「おまえがローデス最強ではないことは、確かなようだな」


 桃子が、終焉しゅうえん間近なゾルダーナに槍を向ける。


「おまえは、二度と復活するな!」


 そういう言葉をゾルダーナに放つと、崩れゆく身体に槍を突きさした。

 ゾルダーナの全身にヒビが入り、粉々に砕けると、細かい瓦礫の塊と化す。それは分子レベルで分解され、跡形もなく消えてゆくのだった。


 最後の戦いは終わった。真悟たちは、戦闘フィールドを脱する。


 だが、戦闘フィールドからもどった場所は、バンデーバの平原ではなかった。



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