別れ~そして出会い
みんなは、戦闘フィールドからもとの場所にもどったと思ったところが、全然ちがうことに驚いた。
そこは暗闇がひろがるなか、みんなの姿だけはしっかりと認識できるという、いつもの亜空間だ。
美希が、腑に落ちない顔をする。
「どういうこと?」
真悟たちがとまどっていると、背後から男の声が伝わってくる。
「みんな、よくやってくれた」
新たな敵かと思い、焦ったようにふり向く真悟たち。
みんなの目に、ローブをまとった五人の人物が映った。彼らはみんな頭からフードをかぶり、口もとに穏やかな笑みを浮かべている。
真悟たちの記憶が、わずかによみがえる。
──どこかで、会ったことが……
そう思っていると、謎の五人の後ろから、アリッサがトコトコと前に出てきて姿を見せる。
幼いころのアリッサだ。
みんなは、口々に大きな声で、アリッサの名を呼ぶのだった。
「アリッサ!」
「アリッサちゃんっ」
アリッサは、自分の後ろにいる五人について、真悟たちに説明する。
「彼らが、ゲームを作ったクリエイターたちよ」
そのうちの一人、赤いローブを着た男が口をひらいた。
「君たちのおかげで、わたしたちは救われた」
緑のローブをまとう男が、彼に続く。
「我々は、もう迷うことなく本来の行くべき……いや、帰るべき魂の世界へ帰れるんだ」
青いローブの男が、真悟に話しかけた。
「真悟くん。君を見つけることができて、本当に良かった」
冒険を最後までクリアするには、やはり真悟がカギだった。
自分のことよりも仲間のために全力を尽くす性格ゆえに、みんなから信頼され、そして冒険者としての彼らは完成されたパーティーとなり、目的を果たすことができたのだ。
もし真悟がいなければ、クリエイターたちの魂は今後も何十年、何百年と、さ迷い続けることになっていたかもしれない。
そういう彼らの魂を救った真悟だが、自分がどれほどの偉業を成し遂げたのか、全然わかっていない。
アリッサが、みんなに明るい笑顔を見せたあと、ちょっと名ごり惜しそうに告げる。
「それじゃあ、お別れね」
真悟は、アリッサのそばまで近づいた。
「行っちゃうの?」
「うん」
アリッサとともに冒険をした日々が、よみがえる。真悟にとって、アリッサが自分たちといっしょにいるのは当たり前だった。
その時間は、リアルの世界へ帰れば忘れてしまう、かけがえのない大切な時間……。
アリッサは、この冒険になくてはならない存在だった。
もっと、いや、ずっといっしょに、まだまだアリッサと冒険を……。
真悟は片膝を落とし、アリッサをギュッと抱きしめた。
──行かないでくれ!
そう、叫びたかった。マリナと武の目が、涙でうるむ。
しばらくして、真悟の抱擁から解かれたアリッサは、別れのあいさつをする。
「じゃあみんな、元気でね」
アリッサと五人のクリエイターたちが、ゆっくりと上にのぼってゆく。
それを見守る真悟たちに、魂の世界へ帰る彼らは、感謝を込めた最後の言葉を送るのだった。
「本当に、ありがとう。君たちのことは、永遠に忘れない」
刹那、ピカッとまぶしい光が輝き、みんなは目を閉じる。
数秒後に目を開けた真悟は、コンビニの店のなかで、マグカップを右手にもっていた。
──えーと……
一瞬、夢を見ていたような気がする。
妙に頭が、ぼーっとしている。なにを買うためにコンビニにきたのか、思い出せない。マグカップではなかったはずだ。
──ああ、そうだ。ジュースを買いにきたんだ
目的を思い出し、ジュースを買った真悟は店の外に出る。
悲鳴をあげるような暑さに身体がさらされる。外へ出て一分とたたないうちに、ジュースを口にする。
一気に飲んだジュースの空き缶を自転車のカゴに入れると、ふと公園によってみようと思った。
公園のなかに入れば、自転車から降りなければならない。真悟は、そういうルールにしたがう。
奥にある広場に近づいて行くと、四人の男女が集まっているのが見える。
そのなかに、雪本マリナがいた。他の三人は、知らない人ばかりだ。
いつもの真悟なら、たとえマリナを見かけても、知らない人間がいっしょだと近よろうとは思わないのだが、今回はちがった。
真悟は、なぜかそういう自分に抵抗を感じない。
マリナが、自分の方へ向かってくる真悟に気づいた。
「あ、久松くん」
真悟がさらに近づいて行くと、やたら背の高いがっしりした男が、真悟に顔を向けながら、右手を上げる。
「よう」
真悟は、高校生だと思われる角刈りの彼に、ペコリと頭をさげた。なぜか、気さくに声をかけてくれるこの人を、知っているような気がする。
真悟は自転車を押しながらマリナのとなりまでくると、そこで足を止める。
不意に、真悟に声をかけた男のそばにいる、これも高校生であろう眼鏡をかけた女子が口をひらいた。
「わたしたち、はじめて会うのよね?」
マリナのよこにいる、小柄でおかっぱ頭の女子が、その声に応ずる。背は低いが、切れ長の目に意志の強さがあふれる彼女は、中学生とは思えない。
「確かにそうだが、はじめて会った気がしないな」
みんなは、不思議とそう思っている。
真悟は、自分のクラスメートたちより親近感を覚える彼らに、遠慮がちにたずねた。
「あのう、みなさんは?」
背の高い気さくな大男が、右手の親指を己に向けながら自己紹介をはじめる。
「俺は、日野武。辺賀高校の空手部だ」
──終わり──
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
読者の皆様に楽しんでいただけたなら、作者として感無量であります。
次々に新作を書きまくるタイプではありませんが、新たな作品を公開したときは、またよろしくお願いします。




