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ローデス  作者: 左門正利
50/60

タブー

 みんなは、さえない顔で飛行船のある場所にもどる。すると、そこには先客がいた。

 パルモだ。


「お待ちしておりました」


 そういうパルモに、美希が話しかける。


「ちょっと聞きたいことが……」


 しかし、美希の言葉をパルモは遮る。


「状況が、一変しました」


 ザノーアで、なにかあったらしい。ふだんは冷静沈着に見えるパルモが、かなり焦っているような感じがする。


「事態は急を要します。急いでください、お願いします」


 彼女は魔法陣を出現させると、すぐにそのなかへ入った。

 仕方がないので、真悟たちも彼女に続く。


 魔法陣から出たところは、森と平原の境い目だった。その場所は、大規模な戦場と化していた。


 ここは、ザノーアとバンデーバの境界である。賢者の秘宝が盗まれ、結界が破られたのち、ザノーアの魔術士たちは魔術を駆使して結界を張っていた。


 だが、その結界はモンスターを抑えきることができずに次々と破られ、モンスターどもが森の方からザノーアに侵入し、魔術士とモンスターは戦闘状態にあるのだった。


 激しい戦闘が続き、モンスターがザノーアの平原に向けて、ズンズンと押しよせてくる。一刻もはやく、完璧な結界を築かなければならない。


 王女エルレアも参戦している。彼女が敵を倒したところへ、パルモが声をかける。


「王女様!」


 パルモの声にふり向いた王女は、真悟たちを目にすると、彼らにニコッと微笑んだ。


 美希が亜空間ポケットから、賢者の秘宝をとり出す。

 その秘宝は、ひとりでに王女のもとへ移動する。そして、彼女の前でピタッと静止した。


 王女は右手を上に、左手を下にして掌を外側に向ける。両手をゆっくりと円を描くようにまわし、胸のまえで交差させる。

 そして呪文をとなえると、金色の文字のようなものが秘宝をぐるぐると取り巻いた。


 王女が両手をひろげると、賢者の秘宝は白銀に輝く巨大な鳥に変身する。大きく羽をひろげたと思うと、鋭い光が左右よこ一線に走った。

 結界が築かれたのである。一瞬の出来事に、真悟たちは目を丸くする。


 ザノーアに迫ってくるモンスターたちは一斉に遮断され、また魔術士と戦っていたモンスターも次々と倒されていった。


 巨大な白銀の鳥はオブジェの形にもどり、王女の両手に収まっている。

 彼女は、自分のとなりにいる魔術士に告げるのだった。


「この賢者の秘宝を、厳重に保管するように」

「はっ」


 一度盗まれているため、以前とは別の場所に保管されることだろう。


 王女が真悟たちにふり返り、喜びの笑顔を見せる。


「ありがとうございます。あなた方のおかげで、結界をもとどおりに築くことができました」


 因みに、ザノーアとバンデーバとの間に完璧な結界を造っても、モンスターがまったく出現しないわけではない。


 ラディストスとバンデーバの間には結界がなく、またラディストスとザノーアとの間にも結界は存在しない。

 ゆえに、ラディストスに出現したモンスターが、ラディストスを経由してザノーアにあらわれることが、ちょいちょいあるのだ。


 しかし、そういうモンスターについては、ラディストスとの境界を見張るザノーアの魔術士たちが、モンスターの侵入を食い止めている。


 美希が王女に話しかける。


「聞きたいことがあるんだけど」

「なんでしょうか」


 にこやかに微笑む王女を前にしては、面と向かって話しづらい。


 躊躇する美希の代わりに、マリナが王女に問いかける。


「賢者の秘宝を盗んだ者から聞いたのですが」

「はい」

「ザノーアの、国王様のことです」

「!」


 王女の表情が、ひきつったように一変する。そばにいるパルモは、動揺を隠せないほど愕然としている。

 そんな彼女たちに、マリナは話を続ける。


「秘宝を盗んだ者は、国王に家族を殺されたと話していました」

「…………」


 桃子が自分の思うことを述べる。


「その話は、嘘とは思えなかった」


 王女は言葉を失ったまま、なにもいわない。

 武が王女を追い込むように、つめよってくる。


「敵を倒して賢者の秘宝は取り返したが、後味の悪いことといったら、なかったぜ。俺たちは、真実が知りたいんだ」


 マリナが、王女の目をまっすぐ見て訴えた。


「どうか、本当のことを話していただけませんか?」


 王女は目をふせると、しばらく黙ったまま考えこんだ。不意に顔を上げると、彼女は決心したようにいうのだった。


「わかりました。みなさんには、お話ししておくべきでしょう」


 パルモの表情に、焦った色が浮かぶ。


「王女様、国王様のことは……」

「よいのです」


 王女エルレアは、パルモの言葉を遮った。


「彼らには、知る権利があるのです」


 王女のひと言に、パルモはなにもいえなくなる。

 ザノーアにおいては、国王について触れるのはタブーなのだろう。そういうことが真悟たちにも察せられた。


 王女はみんなの前で覚悟を決めると、国王のことを語るのだった。



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