地下室の謎
とりあえず、真悟たちはサナトリウムの所長に会ってあいさつすると、許可を得て各部屋を調べはじめる。
しかし、地下室に通じる扉やスイッチらしきものは、まったくなかった。
職員たちをはじめ、患者からも話を聞いてみたが、地下室のことは初耳のようでみんなが知らないという。
美希が眉をひそめる。
「どうなってるの? 王女に聞いた話とちがうけど」
真悟は、まだ見ていない場所がないか考える。しかし、チェックすべき場所はすべてチェックしている。
ふと、気がついた。
「屋上は、まだ見ていませんね」
みんなは屋上に上がる。だが、給水塔があるほかは、洗濯物を干している以外はなにもない。
真悟の頭に、苦悩が渦巻く。職員や患者から話を聞いても、ヒントになるようなものは、なにも得られない。
わけがわからないまま悩んでいると、マリナが声をかけてくる。
「久松くん」
マリナに呼ばれた真悟は、彼女のそばまで近よっていく。マリナは、職員専用の宿舎を指さしていった。
「久松くん、ひょっとして地下室って、あの建物にあるんじゃない?」
「!」
可能性を見つけた。みんなは急いで屋上から下に降りると、ガードマンと話をする。
「あっちにある職員専用の宿舎にも用があるのですが、入れますか?」
真悟の問いかけに、ガードマンはうなずいた。
「ええ、入れますよ。案内しましょう」
入れるには入れるが、夜勤で寝ている人がいると思うので、できるだけ静かにしてほしいと注意を受けた。
宿舎の前までくると、ガードマンがドアのチャイムを鳴らす。三十代半ばと思える職員の女性が、ドアを開けて顔を見せた。
真悟が彼女に話す。
「突然、すみません。ぼくたちは、ザノーアの王女から依頼を受けて、あるものを探しているのですが」
くわしく話したところで、この女性には意味がわからないだろう。
そう思った真悟は、必要なことだけを単刀直入に訊いてみる。
「この建物に、地下室はありますか?」
一瞬、呆気にとられた顔をした彼女は、目線を斜め上に向けると、思い出したように語るのだった。
「そういえば、ずっとまえに地下室がどうのこうのって話題になったことが……ちょっと待ってて」
職員の女性はみんなの前から姿を消すと、なにやら探しているようで、バタバタと音が聞こえる。
彼女がもどってきたとき、右手には建物の見取図がにぎられていた。
「一階の奥の部屋に、地下室への扉があるみたいよ。でもその部屋は、いまは鍵がかかってて、誰も使ってないのよね」
彼女のもってきた見取図から、地下室の存在を確認することができた。鍵がかかっているという部屋を、彼女に案内してもらう。
「ここよ。鍵がないと、開けられ……あら?」
ドアのノブをひねって手前に引いたところ、開かないはずのドアが開いた。
武の顔が、ひきしまる。
「ここだな」
この宿舎の地下室にちがいないと、みんなは確信する。ただ、地下室を拠点としているであろうザノーアの盗人が、この部屋を出入りしているとは、ちょっと考えられない。
ザノーアの民なら、魔法陣で亜空間トンネルを作ることができる。ゆえに、わざわざ地下室から階段を上がってドアを開けるというような、まどろっこしいことはしないだろう。
おそらく、面白半分に部屋の内側からドアのロックを解除し、部屋の外をのぞいてみたのではないかと思われる。
真悟が職員の女性に伝える。
「ぼくたちの探しているものが、この地下室にあるかもしれないのです。いまから調べたいと思うのですが、その間、誰も入ってこないように立ち入り禁止にしてもらえますか?」
女性が了解すると、真悟たちは部屋の電気をつけて、なかに入った。
カーペットなどは敷いていないため、地下室への扉はすぐに見つかった。武が、埋め込み式になっている取っ手のハンドルをにぎると、扉を上にひっぱって開ける。
下の部屋へ続く階段が見える。地下室の電気はつけっぱなしのようであり、盗人が地下室に住みついていることを証明している。
みんなは、階段を慎重に降りてゆく。
地下室はけっこう広く、十二畳ほどの大きさで、テーブルや椅子、ソファなどがある。
ほかにも、いろいろな物が壁際にまとめて置かれているが、真悟たちの目をひいたのは、テーブルの上に置かれた高さ15センチほどの鳥のオブジェだ。
薄暗い部屋のなかで、虹色の淡い光を放つ鳥のオブジェは、いまにも羽ばたこうした形をしている。
その形状は、王女から聞いた話と合致する。おそらく、これが賢者の秘宝だろう。
真悟たちはテーブルまで近よると、美希がそれを手にとる。
「きれい……」
みんなの目がオブジェに釘付けになっていると、背後からキイイインという音が聞こえてくる。
ふり向くと、魔法陣が出現している。そのなかから、ひとりの男があらわれた。
みんなはビックリしたが、魔法陣から出てきた男も、真悟たちを見て驚いている。緑がかった顔であり魔法陣が使えることからして、ザノーアの民族だということが、ひと目でわかった。
その男が、叫ぶような声をあげた。
「だ、誰だっ!」
武は、男の問いかけには答えずに、右手の人差し指をその男に向ける。
「おまえが、賢者の秘宝を盗んだ野郎だな」
男は、賢者の秘宝を美希が手にしているのを見て、目の色を変える。
「それは、俺のものだっ」
桃子が、いい返す。
「ちがう。ザノーアのものだろ」
「くっ、貴様ら!」
美希は、賢者の秘宝を急いで亜空間ポケットに収容する。
次の瞬間、みんなは戦闘フィールドに移行するのだった。




