サナトリウム
真悟たちは、パルモに導かれてラディストスに帰る。
亜空間トンネルを抜けて降り立った場所は、自分たちの飛行船があるところだった。ゴルドーザの近くである。
パルモから「では、よろしくお願いします」といわれ、彼女がザノーアに帰ると、真悟たちは飛行船にのり込んだ。
目指すは、ポラーネの泉から北にあるサナトリウムだ。
いくつか問題がある。賢者の秘宝を盗んだ者の容姿が、まったくわからない。
患者に化けていたりすると、めんどうなことになりそうだ。
賢者の秘宝は、厳重な管理体制にあったという。簡単に盗み出せるものではないと聞いたが、それをまんまと盗んでいったということは、身体能力もかなり高いと思われる。
戦闘の際は、あまく見ない方が良さそうだ。
また、サナトリウムには、飛行船を着陸させることができない。
飛行船はキノッコ村に着陸させ、そこから徒歩でサナトリウムに向かうことになるだろう。
もうひとつの難題は、サナトリウムは患者の関係者以外は、立ち入り禁止になっていることだ。真悟たちが建物のなかに入ろうとしたところで、すんなりと入れてもらえるとは思えない。
飛行船にのっている間、みんなは頭を悩ませる。必死で考えてみるものの、よい案が浮かばない。
武が、悩みをふっ切るようにいった。
「まあ、行くだけ行ってみようぜ。ダメなら、そのときにまた考えればいい」
飛行船が、キノッコ村に到着する。ここは、パナンじいさんの家がある村だ。
美希がみんなに問いかける。
「おじいさんのところへ、行ってみる?」
ひょっとすると、サナトリウムに入るための情報やアイテムが、入手できるかもしれない。
みんなは、パナンじいさんの家に向かうことにした。
パナンじいさんの家にたどり着いた真悟たちだが、ドアには鍵がかかっている。どこかへ出かけているようだ。こういうときに限って、家主がいない。
仕方がないので、みんなはポラーネの泉があるところへ歩を進める。
そこで体力とスキルポイントを満タンにした彼らは、サナトリウムに向けて歩いて行く。
特に障害物などはなく、目的地にはすんなりと到着することができた。
肝心なのは、ここからだ。サナトリウムは二階建ての建物で、その前方に守衛所があり、そこからガードマンらしき人が出てくる。
「どのようなご用件で?」
彼の質問に対して、美希がストレートに答えた。
「なかに入りたいんだけど」
ガードマンが、マニュアルどおりの対応を見せる。
「患者さんの関係者以外は、立ち入り禁止です。関係者ですか?」
「いえ、ちがうけど」
「もうしわけありませんが、おひきとりください」
やっぱりダメだった。しかし、なかへ入らないことには、王女の頼みを果たすことができない。
マリナが残念そうにつぶやいた。
「ガルダさんがいっしょだったら、良かったのに」
それを聞いたガードマンの目が、大きく見開かれる。
「あなたたちは、ガルダさんを知っているのですか?」
武がうなずいた。
「おう。俺たちは、あの人といっしょに……ええと、あの病気、なんていうんだっけ?」
マリナが教える。
「モズモル症候群です」
武の話の続きを、桃子がひきとる。
「そのモズモル症候群の特効薬となる花を取りに行くために、わたしたちはあの人といっしょにダミューバ島に同行したんだ」
驚きの表情で話を聞いていたガードマンが、震える声でひとり言をこぼした。
「で、伝説の勇者……」
こんなところまで、その噂がひろまっているとは思わなかった。しかし、この噂のおかげで事態は好転することになる。
ガードマンの顔がひきしまる。
「ガルダさんから、あなた方がここへきたときは、なかへ入れてあげてくれといわれています。どうぞ、こちらへ」
ガードマンが真悟たちを案内する。
桃子が、ホッと表情をゆるませる。
「良かったな。こんな感じで話が進むとは思わなかった」
真悟も笑顔になる。
「ガルダさん様々ですね」
みんなが入口に足をふみ入れると、ガードマンが建物の説明にはいった。
サナトリウムは二階建てで、食堂や浴室は一階にあり、トイレは一階と二階で別々にある。
患者には個室があてがわれ、各階で五人ずつ暮らしている。
建物の右端に階段があるのだが、鍵のかかった扉を開けないと使えない。これは、幻覚に陥った患者が階段付近に立ちよると、足をふみ外してケガをする恐れがあるためだ。
職員が扉の鍵を開けるのは、食事と入浴の時間、そして医師が患者を診察するとき、また患者に異変が起きたときである。
ここには常時、医師をはじめ数名の職員が待機して、このサナトリウムを運営しているという。
職員専用の宿舎が、すぐ近くにある。サナトリウムと同じぐらいの大きさの建物だ。
真悟が、ガードマンに質問する。
「地下室は、どこにありますか?」
真悟の言葉に、ガードマンが唖然となる。
「地下室は、ありませんが……」
彼の返答に、みんなは頭の中が真っ白になった。
──地下室は……ない……?
真悟は、アリッサの方をふり向いた。いったい、どういうことなのか彼女に訊こうとしたが、アリッサはなにもいわずに首をよこにふる。
冒険のヒントになることは、教えられないのだ。
この謎は、自分たちだけで、なんとかしなければならない。




