洞窟
船がぶじに、島にたどり着く。探索チームのメンバーは、ガルダと彼女以外の五人の乗組員、そして真悟たちだ。
他の乗組員は、船にのこって待機することになる。
探索チームが陸にあがると、ガルダが声をあげる。
「みんな、魔物が出るから気をつけるんだよ!」
ここで、ガルダと真悟たちが話し合いをする。
真悟たちは、洞窟までの道のりがわからない。洞窟までガルダが先導し、モンスターが出てくれば、真悟たちが戦うようにする。
それで、おたがいに異存はない。
ガルダを先頭に真悟たちが続き、彼らのあとを船員たちがついて行く。
ときおり、あまり強くない敵が出てくるが、真悟たちはさっさとやっつける。
その戦いを、船員たちが羨望の眼で見るのだった。
NPCである船員たちは、その場で真悟たちが戦う様子が見れるのだ。
彼らにとって、モンスターとの戦いは命がけである。
林のなかを抜け、ゴツゴツした岩場を進み、森に入ってしばらくすると、ガルダの足が止まる。
「しずかにっ」
彼女は、岩肌に開いてある穴を指さしていった。
「あれが、洞窟の入口だ」
そこには、二匹のモンスターが見張り番をするように、うろうろしている。
真悟たちは、さっそうとモンスターたちの前に飛び出した。戦闘フィールドに移行すると、みんなは素早く敵を倒す。
ガルダが気をひきしめる。
「危ないのは、ここからなんだ。十分、注意してくれ」
以前、ガルダが洞窟から花を取ってきてから、もう五年が経つ。そのときは、モンスターとの死闘で多くの仲間が傷つき、花を一つだけもって帰るのが、やっとだった。
その後も島に行ってみるものの、モンスターが非常に手強く、なかなか花を手に入れることができずにいるのだった。
洞窟に入ったみんなは、ランタンのような照明器具の明かりを頼りに、慎重に足を進める。
行く手をはばむ敵を真悟たちが片づけ、徐々に先へ進んで行く。
不意に、ガルダがピタリと足を止めて、真悟たちの方をふり向いた。
「あそこにある花が、そうだ」
ガルダが示したところを見ると、上から日の光が照らされ、その下には一面に黄色い花が咲いている。
距離にすると、15メートルから20メートルといったところだろうか。
ガルダは注意を施した。
「焦って行くと魔物が急にあらわれるから、慎重に進んでくれ」
真悟たちは、うなずいた。ゆっくりと足を進め、半分の距離まできたとき、三体のモンスターが出現する。
みんなは戦闘フィールドに移行し、敵との戦いがはじまる。
モンスターは、三角帽子をかぶってマントを身に着けた人間型の三人組で、それぞれ背の高さがちがう。
真ん中にいるのがもっとも背が高く、左にいるのが一番小さい。右にいるのはデブっちょで、体力がありそうだ。
三体とも魔術士らしく、肉弾戦にもちこめば勝てそうな気がする。あまり強そうに見えない敵であり、みんなは今回も苦戦することはないと考えていた。
完全に油断していた。というか、ナメていた。
戦闘開始そうそう、予期せぬことが起こった。
まず、美希が敵を眠らせるため、ベリーダンスでモンスターたちに幻術をかけようとする。
その幻術スキルが、左にいる小柄なモンスターに弾かれた。美希の放った幻術が、味方の方へとはね返ってゆく。
「あっ!」
真悟の顔が青くなる。あろうことか、マリナが美希の幻術で眠ってしまった。
マリナだけでなく、桃子も眠りにおちている。
回復役であるマリナが起きないと、みんなの体力は敵の攻撃を受けるたびに減る一方だ。しかし、眠らされた仲間を目覚めさせるスキルは、マリナしか使えない。
さらに桃子も眠っているので、こちらの戦闘力は大幅にダウンする。
いきなりピンチに立たされた。焦った真悟が、全体魔法のファイヤー・ショットで敵を攻撃する。
あさはかな考えだったと、あとで思った。
「しまった!」
真悟の魔法攻撃も同じように、幻術使いである小柄なモンスターにはね返される。美希と武そして真悟は、それぞれダメージを被った。
美希は回復スキルを使えるが、回復できる体力は微々たるものだ。しかも、それは味方全体に作用するスキルではなく、ひとりにしか使えない。
真悟の額から、冷や汗が流れる。
「くっ、まずい」
自分の魔法攻撃は、はね返されて仲間を攻撃してしまう。真悟はなすすべがなく、防御するしかできなくなった。
美希の幻術スキルもはね返されるので、実質、武ひとりで敵をすべて倒さなければならない。
美希は頭をフル回転させる。
「真悟!」
「はいっ」
「あんたは、回復役にまわって」
真悟は一瞬、唖然となる。
「いや、ぼくは、回復魔法は……」
「きずぐすりと回復ドリンクが、いっぱいあるでしょ!」
すっかり忘れていた。未使用の回復アイテムが山ほどたまっているのを、いま思い出した。
しかし、それらアイテムの回復力は、あまり期待できるものではない。まあ、ないよりは、はるかにマシではある。
武がモンスターを攻撃し、美希は防御に専念して、真悟が仲間の体力を回復させる。
だが、右にいるデブっちょの敵も回復スキルを使うので、思うようにモンスターの体力を減らせない。
戦闘中も、美希は考えをめぐらせる。
──せめて、マリナか桃子のどちらかが目を覚まさないと……
美希は真悟に顔を向ける。
「真悟」
「はいっ」
「マリナと桃子は、ずっと眠ったままでいるの?」
「いえ、もうそろそろ起きると思います」
真悟の言葉どおり、マリナと桃子が目を覚ます。
だがその直後、モンスターの幻術により、二人はふたたび眠りに陥ってしまうのだった。
美希が憤慨して叫ぶ。
「なんでよっ!」
思った以上に大ピンチだ。このパターンが繰り返されると、真悟たちに勝ち目はない。




