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ローデス  作者: 左門正利
34/60

お屋敷

 招かれざる客のせいで、システムに異常が起きている。


 戦っているときに、おかしいと思った。やけにモンスターの防御が硬いと感じてはいたのだが、やはりゲームバランスが崩れるほど、敵のレベルが真悟たちより異様に高かったのだ。

 マリナの毒針がなければ、全滅していただろう。


 ゲットしたお屋敷の鍵は、とりあえず亜空間ポケットに収容する。

 ゴリラのモンスターを倒すことにより、今回のミッションがクリアしたことに変わりはない。その点において、物語としてはなんの問題もなく、みんなは先へ進んでゆく。


 気球の大会主催者から、モンスターを倒してくれたお礼として、真悟たちに小型の飛行船が送られる。

 これで、どこへ行くにも目的地まで最短距離で移動することができるようになった。


 あっちこっちと飛びまわりながらミッションをこなす真悟たち。システムの異常をひき起こす、バグなる敵を警戒し続けているのだが、一向にあらわれる気配がなく、冒険は順調に進んでいった。


 おのおのレベルがかなり上がったと、彼ら自身が思っているときだった。

 リザーレから、はるか東方の森にあるタケノッコという村で、木こりの男から耳にした情報が、真悟たちの顔をピキッとひきつらせる。


「ずっと北に行くと、大きな屋敷があってね。自分は見たことないけど」


 問題のお屋敷が、ここで出てきた。


「あそこに行って帰ってきた人は、一人もいないんだ」


 一週間ほどまえのことである。子供が行方不明になり、十人ほどの大人が探しに出かけたという。


 北の森に大きな屋敷があることがわかり、みんなはそっちに向かった。だが、帰ってくる者はなく、さらに五人の男たちが屋敷をめざして進んで行った。

 しかし、その五人も誰一人として帰ってくる者はいなかった。


「あの屋敷には近づかない方がいいよ」


 そういわれても、行かねばならない。行方不明になった村の人たちを救い出すのが、今回のミッションである。

 ただし、単なるミッションで終わるとは思えなかった。真悟たちは、すでに危険な臭いを感じとっている。


 美希がキリッと顔をひきしめて、みんなにいった。


「行きましょう、お屋敷へ」


 お屋敷の敷地内に飛行船を着陸させることができないため、みんなは徒歩で目的地をめざす。

 たどり着くまで特に変わったことも起きず、お屋敷は案外かんたんに見つかった。


 三階建ての洋館はなかなか大きく、薄気味わるい感じが漂ってくる。

 マリナが亜空間ポケットから鍵をとり出すと、真悟がそれを受けとった。建物の正面にある扉の鍵穴に差しこんで、カチリとまわす。


 真悟がみんなの方をふり返った。緊張した空気が、みんなを包んでいる。

 数秒の沈黙のあと、桃子が口をひらいた。


「わたしが最初に行こう」


 真悟が扉を開けると、桃子がズイッと部屋のなかに入る。 

 次に武、そして美希、マリナ、アリッサと続き、最後に真悟が足をふみ入れる。


 部屋のなかは電気がついていて明るく、ダンスが踊れるほどに、だだっ広いホールとなっている。左右、そして正面の壁にドアがある。


 真悟たちは、まず右の壁のドアを開ける。なかは真っ暗で、ドアの近くにあるスイッチを入れて電気をつける。この部屋を物色していると、宝箱を見つけた。多くの金貨が収められていた。


 その部屋を出て、次は左の壁のドアを開ける。部屋には特にめぼしいものはなく、みんなは、もうひとつのドアに向かう。


 正面の壁にあるドアを開けると、廊下に出た。ホールと同様に、すでに電気がついていて明るい。

 左右にのびる廊下は長く、廊下を隔てた向い側に、六つの部屋がならんでいる。


 右端の部屋から、順に調べることにした。最後の部屋に行きつくまで宝箱が二つあったほかは、なにもない。


 廊下の左端に、二階へ上がる階段がある。用心しながら二階へのぼると、一階と同じように、長い廊下の左側に六つの部屋がある。

 一階とちがうのは、廊下の右側も六つの部屋がある造りとなっていることだ。


 イヤな感じがつきまとう。武をさらった敵が近くにいるような気がするのだが、一階にも二階にもいないようだ。


 廊下の突きあたりに、三階に上がる階段がある。真悟たちは、慎重に階段をのぼってゆく。

 三階は、二階と同じ造りのようだ。各部屋すべてまわって、宝箱三つをゲットする。


 美希が腕を組んで、ぼそっとつぶやいた。


「変ね」


 武がその声に反応する。


「敵がいないからか?」


 美希は武に顔を向けて、自分の思う疑問をとなえた。


「行方不明になった村の人たちが、全然いないじゃない」


 美希の言葉に、みんなはハッとする。敵を警戒するあまり、探し出すべき村の人たちのことを忘れていた。

 だが、彼らがどこにいるのか、真悟には場所はわからずとも見当がつく。


「たぶん、隠し部屋があると思います」


 マリナが真悟の方へ顔を向ける。


「地下室みたいなところが、あるのかしら?」


 なかなか鋭いひと言に、真悟は感心した。


「おそらくね。地下に通じるスイッチのようなものが、どこかにあるにちがいないよ」


 みんなは、一階へ降りてゆく。そして、各部屋をふたたび調べはじめた。

 しかし、真悟のいうようなスイッチは見つからなかった。


 美希が不機嫌な顔をしながら、真悟に文句をいうように話しかける。


「あんたのいうスイッチなんか、どこにもないわよ」


 真悟はしばらく沈思黙考すると、思い出したように声をあげる。


「そうだ、上の階だ! たぶん、そこにある」


 武が眉をよせながら、真悟の方をふり向いた。


「上の階? なんで、上の階にあるんだよ」

「ゲームだから、ややこしくしているんです」


 ゲームを遊ばない人には理解しがたいように思われるかもしれないが、こういうゲームにおいては、よくあるパターンといってよい。


「たぶん、三階のどこかの部屋にあると思います」


 みんなは、ふたたび三階に上がると、すべての部屋を調べてみる。

 左側の六つの部屋には、それらしきものはなかった。廊下を突きあたって、すぐ右側にある部屋を丹念に調べていたとき、不意に美希が真悟を呼んだ。


「真悟、ちょっときて」

「はい」

「これ、なんだと思う?」


 美希が指さしたものを見ると、1メートルほどの棒が壁に立てかけてある。と、そのように見えた。

 しかしよく見ると、棒と壁の間には隙間がある。


 棒の真ん中から下の部分が、カバーのようなもので包まれている。美希がカバーを外そうとしたが外れず、棒も動かすことができないので、真悟を呼んだのだ。


 真悟には、ピンとくるものがあった。


「レバーだ」


 真悟は、そのレバーを手前に引こうとする。だが、動かない。

 レバーの周辺をよく見ると、左側にカバーと同じ色をしたペダルのようなものがある。


「レバーのロックかな?」


 真悟はペダルをギシッとふむと、カチッという音が聞こえた。そしてレバーを最後まで引ききった。すると、部屋の外から、ゴゴゴゴッという振動が伝わってくる。

 おそらく、地下室へ入るための扉が開いたのだろう。


 真悟が感嘆の声をあげる。


「美希先輩、おてがらですよ!」

「まあね」


 二人が喜んでいると、こんどは武が真悟を呼び出す。


「おーい、真悟」


 呼ばれた真悟は武のそばへ行く。ドアの近くにいる武は、テストの難問にぶつかったような顔をして、真悟に確認をもとめた。


「このドア、開かなかったよな?」


 そういえば、この部屋には開かないドアがあったのを思い出した。


「でも、開くんだよ。いまは」


 武がドアのノブをまわし、ガチャッとドアをちょっとだけ開ける。


 ──村人は、こっちの部屋にいるのか?


 真悟がそう思ったとき、アリッサが叫んだ。


「うそ、ありえない!」


 予想外のことが起きたらしい。それも、非常に危険な香りを漂わせる事態が。



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