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ローデス  作者: 左門正利
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帰城

 みんなが亜空間を抜け出た場所は、ラディストスとザノーアをへだてる山嶺の原っぱだった。そこは、ザノーアの使者たちがラディストスとの交流が終わった際に、魔法を使って帰る場所だった。


 驚いたのは、誰もいないと思ったところが、幾人もの兵隊たちが、この場にたむろしていることだ。

 真悟たちの目の前にいる彼らは、武器らしき物を手にして怯えたように構えながら、真悟たちをにらんでいる。


 兵隊の一人が、叫ぶようにいった。


「お、おまえたちは、何者だ!」


 武が真悟たちの前に出て、彼に答える。


「俺たちは、行方不明になったザノーアの使者と、さらにその使者を探しに行って足どりがつかめなくなった捜索隊を探してくれと、王様に頼まれた者だ」


 武の言葉を聞いた兵隊たちが、呆然となる。


「そ、それでは、我々を探しにきたというのか?」 


 美希が彼らに向かって口をひらいた。


「あなたたちは、王様から派遣された捜索隊なの?」


 彼らの隊長らしき男が、うなずいた。


「我々は、ザノーアからの使者を探している途中で……なんといえば良いのか、とても信じてもらえないと思うが……」


 説明にきゅうする隊長のいいたいことが、美希にはわかる。


「異次元の世界へ通じるような場所から、暗闇のなかへ入っていったんじゃないの?」

「そ、そうなんだ!」


 隊長は興奮して話しはじめる。


 彼の話によると、彼ら捜索隊は、ザノーアからの使者を探そうと歩を進めているとき、亜空間に通じる場所を発見した。

 そこから亜空間に入ると、暗闇がひろがる世界が彼らを待っていた。捜索隊のみんなは歩き続けたが、行けども行けども、どこにもたどり着かない。


 この闇から脱出したくても脱出することがかなわず、ひたすら体力を消耗するだけで、どうにもならなくなってしまった。

 どれほどの時間が過ぎたか、わからないまま途方にくれていると、急にまわりが明るくなってきた。驚いている間に、みんなはこの原っぱに佇んでいたという。


「それで、ホッとひと息ついて安心したところへ、あんたたちが急にあらわれたんだ」


 彼らの事情は理解できた。みんな、疲れた顔をしてはいるが、ぶじでなによりだ。

 真悟たちも、説明の要がある。ザノーアからの使者を見つけて安全に保護し、いまは自分たちといっしょにいることを捜索隊に伝えるのだった。


 彼らの顔が、安心したようにほころんだ。


「良かった、とても心配していたんだ」


 無理もない。行方不明になったウーパとルーパの捜索に出かけたものの、少女たちを見つけるどころか自分たちも捕らわれの身となったような状態となり、かなりの時間、なにもできずにいたのだ。


 ザノーアからの使者である少女たちは、真悟たちや捜索隊のみんなに告げる。


「ご迷惑をかけて、すみませんでした。そろそろ、わたしたちは帰ります」 


 二人はそういうと、武の方へ近よってゆく。武はきょとんとした顔になり、しゃがんで少女たちと目線を合わす。


「どうした、お嬢ちゃんたち?」 


 微笑む武に、ウーパとルーパは彼の頬にキスをする。


 美希が、ニタニタしながら武にいった。


「モテるねえ、この色男」

「う、うるせえなっ」


 赤くなった武が美希にいい返すと、ウーパとルーパは魔法陣を出現させる。


「みなさん、本当にありがとうございました」


 ウーパとルーパは礼を述べると魔法陣のなかに入り、ザノーアへ帰って行くのだった。


 美希がホッとした顔で、武に向かって話しかける。


「良かったな、武」

「ぐすっ……」


 別れを惜しむ武の目には涙があふれ、いまにもこぼれ落ちそうだ。

 美希は、やれやれと思いながら武にいった。


「いちいち泣くな、みっともない」

「う、うるせえ、まだ泣いてねえっ」


 これから泣くのか……と、真悟たちは思った。

 美希が武を指さしながら、みんなに話す。


「こいつ、見た目は本当にこんな感じだけど、とっても純情なんだ」


 桃子が笑顔でいった。


「そういう男は、きらいではないぞ」


 マリナも微笑む。


「武さん、優しいんですね」


 真悟が、思い出したように話しはじめる。


「ぼくの学校にも、いますよ。雪本、C組の小森って知ってる? あいつ、顔はごついんだけど、テレビでヒーロー戦隊ダイ・コンダー見てて、リーダーの恋人が死ぬシーンで、すっごく泣きまくって……」 


 みんなから馬鹿にされると思った武だが、涙もろい自分を馬鹿にする者は誰もいない。

 武は、そういう仲間を見て想うのだった。


 ──みんなは、絶対に俺が守る!


 一方、捜索隊は、全員がぶじであることをラントスの城に連絡する。この世界には携帯電話やトランシーバーというものはなく、伝書鳩のような鳥が遠距離における通信手段となっているようだ。

 真悟たちは、捜索隊といっしょに王都ラントスへ向かうのだった。



 王都へ帰城すると、連絡を受けていた王様が顔をほころばせて、真悟たちを出迎えた。


「よくぞ、ザノーアからの使者を見つけ出し、そして捜索隊のみんなを救ってくれた!」


 王様は、真悟たちから事のあらましの一部始終を聞くと、彼らに褒美をとらせた。

 それは、SPが回復するスキルバーのセットだった。全回復のキャビア味、半分回復のカレー味、三分の一だけ回復するバナナ味がそれぞれ五本ずつのセットが、ひとりひとりにわたされる。


 ゲームのシナリオから外れたミッションであるため、なにも期待していなかったのだが、思わぬ収穫が転がりこんできた。


 真悟たちは城をあとにすると、ゲームにそった本来の進むべき道に立ちかえる。


 武が真悟に問いかけた。


「真悟、これからどこへ行けばいいんだ?」 

「気球の大会が開催されるドーフが目的ですが、まず、リザーレへ行きましょう」


 リザーレ経由でなければ、ドーフへはたどり着けないのだ。

 一行は、リザーレをめざして足を進めるのだった。



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