表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ローデス  作者: 左門正利
31/60

再戦

 目的地に到着したようだが、武も敵も、その姿がまったく見えない。


 ふと、真悟は後ろをふり向いた。


「あれは?」


 真悟の目に映ったのは、大の字になって倒れている人物だった。20メートルほど離れているが、あの赤い服は武に間違いないだろう。


「武先輩!」


 真悟が駆けよって行く。そんな真悟に、桃子が叫んだ。


「まて、真悟!」


 だが、遅かった。


「うわっ」


 武が倒れている奥の方から、いきなり敵の触手が襲いかかり、真悟の手足にからみつく。


「くっ」


 いくつもの巻きついた触手が、強い力で真悟をひきずってゆく。

 真悟は両手でもつ杖を、ダンッと地に突きさすように叩きつけ、腰を落として身体をもって行かれまいとふんばる。


「真悟!」


 桃子が真悟のそばに駆けつけると、真悟にからみつく触手を素早く斬りはなした。


「た、助かりました」

「むやみに近づくんじゃない、馬鹿者っ」


 焦るあまり、敵の策にはまるところだった。

 美希がみんなに注意を施す。


「慎重にいくわよ」


 武との距離は、約10メートル。桃子と真悟が前に出て、美希がウーパとルーパを守るようにして、桃子の背後にいる。

 マリナは真悟の後ろだ。さらに彼らの後方に、アリッサが位置する。


 アリッサは、左側にいる桃子と右側にいる真悟の間から、仰向けに倒れている武を見ている。


 桃子が槍を構えながら、武に近づいてゆく。

 あと5メートルまでの距離にきたとき、武の後方から触手が桃子に襲いかかる。桃子はそれを槍でなんとか防いだ。

 桃子を狙う敵の攻撃はしつこく、真悟も桃子をフォローするように応戦する。


 敵の触手が、真悟に向かって迫ってくる。だが、その攻撃は真悟の身体二つ分、右にそれた。


 ──どこを狙って……


 ズドッ


 真悟は、自分の後ろでイヤな音がしたのを耳にする。さらに「う……」という、うめき声が背中に伝わる。

 まさかと思いながら背後をふり返った真悟は、愕然となった。


 真悟の顔から、またたく間に血の気がひいてゆく。

 敵の触手は、真悟のよこをとおりすぎた直後、鋭く曲がってマリナの身体に突きささったのだ。


 彼女の脇腹に穴をあけた触手は、ズリュッとマリナの身体から離れ、ビュンと敵の方へもどってゆく。


「雪本、雪本ーっ!」


 マリナのHPはレッドゾーンに突入し、さらに減少を続けている。

 くずおれるマリナに真悟は叫び、美希が急いで近よってくる。美希は、クレリックが最初に覚える回復魔法のスキルを身につけており、倒れているマリナを回復させようとスキル魔法を発動する。


 かなり危険な状態にあったのだが、HPがすべてなくなるのを、どうにかくい止めた。

 チートアイテムのキャンディでレベルアップしていなければ、なすすべもなく終わっていたであろう。

 

 いまも安心はできない。マリナのHPは依然としてレッドゾーンに突入したままであり、予断をゆるさない状態にある。

 気を失ったマリナは、目を覚ます気配がない。


 美希の回復魔法は、仲間の体力を一気に回復させることができるほど高い効果はなかった。十分に体力を回復させるには、スキル魔法の回数を重ねるしかない。


 そうするたびに、SPがどんどん減ってゆくのだが、気にしてなどいられない美希である。


 妙なことに、敵は追い打ちをかけるどころか、まったく攻撃してこなくなった。

 不審に思う桃子は、むやみに動こうとせず、慎重をきして武との距離5メートルを維持している。


 マリナの方を見ている真悟は、ぼそっとつぶやいた。


「雪本……」


 マリナを必死で救おうとしている美希は、イラッとする。真悟の心配する気持ちはわかるのだが、いま真悟がやるべきことは、敵と戦うことだ。

 いつまでもウジウジと、マリナにピッタリくっついている場合ではないだろう。


 美希は、こういう男が一番きらいなのだ。彼女は目をつりあげて、ふり向きざまに真悟を怒鳴りつけようとする。 


「あんたは……?」


 声に出そうとした言葉が、途中で止まる。美希は絶句したまま、唖然となって真悟を見つめる。

 青白い炎が、真悟の全身をうっすらと包んでいる。魔術士のオーラである。


 マリナの悲劇に、真悟は情けない顔をしていると思った美希は、真悟が全然ちがう顔をしていることに驚いた。

 怒りの炎がたぎっているその目が、美希の背筋を凍らせる。


「ぼくを」


 真悟は、姿をあらわさない敵に向かって、ふり返りながら叫んだ。


「本気で怒らせたな!」



 真悟の身体をまとうオーラが、酸素をとりこんで燃えあがる炎のように大きく立ちのぼる。


 真悟は、もっている杖を身体の前でグルンと一回転させると、しゃがみながらダンッと地に叩きつけた。

 真悟の背中から、いくつもの光の矢がほとばしる。


 よこ一列にならんだ光の矢が、編隊を組む部隊のように、次々に敵をめざして行く。 

 矢の雨が敵に降り注ぎ、ドドドドッという轟音が鳴りひびいた。


 立ち上がった真悟は頭上で杖をグルグルと回転させると、野球のピッチャーがボールを投げるように杖を思いきりふりまわした。すると、巨大な炎の玉が敵を目標に、螺旋を描きながら進んで行く。


 ドガーンと、凄まじい音が耳をつんざく。敵の姿は見えないが、かなりのダメージを与えたことが実感できる。


 真悟の攻撃は、まだ終わらない。真悟は右足を前に出し、斜めにかまえて右手にもっている杖を突き出す。

 杖の先にある水晶の玉が、輝きながらキイイインと唸りをあげる。腰によせている左手は掌を上にしているが、そこには野球のボールほどのエネルギー弾が、ギュルルルッと回転している。


 ドンッと、水晶の玉から光の弾丸が発射される。三発の弾丸が同時に発射され、それは三つ編みのようにからみあいながら敵に向かって直進する。

 さらに、左手の上で回転していたエネルギー弾が、桃子の左側をまわって弧を描きながら敵に迫る。


 光の弾丸が敵に命中する。豪快な音がひびいた後、時間差でエネルギー弾が敵に炸裂する。


 この凄絶な一連の攻撃を、美希も桃子も呆然となりながら見ていた。もはや敵の生きている気配はなく、真悟ひとりで片づけたといって良い。


 全力疾走したかのように息の荒い真悟の方をふり向いた桃子は、ゴクリと唾を飲んだ。


 ──これが、魔法使いの本当の実力か…… 


 その直後、マリナが目を覚ます。美希が、ホッとした笑顔をみんなに見せた。


 桃子は、武の方へ近よって行く。武は、まだ死んだように倒れたままだ。

 みんなが武のそばによってくる。美希が心配した顔で、目を閉じたままの武に叫んだ。


「武!」


 すると


「んがあー」


 武のいびきが聞こえてくる。


「んごおー」


 みんなは呆気にとられて言葉を失う。あの凄まじい戦闘中でも、ぐっすりと寝ていられる神経が理解できない。


 桃子があきれた顔をして、ため息をついた。 


「いい気なものだ」 


 こっちがどれほど心配していたと思っているのかと、むかっ腹をたてる美希は、武の顔を思いきりふみつけた。


「このっ」


 ドガッ


「んぐっ」


 ようやく目を覚ました武が、ゆっくりと上半身を起こそうとする。


「あれ?」


 武は、自分を取り囲むみんなを見上げて、ぼそっと声に出した。


「ここは……」 


 まだ腹をたてている美希が、両手を腰にあてながら武にいい聞かせる。


「あんたが敵に捕まったから、みんなで助けにきたのよっ」


 頭がぼーっとして、まだ事態を飲みこめていない武は、とりあえず立ち上がる。すると、自分を見ている双子の姉妹のような少女たちの存在に気づいた。


 武の記憶が、よみがえってくる。


「おお、ぶじだったんだな、良かった!」


 アリッサがみんなに伝える。


「ここにはもう、用はないわ。はやく出ましょう」


 アリッサは魔法陣を出現させると、みんなは順々に、この亜空間から本来のゲームの世界へ移動するのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ