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ローデス  作者: 左門正利
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王様の憂い

 ラディストスの首都、ラントス。そこは貴族の都でもある。ラントスは、王都と呼ばれることも多い。


 ゆえに、もっとも安全な場所に存在すると思ったところが、逆であった。首都ラントスは、どんな街や村よりも、バンデーバやザノーアの境界に近い場所に位置する。


 ゲームの設定ミスのような感じがしないでもないが、ストーリーを進むにあたっては別に不都合はないと、アリッサはいっていた。


 ラントスは、一般市民は用がない限りは、めったに立ち入ることがない。街の規模を比較すると、リザーレの方が大きくてにぎやかだ。

 そのリザーレから北へ進んだ位置に、ラントスの王都がある。


 世界区域の境界線は、ラントスのさらに北方にあり、そこには険しく連なる山々がそびえている。


 西側の山を越えれば、三つの世界区域のひとつである「ザノーア」と呼ばれる大陸がある。ザノーアは多くの異種民族が住む国であり、ラディストスとは友好な関係が続いている。


 今回、勇者たちが王様に呼ばれたのは、このザノーアが関係している。なにも知らない真悟たちは、城に向かってまっすぐに歩を進めるのだった。



 王都ラントスの街なかは、兵士がときおりパトロールにまわっている。

 すれちがう貴族たちは、育ちの良さそうな雰囲気を漂わせている。子供から大人まで、歩く姿や服装を見ていると、しっかりした躾と教育を受けていることが伝わってくる。

 品格が備わっている、とでもいうのだろうか。


 街の中心には、王族の居住する大きな城がある。真悟たちがそこへ行くのは、王子に短剣をとどけるミッション以来だ。

 異次元における時間の感覚が、真悟たちの住む世界と異なるせいか、実に何年ぶりという感じがする。


 みんなが城までたどり着くと、入口の門の両側に、二人の兵士が槍を片手に立っている。

 真悟たちが、なかへ入ろうとしたときだった。兵士たちはお互いの槍を交差させて、真悟たちの足を止める。


 兵士の後ろから、彼らの隊長と思われる別の兵士があらわれる。彼は真悟や武よりも、ひとまわり身体が大きく、真悟たちを見下ろしてギロッとにらみつけた。


「この城に、何用か」


 それに答えるのは、声のかわいいマリナの役目だ。


「王様がわたしたちを探しているという噂を聞いて、やってまいりました」


 いかつい兵士たちの顔が、驚きの表情に変わる。


 マリナが言葉を続ける。


「わたしたちは、王子様がレグールの町で依頼した短剣を、とどけにきたことがあります」


 隊長を務める兵士は、王様が探している勇者が真悟たちであることを確信する。

 彼は門番の二人に命じた。


「この方たちを、お通ししろ!」

「はっ」


 隊長のひと声で、門の守護が素早く解かれる。

 隊長が真悟たちに頭をさげた。


「先ほどのご無礼、もうしわけない」


 その言葉に、マリナが笑顔で応える。


「いえ。門の警護、ご苦労さまです」


 マリナにそんなふうにいわれると、惚れそうになる。

 隊長は、顔を赤くしながらいった。


「わたしが、王様のところへご案内しましょう」


 みんなは、隊長直々の案内で王様のもとに進んで行く。城内の兵士たちが、真悟たちを見て驚いている。


「き、きたぞ」

「伝説の勇者だ」


 不意に耳にしたその言葉に、みんなは唖然となる。


 ──伝説の勇者?


 真悟たちの様子を察した隊長が、顔を前に向けたまま、説明をはじめた。


「城の者たちは、貴殿らの活躍を知っているのです」


 隊長は、自分の後ろで呆気にとられている真悟たちに、言葉を続ける。


「奪われた短剣を取りもどすために、盗賊どもを殲滅し、ガヌーを倒した話は有名ですぞ」


 ガヌーとは、王子にとどける短剣を取りもどすミッションで戦った、ラスボスの名前である。

 真悟たちの存在は、真悟たちが自分で思っているよりも、はるかに有名らしい。


 王族の居住する城は、かなり大きい。ただ、歩けど歩けどなかなか王室にたどり着かないのは、城が大きいということ以外の理由がある。

 前回に立ちよったときも、王子に会うのにこれほど時間がかかるのかと思うほど、長い時間を費やした。あのときは、案内人が城のなかで迷ったのではないかと思ったものだ。


 これは、侵入者が王様や王子の部屋に、簡単に侵入できないようにしているためである。城の内部構造が、まるで迷路のような感じになっているのだ。


 ともあれ、やっと王室にたどり着いた真悟たちは、王様の歓迎を受けるのだった。


「伝説の勇者よ、よくきてくれた」


 歓迎会を開いてくれる様子はないが、老境にはいった王様のその笑顔は、真悟たちを待ちに待っていたことがうかがえる。


 王様が、白いあご髭をなでながら本題にはいる。


「実は、ラディストスと友好関係にあるザノーアとのあいだで、やっかいなことが起きているのじゃ」


 ひょっとして、戦争でもはじまるのか?

 みんなはそう思ったが、そうではないらしい。ザノーアとの友好関係は変わらないというのだ。


 王様は、家臣の方へ目を向ける。


「まず、ザノーアの説明からはじめるとしよう。カラム、頼む」

「はっ」


 カラムと呼ばれた家臣が、王様に代わってザノーアについて説明する。


 ザノーアはラディストスと同じく、世界区域のひとつである。

 ザノーアの大陸に居住するのは、魔法を使う種族だ。ふつうの人と同じような姿をした民族もいれば、かわいらしい動物を思わせる一族もいる。


 ザノーアとラディストスは、ずっと以前から友好関係にあり、ときおりザノーアからラディストスに使者が派遣される。

 使者が王様との謁見えっけんを済ませると、友好の証として双方の品々を交換する。一種の儀式ともいえるが、それが終われば、使者はザノーアに帰るのだ。


 カラムがここまで説明すると、王様が口をひらいた。


「儀式はぶじに終わったんじゃが、問題はそのあとじゃ」


 王様が困惑した想いを顔にあらわしながら話すと、続きをカラムがひきとった。


「ザノーアからの使者が、帰る途中で行方不明になったのです」


 そういう一報がザノーアからとどいたとき、王様は捜索隊を派遣する。

 ところが、さらに予想外のことが起きた。


「わがラディストスの捜索隊も全員が行方知れずとなり、いまだに連絡がとれない状態なのです」


 一週間ほどまえの出来事だ。王様の沈痛な想いが、眉間のシワにあらわれる。


「頼りになるのは、息子の短剣を取り返したそなたたちしかおらぬと考えたのじゃ」


 王様が真悟たちに、直々に頼みごとを伝える。


「どうか、行方不明になったザノーアの使者、そしてわが捜索隊を探しだしてくれぬか」


 真悟はアリッサにたずねた。


「これはミッションなの?」

「いいえ、ちがうわ」


 公式ミッションに、こういうシナリオはない。

 隠しミッションということも考えられなくはないが、アリッサは、はっきり「バグ」といっている。


 みんなは考える。王様の頼みをひきうけてザノーアの使者たちを探しに行くと、自分たちも行方不明になるかもしれない。

 しかし、もし行方不明の彼らを見つけることができれば、バグは解消するのではないか。


 武は真悟に訊いてみる。


「どうする、真悟?」

「ぼくひとりでは、なんとも……」


 確かに、ひとりで決められることではないだろう。

 桃子が、悩んでも仕方がないという顔をして声をあげる。


「行方不明者の捜索に行ってみよう」


 反対する者はいない。ただ、アリッサだけが先行きに不安を感じている。


 結局、真悟たちは王様の要請を正式に受諾じゅだくする。そして、捜索隊が進んで行ったルートについて、地図を見ながら説明を受ける。

 装備に関しては、すでに準備は整っている。すぐにでも出発できる状態だ。


 王様が、みんなに頭をさげる。


「どうか、よろしく頼む」


 武が右手の拳で、自分の胸をドンッと叩いた。


「まかせてくれ。行方不明になったみんなは、俺たちが必ず見つけ出すよ」


 王様に希望の言葉をのこし、真悟たちはさっそうと城を発つのだった。



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