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ローデス  作者: 左門正利
24/60

バグ

 短剣を取りもどした真悟たち一行はリザーレの街に向かい、病院に到着する。

 グスタに短剣を確認させると、彼は大いに喜んだ。


 その後は、短剣をグスタの代わりにラントスの王子にとどけるというミッションが続く。このミッションをクリアした真悟たちは、さらに数々のミッションをこなし、物語の先へ向かってゆくのだった。



 おのおのレベルも上がり、それに見合う装備で身をかためながら、彼らは冒険を進める。


 リザーレの南西にあるマーボという村に立ちよったとき、気球の話を耳にする。

 ゲームにくわしい真悟は、ピンとくる。次なるミッションは、たぶん気球を手に入れることだ。


 マーボの村で聞いた情報によると、マーボの北に位置するドーフと呼ばれる町で、気球の大会が開催されるという。この情報で、目的地が定まった。


 真悟たちは、まずは新しく装備を整えるためにリザーレの街へ出向いた。ここで気球の大会に関する話が聞けないかと思った矢先、ギターを背負った五人組が近づいてきて、真悟たちに声をかける。


 相手の方から話しかけてくるのは、めずらしい。


「ラントスの王様が、勇者たちを探しているみたいだよ」


 まったく予想もしていなかった言葉に、みんなの目が点になる。美希が、ひとり言をいうようにつぶやいた。


「ラントスの王様が、わたしたちになんの用かしら?」


 桃子が、ちょっとだけ眉をひそめる。


「いや、勇者といっても我々だけではないだろう」


 確かに、王様が探している勇者が、真悟たちとは限らない。


 いま、真悟たちの頭にあるのは、これから行こうとするドーフの町にモンスターがあらわれ、戦闘になるかもしれないということだ。それは、いままでのミッションと同じパターンである。


 この状況で、まるで関係のなさそうなラントスの王様が、割り込むようにかかわってくるのは予想外だ。


 ──なにか変だな


 真悟はそう思いながら、アリッサの方にチラッと目を向ける。

 この幼い少女は、子供らしからぬ難しい顔つきをしている。


 アリッサも、なにか違和感があるようだ。


 ──なぜ、ラントスの王様が?


 彼女が把握しているシナリオとちがう。


 アリッサの顔つきに異変を感じた真悟は、彼女に声をかけた。


「アリッサ、もしかして……」


 アリッサが真悟を見上げながらいった。


「予定外のことが起きているわ」


 二人の会話を聞いていたみんなが、アリッサを取り囲む。

 美希が不安な面持ちで、アリッサにたずねた。


「アリッサちゃん、どうするの?」


 アリッサのなかで、すでに答えは出ている。


「ゲームを作ったクリエイターたちのところへ行って、訊いてみるわ」


 アリッサはそういうと、彼らの居場所をテレパシーでとらえようとする。


 ところが──


「ダメ、見つからない」


 いつもなら、異次元に漂うクリエイターたちの居場所は、テレパシーですぐにわかるアリッサだ。彼らの居場所がわかれば、あとは魔法陣から亜空間トンネルを通って彼らのもとに到着することができる。

 誰かが邪魔をしている。招いてもいない何者かが、この世界にまぎれこんでいる。


 アリッサは確信した。彼女は顔を上げると、みんなに伝えるのだった。


「バグよ」


 最初から、なにかおかしいと思っていた。その正体はアリッサのアンテナに引っかかることなく、いまもどこかに潜んでいる。


 相手の正体がわからない状態で、このまま冒険を続けて良いものかどうか。

 アリッサが悩んでいる間に、真悟からバグの説明を聞いた武は、心を決めたようにいった。


「王様のところへ行ってみようぜ」


 アリッサが目を見開いて、武を見る。


「でも……」


 桃子がアリッサの言葉をさえぎる。


「わたしも武に賛成だ」


 なにもしないままで問題が解決するとは思えない。しかしアリッサにすれば、むやみに動くのは危険だ。いまは、なにが起きるかわからない状態なのだ。


 慎重に事を進めたいアリッサだが、みんなは前進することを望んでいる。


 真悟がアリッサを説得する。


「アリッサ、一応、王様の話を聞いてみようよ」


 アリッサは、あまりのり気ではない。だが、真悟たちはちがう。


「それからどうするかは、話を聞いたあとでも決められるだろ?」

「……わかったわ」


 王様から話を聞いたあと、おそらくみんなは危険を省みずに、前に進むことを選ぶだろう。

 もう、アリッサにはわかっている。しかし、冒険をするのはアリッサではなく彼らだ。


 アリッサは観念して、みんなといっしょに首都ラントスへ向かうのだった。



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