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ローデス  作者: 左門正利
19/60

新たな仲間

 本来、アリッサがミッションに加わって、みんなと行動をともにすることはない。

 シナリオに狂いが生じるような異常事態が発生する以外に、アリッサがミッションに割り込んでくることはないのだ。


 今回の場合、そのままにしておくと、システム全体にまで影響しかねない状態にあったのは確かだった。


 北へ進むアリッサたちは、ラディストスとバンデーバの境界に近づいて行く。

 バンデーバは、さまざまなモンスターたちがたむろし、モンスター同士が争いあう危険な世界区域だ。モンスターはときおり、ラディストスやもうひとつの世界区域であるザノーアに出没する。


 一方、ラディストスやザノーアからバンデーバに向かう者は、めったにいない。


 アリッサがみんなに告げる。


「もうすぐよ」


 目的地まで、あとわずかに迫る。アリッサが道案内するので思ったほど時間はかからず、ぶじに目的地にたどり着くことができた。


 そこでは、武よりひとまわり体格の大きいモンスターと、話に聞いていた槍の戦士が戦っていた。

 戦士は真悟たちの方に背中を向けているので、顔が見えない。


 意気ごむ武が声をあげる。


「あいつが俺たちの仲間か。ん、あいつ……?」


 妙に違和感を覚える。それは真悟も同じだった。


「ん……んん?」


 真悟たちに後ろ姿を見せている槍の戦士は、黒い髪を背中までのばしている。鍛えあげて洗練されたような身体は、腰周りの大きさにくらべてウエストがひきしまっていた。


 真悟と武が目をパチパチさせながら、驚いた声を出す。


「ま、まさか」

「女か!」


 別に不思議なことではない。真悟の遊ぶゲームでいえば、主人公のキャラの性別を、男ではなく女とするようなものだ。


 それでも真悟は、自分の目の前でモンスターと戦っているのが女だということが、ちょっと信じられない。


 真悟が、びっくりした顔をアリッサに向ける。


「アリッサ、あの戦士の人って」

「わたし、男だとはいってないわよ」


 確かに、そのとおりだ。思いがけない現実に直面したみんなが、呆然としているなかで、アリッサがそんな彼らを正気にもどすかのように声を出した。


「もう一歩、足をふみ出せば、戦闘フィールドに移行するわよ」


 アリッサの言葉に、ハッと目が覚めた顔をするみんなは、おのおのその足をふみ出して戦闘フィールドに移行する。


 頭の中にデータを呼びだす。モンスターの体力は、三分の一ほど削られている。

 一方、槍の戦士は、すでに体力の三分の二以上を奪われている。


 美希の顔が、ひきつってくる。


「こ、これ、危ないんじゃないの?」


 すかさず、武がモンスターに向かって走りだした。


「加勢するぜ!」


 槍の戦士が相手をしているモンスターは、狼の頭をした熊のようなモンスターだ。

 見るからにパワーがありそうに思える。その一撃を食らうと、美希やマリナは一気に体力をもっていかれそうだ。


 だが、女戦士の槍さばきも、みごとである。モンスターの左肩から袈裟けさ斬りに槍をふるい、返す刃で胴体をぐ。

 その槍を上段に構えたと思えば、槍は弧をえがくようにして敵の足を斬る。


 マリナが目をみはる。


 ──あの動きは?


 どこかで見たことのある動作が、マリナの記憶を呼び起こそうとする。


 女戦士は善戦しているが、モンスターの体力は思うように減らない。モンスターが吠えると同時に、強烈な右フックが戦士に襲いかかる。

 彼女がそれを槍でなんとか防いだ、そのときだった。彼女の背後から、武がモンスターに狙いをさだめて、飛び蹴りを放つ。


「おりゃあっ」


 ドガッと、豪快な蹴りがモンスターの顔面にヒットする。女戦士は驚いた顔をして、自分の右側に着地する武の方をふり向いた。

 武はかまわず、修得したばかりのエルボーアッパー・スピンキックのスキルを発動する。


 スキル攻撃の威力は絶大だ。右肘打ちから左アッパー、さらに右足での後ろ回し蹴りがヒットした瞬間に、モンスターの体力がのこりわずかとなる。


 彼らの背後から、真悟の声がひびいてくる。


「ふせてください!」


 武と戦士の二人は、その声で身体をしゃがませる。直後に、真悟のスキル攻撃ファイヤーボールが、モンスターに炸裂する。


 モンスターは、あっという間に体力がゼロになり、分子レベルで分解すると、宝箱をのこして消滅するのだった。


 槍の戦士より数歩前に出ている武は、彼女の方をふり向いた。


「おまえが、俺たちの仲間か」


 戦士は確かに女だった。盗賊どもを全滅させるほど強いので、胸はペッタンコだと思ったところが、全然ちがった。

 胸のサイズに合わせた鎧が、現実に存在するかどうかはわからないが、そのサイズがピッタリなら巨乳といってよい。


 因みに、美希もマリナも胸は大きく、貧乳キャラはひとりもいない。


 黒い前髪を顔の前でそろえてカットしている彼女は、やはりブサイクではなかった。

 切れ長の黒い目が、意志の強さを感じさせる。細い眉が、その目によく似合っている。


 白い肌が、強さのなかにも美しさをひき立てている。


 真悟たちが二人の方へ近よってくる。しかし、戦士の次のひと言が、真悟たちの足を止めた。


「わたしに仲間は必要ない」


 冷たくひびくその言葉に、マリナは恐さを感じた。戦士は背中を向けて顔が見えないため、よけいに恐い。


 そこへ、アリッサが足を進ませ、真悟だけがいっしょについて行く。

 アリッサが、戦士の後ろから声をかけた。


「相変わらずね」


 アリッサの声に、戦士がふり返る。真悟がはじめて見る彼女は、なかなかの美人だ。


 真悟は思った。


 ──重装備だな


 武にくらべると、彼女の装備は頑丈で重そうだ。胴体をおおう鎧はもちろん、武にはない肩当てが目立つ。

 さらに、両腕には籠手こてをはめている。


 腰から下に目を移せば、丈夫そうな前掛けが膝下までとどき、後ろも同じような感じで彼女の下半身を隠している。材質は布ではなく、なにかの皮だろうか。


 ──足にも防具があるのか?


 彼女の足には、すねをガードすべく脛当てを装着している。

 足先を見れば、武と同じく学校の上履きじみた靴を履いている。


 かなり重量感のある装備だが、彼女自身はまったく重さを感じていない。現実的には戦闘で邪魔になりそうな肩当ても、全然気にしていない。


 女性キャラであるせいか、背の高さは武や真悟よりも低く設定されているようだ。

 まあ、ゲームならではの設定として、そのようにキャラが作られているのだろう。そうだとわかっていても、巨乳の美人戦士を目の当たりにした真悟は、ドキドキする。


 全体的に緑色の装備で身をかためる彼女が、アリッサを見おろす。


「独りでいいと、いったのに」

「そういうわけには、いかないわ。あなた、ほとんど体力を回復しようとしないじゃない」


 この二人は、真悟たちの知らないところで、本当に会っていた。

 戦士はきびすをかえすと、宝箱の方へ歩みよる。


「とにかく、わたしは目的を果たす」


 彼女は宝箱を開けて、中を確認する。取り返すべき短剣が、そこに入っていた。


 彼女はそれを亜空間ポケットに収容する。その直後、みんなは戦闘フィールドから、もとの場所に立ちかえる。


 アリッサが彼女を見上げる。


「リザーレの病院へ行くんでしょ?」

「そうだ」

「それなら、みんなといっしょに……」

「必要ない」


 なぜだかわからないが、彼女は頑なに真悟たちを拒む。

 彼女の態度に美希がムッとし、思わず声に出した。


「なにが気に入らないのかしらないけど、みんなで行けばいいじゃない」


 マリナが、おそるおそる訊いてみる。


「リザーレの病院がどこにあるのか、わかるのですか?」


 戦士はまだ「仲間」だと認証されていないため、彼女には地図のデータが使えない。

 鋭い目をしている戦士は、マリナに答えた。


「病院がどこにあるかは、街の人に聞けばわかる」


 正論ではあるのだが、彼女の態度はしっくりこない。

 とりつく島もないような彼女を、本当に仲間にすることができるのか。真悟の頭に不安がよぎる。


 彼女は、うんざりした様子でいった。


「もう、わたしにかかわらないでくれ」


 戦士はみんなにそう告げると、真悟たちに背を向けて去って行こうとする。


 ──あれ?


 真悟があわてて彼女に声をかける。


「あの」


 聞く耳をもたない彼女は、そのまま前に向かって進んで行く。だが、真悟は話した方が良いと思い、言葉を続けるのだった。


「そっちはリザーレの街とは逆方向なので、どんどん離れていきますよ」


 戦士の足が、ピタッと止まる。そのまま数秒の静寂が、まわりの空気を支配する。

 異様な沈黙を破ったのは、武だった。


「おまえ、方向オンチだろ」


 戦士が顔を赤くして、ふり返った。


「う、うるさいっ」


 武に続いて、真悟がよけいなことをいう。


「まあ、女の人はそういう人が多いみたいだから、あまり気にしなくていいですよ」

「だ、だまれ!」


 彼女の顔が、さらに湯気が出そうなほど真っ赤になる。


「と、とにかくわたしは、独りでいい。仲間など……」


 そのときだった。いきなり、ゴオッと予期せぬ突風が吹きあれる。


 戦士の前掛けが舞い上がり、下着を身につけていないスッポンポンの下半身が、あらわになる。


 武が鼻血を垂らしながら、つぶやいた。


「だから……なんでパンツ、はいてないんだよ……」


 そして、武のそばにいる真悟は、ガクッと両膝を落として左手を地につき、血がドバドバと吹き出る鼻を右手で必死に押さえるのだった。



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