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ローデス  作者: 左門正利
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次なるミッション

 病院を出た真悟たちは、走りながら目的地に向かう。その最中に、アリッサがつぶやくようにいった。


「間に合えばいいんだけど」


 彼女がやけに焦っているのが、真悟に伝わってくる。


「アリッサ、なんでそんなに急ごうとするの?」

「あの人は、ひとりでどんどん先へ進んじゃうからね」


 真悟に、ピンとくるものがあった。


「その槍の戦士って、ぼくたちと同じように人間の世界から連れてきた人なのか?」


 頼りない感じのするわりには、なかなか鋭い真悟である。

 アリッサが困ったような顔をしながら、ひきつるような笑みを浮かべる。


「本当なら、教えないことなんだけど」


 本来、アリッサという案内役のキャラは、ゲームには必要ないキャラクターだ。そのアリッサが存在するゆえに、真悟に事実を悟られてしまったようだ。


「あなたのいうとおり、あなたたちにはもう一人の仲間がいるわ」


 武が興味をしめす。


「へえ、どんなヤツなのかな」

「会えばわかるわ。あなたたちと同じように、潜在能力がバカほど高いわよ」


 たぶん褒めているのだろうが、そういうふうには聞こえなかったりする。


 美希がこれまでの状況を、頭の中で整理する。そうして彼女は、ひとつの結論を導きだした。


 次のミッションが見えたのだ。


「槍の戦士に会って、みんなで短剣を取り返すのが、今度のミッションなのね」


 美希の言葉に、アリッサはバツが悪そうに苦笑する。


「まあ、ミッションに関することは話せないんだけど、今回は仕方ないわね」


 グスタの話を聞けばアリッサがなにも答えなくとも、短剣を取りもどすことが次なるミッションだと、察しはつくだろう。

 ただ、必ずしもアリッサが望んでいる方向に、事が進んでいるわけではなかった。


「さっきもいったように、あの人はひとりでどんどん先へ進んじゃうのよ」


 アリッサの顔が、困惑の色に染まる。真悟には、いったいなにがまずいのか、よくわからない。


「アリッサ、なにか不都合でもあるの?」


 それはアリッサにすれば、極めて重要な問題だった。


「みんなが、あの人に合流できなくなる恐れがあるの」


 わかりやすくいうと、設定されたシナリオとちがってくるのだ。


 美希が「ちょっと待って」と、話に割り込んでくる。


「盗賊の根城って、二十人はいるっていってなかった?」

「あの人なら、そんな人数など関係なく盗賊を叩きつぶすでしょうね」


 武が「マジか」と驚く。


 真悟には疑問に思うことが、ひとつある。問題の戦士が、真悟たちと合流することをアリッサから聞いているならば、どんどん先へ進むことはないのではないか。


「アリッサ、君はその戦士に、ぼくたちと合流することを伝えていないのかい?」

「伝えているんだけど……」


 どうやら、一筋縄ではいかない人物らしい。


「とにかく、急ぎましょう」


 アリッサはみんなを引っぱるように先頭を走る。真悟には、まだ腑に落ちないものが心の中にうずくまっている。


「アリッサ、槍の戦士が短剣を取り返したあとは、どうするの?」

「病院へもどるわ」

「それなら、その途中でぼくたちと出会うんじゃないかと思うけど」

「ミッションの最後に出てくるボスが強いって、あなたならわかるでしょ」


 アリッサが、その顔に「なんでわからないのっ」という想いを浮かべながら、真悟に語る。


「さすがに、あの人だけでは厳しいと思うわ。体力に余裕がなくなっているはずだし」


 その話を聞いた美希が、首をひねる。少しまえに聞いたことと矛盾する。


「アリッサちゃん、その戦士は盗賊の人数に関係なく叩きつぶすっていわなかった?」


 当然、ミッションのボスも叩きつぶすわけだろう。誰が考えても、そう思うのがふつうである。


 アリッサが、もうしわけなさそうに答える。


「そこのところは、ミッションにかかる重要な部分なのでいえないの。ごめんなさい」


 ミッションの方も、一筋縄ではいかないらしい。


 ここで、マリナが口をひらいた。


「アリッサちゃん、わたしたちがその仲間に出会えなかったら、どうなるのかしら」


 シナリオの設定が狂うと、バグが発生する恐れがある。だが、それよりも、はるかに重要なことがあった。

 アリッサの真剣な顔つきが、より深刻な表情になる。


「もし、槍の戦士がミッションのボスに倒されると、あなたたちも終ってしまうわ」


 この世界にきた人間が、一人でも倒されてHPがゼロになれば、みんなの冒険はそこで終止符を打たれるのだ。


 武が、思いきり叫んだ。 


「まずいどころじゃねえじゃねえか!」


 すぐさま、アリッサのよこにならぶ。


「急ぐぞ、アリッサ。近道とか、ねえのかよ」

「まずはレグールへ行かないと。そこで、いろいろと情報を聞きださないとね」

「だあああっ、まどろっこしいなあ!」


 仕方がない。RPGとは、そういうゲームなのだ。

 とにかく、みんなは足早にレグールへ向かい、到着した町で情報収集に奔走ほんそうするのだった。



 真悟たちはレグールの人々から情報を聞きだすと、盗賊の根城があるという森に入り、奥の方へ足をのばす。


 集めた情報を整理すると、盗賊の人数は二十三人。レグールの人たちが、なぜ、ならず者たちの人数を把握しているかは、この際よこに置いておく。


 盗賊たちは、主に刃物の武器をつかうという。真悟のような魔法使いはいない。

 魔法使いはいないが、幻術をつかう者がいるらしい。


 美希は森を進みながら、ひとり言をいうようにつぶやいた。


「どういう幻術を使うのかしら」


 真悟には、だいたい見当がつく。


「たぶん、美希先輩のように敵を眠らせたり、敵を麻痺させて動けなくするものだと思います」


 やっかいな戦いになりそうだ。ともあれ、真悟たちは盗賊の住処へ急ぐ。


 入手した情報で、何度か分かれ道にぶつかると聞いた。そのときは必ず右を選べということで、みんなは右に行く。


 真悟たちが、やっと盗賊の根城にたどり着くと、そこには槍の戦士も盗賊も、誰ひとりとしていなかった。

 みんなが呆然とするなか、アリッサの口から無念の想いがこぼれる。


「遅かったわね」


 しかし、考えてみればおかしい。槍の戦士が倒されたのであれば、真悟たちは自分たちの世界へ帰されているだろう。

 だが、そうではないというのであれば、ここへくるまで誰にも会っていないのは変だ。


 みんなは、短剣を取り返して病院に向かう戦士と会っていなければならないはずなのだ。


 不可解な思いを顔にあらわす真悟は、アリッサの方をふり向いた。


「これはどういうことなんだ、アリッサ?」

「実は、このミッションは……」


 アリッサがミッションのシナリオを話す。


 本当なら、みんながここへ到着するまえに、槍の戦士と会うはずだった。

 みんなが協力して盗賊どもと戦い、さらに盗賊のボスを倒すわけだが、そのボスは盗んだ短剣をもっていない。


 ボスから「短剣はモンスターに奪われた」と聞きだし、みんなはモンスターのところへ向かうはずだった。

 そのモンスターが、このミッションのラスボスなのだ。


 最短ルートでここまできたアリッサだが、それでも真悟たちが間に合わないほど槍の戦士が強すぎたのは、想定外である。


「短剣をもっているモンスターのところへ行きましょう。こっちよ」


 アリッサがみんなを導いて行く。その顔には、彼女の抱く不安があらわれている。



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