攻略メソッド
ここで、マリナから朗報が真悟に送られる。
「久松くん、美希さんが回復したわ」
真悟が戦っているあいだに、マリナが美希を回復させることができたようだ。
美希はゆっくり立ちあがると、機嫌の悪そうな顔で真悟の背中をにらんだ。
「お腹に思いっきり電気が走ったわ。本当に、しびれるように痛かったわよっ」
そういわれても、真悟は美希にどう答えればいいのかわからない。
──ぼくのせいじゃないんだけど……
とにかく、美希が復活したのであれば、彼女にもがんばってほしいところだ。
真悟は骸骨のモンスターを相手にしながら、美希に訊いてみる。
「美希先輩、敵を動けなくする技とか、ないですか?」
「眠らせるやつだったら、あるわよ。三匹いっぺんには無理だけど」
それなら……と、真悟にある考えが浮かんだ。刹那、マリナが叫んだ。
「久松くん!」
マリナの声に真悟がふり向く。吹っ飛ばされたクモのモンスターが、彼女たちに襲いかかろうとしている。
「このっ」
真悟の杖から発射されたファイヤーボールが、またもや威力を発揮する。クモのモンスターは体力を減らしながら、遠くへ飛ばされていった。
「こいつが、いちばん弱いな」
弱い敵から倒すのが、一般的なセオリーだ。真悟は、敵を倒す順番を頭の中で考える。
骸骨のモンスターが真悟のスキをつくように、無数のナイフを頭上にばらまく。そのナイフは空中で静止すると、ギャリンッと刃先を真悟に向けて狙いをさだめる。
骸骨のモンスターは両手を上げて、のけぞるようにふりかぶり、すべてのナイフを真悟に投げつける準備にはいった。
その姿を、猪頭のモンスターと戦っている武の視界が、わずかにとらえる。
「真悟、危ねえ!」
武は身体をひるがえし、骸骨のモンスターに飛び蹴りを食らわせる。
武の飛び蹴りはスキル攻撃ではないのだが、これが会心の一撃となり、ファイヤーボールよりも大きなダメージを与えるのだった。
その間、猪頭のモンスターは、力をこめてふんばるような格好をしている。おそらく、次に行う攻撃の威力を高めるために、エネルギーを充満させているのだろう。
真悟が美希の方へ視線を移す。
「美希先輩、あの猪の敵を眠らせてください」
美希が、イヤそうな顔をする。
「わたし、あいつだけはサマーソルトキックでやっつけたいんだけど」
「眠らせてからの方が、安全ですよ」
「……それもそうね」
真悟の言葉に納得した美希は、両手を上にあげてバレリーナのようにクルクルまわり、敵を眠らせる幻術スキル「リプリー」を猪頭のモンスターに発動する。
しばらくすると
「ぐう……」
猪頭のモンスターは、眠りにおちる。それを見た美希が、ニタッと微笑んだ。
「ふふふ」
美希にとっては、まさにサマーソルトキックをぶちかますチャンスだ。
しかし──
「あっ」
美希が、すっとんきょうな声をあげる。
「SPが、たりない!」
美希のサマーソルトキックは、SPが満タンの状態でなければ発動できないのだ。
──確か、マリナがスキルバーをもっていたわね
スキルバーとは、SPを回復させるアイテムである。棒状のお菓子のようなもので、全部で三つそなえている。
それは、すべてマリナにあずけてあるのだ。
「マリ……」
美希はマリナに声をかけようとするが、真悟の方が先にマリナをつかまえる。
「雪本、頼みがある。まず、武先輩の体力を回復して、それから先輩にスキルバーをわたしてあげて」
武のHPとSPは、猪頭のモンスターとの戦闘でかなり消費している。
いま、三匹のモンスターのなかでも最強と思われる、その猪頭の怪物が眠っている。
この間に、のこりの二匹をさっさと片づけたい真悟である。
武の必殺技スキルで骸骨のモンスターに大ダメージを与えて、できるだけはやく仕止めたい。
そういう真悟の考えを、美希がじゃましようとする。
「ちょっとっ。スキルバーは、わたしが……」
話している途中で、真悟が叫んだ。
「美希先輩、ふせて!」
真悟の焦ったような言葉に、美希は思わず身をかがめる。クモのモンスターが彼女を襲うべく、飛びかかろうとジャンプしていた。
六本あるモンスターの手が、美希の身体に襲いかかる。だが、それよりわずかにはやく、真悟のファイヤーボールが目標の敵をとらえた。
モンスターはドカンッという爆発音とともに、ぶっ飛んで行った。
「危なかったですね、美希先輩」
まさか自分の真後ろに敵がいたとは思わなかった美希は、呆然となる。
そうこうする間に、マリナが武の体力を回復させる。そして武にスキルバーをわたすと、スキルバーにかぶりついた武は、SPが三割ほど回復した。
「よっしゃ、行くぜっ。この骸骨野郎!」
まるで、死にかけた状態から生き返ったように、武の目が輝いている。
武の必殺技、アッパースピンキックというスキル攻撃が発動される。アッパーと後ろ回し蹴りのコンビネーションが、モンスターに多大なダメージを与える。
スキル攻撃をモロにくらった骸骨の敵は、瀕死の状態である。
真悟は頭の中でデータをチェックする。骸骨のモンスターは、もうほとんど体力がのこっていない。
あとは武の通常攻撃で十分だろう。
自分が戦っているクモのモンスターも、あと一回のファイヤーボールで片がつきそうだ。
──のこるは、あの猪か
その猪頭のモンスターが、眠りから目を覚まそうとしている。
戦いは、まだ終わりそうにない。




