最初のミッション
キノッコ村に歩を進める真悟たちは、村に行き着くまえに小屋があるのを発見する。
みんなは、ちょっと立ちよってみようと考え、その小屋に足をふみ入れることにした。
小屋のドアを開けてなかをのぞいた真悟たちは、絶句するほど驚いた。
部屋のなかにいるのはケガ人ばかりだ。十人を超える人数のうち、半分以上が寝ていて起き上がれない状態のようだ。
真悟は、比較的ケガの軽い人に話しかけてみる。
「大丈夫ですか」
「見てのとおりだよ」
「ここの人たちは、ムーレンさんのお孫さんを助けるために?」
「ああ、ムーファンを救い出すためにレトロットからきたんだが、このありさまだ」
レトロットからの有志たちは、全滅である。敵のモンスターは、かなり強そうだ。
武は、ケガ人の一人に問いかける。
「モンスターは何匹いるんだ?」
「三匹だ。他のモンスターはなんとか倒したが、あの三匹だけは自分たちでは歯が立たない」
「救援部隊とか、呼ばないのか?」
「一応、助けを呼びに行っているが、なにも対策を立てていなければ、同じ結果になるだろう」
たぶん、そのとおりだと真悟は思う。聞きたいことは、もうひとつある。
「キノッコ村まで、あとどのくらいありますか」
「もう、村の入り口は見えるはずだ。あんたたちも同じ目的で、パナンさんの家に?」
「そうです」
「村の入り口からちょっと歩けば、モンスターがうろうろしている家が見えるだろう。それが、パナンさんの家だ」
「ありがとうございます」
ケガ人から情報を得た真悟たちは、キノッコ村に向かう。
ほどなく村にたどり着いた真悟たちの目に、三匹のモンスターの姿が飛び込んでくる。
話に聞いたとおり、モンスターたちが家の付近をうろうろしている。そこにある家が、パナンというおじいさんの家だと、真悟たちは瞬時に理解した。
美希と武が言葉をかわす。
「あれね」
「そうらしいな」
みんなは、ゆっくりとモンスターに近づいて行く。
美希が、キョロキョロとアリッサを探そうとする。
「アリッサちゃん、どこにいるの?」
「ここよ」
真悟の後ろにいたアリッサが、美希に姿を見せる。
美希は、いまの情況でアリッサに聞きたいことがあった。
「このままモンスターに近づいて行って、いきなり襲われたりしないかしら」
「あ、それはだいじょうぶ」
アリッサの説明によると、モンスターとの戦いは、必ず戦闘フィールドで行われる。
戦闘フィールドに移行する距離まで近づかない限り、モンスターがいきなり襲ってくることはないのだ。
また、モンスターに関する体力などのデータも、戦闘フィールドでなければ分析できない。
武が心のなかで「データ」と念じてみる。
「確かに、モンスターの情報が出てこないな」
やはり、戦闘フィールドでなければ敵のデータは表示されない。
そのことを確認した真悟たちは、モンスターの方へ足を進ませて戦闘フィールドに移行するエリアに到達する。
まわりの景色が、左回りに瞬時に一回転する。もとの景色にもどったように見えるその場所は、モンスターと戦うために用意された戦闘専用の亜空間だ。
モンスターの一体は、猪の頭をした筋骨隆々の体躯で、見るからにパワーがありそうだ。
他に、ヘアバンドをして黒いパンツをはいた骸骨が一体。そしてもう一体は、地べたを這いずりまわるクモを立たせたような、六手二足の怪物である。
三匹とも、これまで戦ってきたモンスターとちがい、体が大きい。
やる気満々の武が、胸のまえで右手の拳と左手の掌をパシッと合わせる。
「さっさと片づけて……!」
武がそういっているあいだに、猪頭のモンスターが唐突に迫ってくる。かと思うと、あっという間に武の左側にいる美希の前まで接近する。
モンスターの大きな左手が、美希の身体をよこなぐりにバゴッと払う。
「キャッ」
美希の身体が、木の葉のように宙に舞う。武が叫んだ。
「美希っ!」
一瞬の出来事だった。痛恨の一撃が、美希の体力を一気に奪う。
HPゲージで示される体力が大きく減るとともに、ゲージの色が水色から赤色に変わりゆく。
武の怒りが頂点に達する。
「この野郎っ」
直進突きの必殺技が、モンスターの腹に決まる。だが、与えたダメージは、思ったほど大きくはない。
思いもよらない展開に、真悟の顔から冷や汗が流れる。
──まずいな
真悟がマリナに顔を向けると、もっている杖を美希の方へ向けて、マリナに伝える。
「雪本、美希先輩を助けよう。急いで!」
「うん」
真悟とマリナの二人は、美希が倒れているところへ駆けよって行く。だが、クモのようなモンスターもすべての手足を地に降ろし、美希の方へ走りだす。
その動きは素早く、あっという間に真悟のよこにならぼうとする。
「させるかっ」
真悟がモンスターに向けて杖をグッと突きだすと、杖から火の玉が放たれる。ファイヤーボールという実にわかりやすいスキル攻撃がモンスターに炸裂し、ドカンと派手な爆発音をひびかせた。
クモのモンスターを吹っ飛ばし、美希から遠ざけたのはいいが、もう一匹の骸骨のモンスターが真悟たちの背中に迫っている。
その骸骨は急に立ち止まったかと思うと、大きく口をあけて火の玉を吐き出した。
真悟のスキル攻撃と同じ、ファイヤーボールだ。
防御しようとする真悟だが、敵の攻撃は完璧には防ぎきれない。多少なりとも、体力が削られる。
スキル攻撃だと、受けるダメージは通常攻撃よりも大きくなる。
「くっ、やばい」
三匹のモンスターを、武と二人だけで相手にしているようなものだ。かなり厳しい情況にあるのは明らかだ。
骸骨の敵と戦う真悟だが、予想以上に敵は強く、モンスターの体力は思ったほど減少してくれない。
真悟の背中に、冷たい汗が流れる。




