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ラーズグロムVSニースレイ

 では第4章のラスボス戦です。

「不味い、こっちに来る!」


 リオン達に気付いたフルストが急降下を始め、その後を西園寺が追ってくる。

 やがて数メートル離れた上空で停止すると、リオン達を見下ろしつつ辺りを見渡した。


「あら? てっきりラーズグロムもいると思ったんだけれど、宛が外れたかしら?」

「フン、追ってきてみりゃお前もラーズグロムが目的だとはな。だがここにいるのは取り巻きの雑魚だけだな」


 どうやらラーズグロムがいると思い、近付いてきたようだ。

 直後に西園寺も降り立つと、つまらなそうに吐き捨てる。


「うむ、ラーズグロムはここにはおらん。代わりに妾が相手してくれようぞ!」

「っ!」


 わざわざ喧嘩を吹っ掛ける真似をしたアンジェラに、リオンが内心で舌打ちする。

 詠唱中であるため止めることができず、成り行きを見守るしかないのだ。


「あら残念ね。貴女の相手をしてる暇はないし、悪いけど退散するわ」

「ハン、なんだ逃げるのか?」

「ええ、そうよ? だって妙な障壁であの二人を暗殺できないんだもの、ここにいる意味はないわ」


 西園寺の挑発を軽く受け流すとフルストは徐々に上昇を始め……


「後はアンタ達だけで遊んでなさい」


 目的が達成されないと知り、そのままいずこかへ飛び去っていった。


「チッ、逃がしたか……」

「何をガッカリしておる? 妾が相手になると言うとろうが」


 またしても余計な一言により西園寺の顔が歪む。

 アンジェラとしては挑発してるつもりはないのだが、西園寺からしてみれば蟻が象をからかっているようにしか見えないのだ。


「……さっきからうるさいなお前。そこまで言うんなら――」


 西園寺が威圧を放ち、髪を逆立たせた。

 フルストを取り逃がした鬱憤(うっぷん)をアイジェラで晴らすつもりなのだ。


「――望み通りにしてやるよぉぉぉ!」


 矛先を変えた西園寺が殴りかかってくる。

 レシルも弓を構えてはいたが対処できる速度を越えており、気付けばアンジェラの目の前だ!


「死にやが――」

「セイヤ!」


 ドゴォォォォォォ!


「ブホォォォ!?」

「よし――今だ!」


 アンジェラの拳がクリーンヒットするのと、リオンが転移魔法を発動させるのが同時であった。

 その結果、西園寺が胃の内容物を吐き出すすんでで、転移により逃れることができたのである。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 再び時は(さかのぼ)り、フールがリオンに念話を使用した直後だ。

 剣を抜いたラーズグロムが、今まさにニースレイへと斬りかかろうとしていた。


「血の繋がった姉に剣を向けるわけ?」

「ほざけ! 血の繋がりがなんだっていうんだ? そんなもので争いが起こらないなら、こうして対峙はしていない――でやぁぁぁ!」


 動揺を誘おうとしたニースレイの思惑は失敗し、ラーズグロムが斬りかかる。

 武術の心得がないニースレイでは剣を捌くことはできず、そのまま斬り伏せられ……



 キィィィン!


「なっ、コイツらは!?」


 剣がニースレイに触れるかというタイミングで、人間サイズの銅像が剣で弾いた。

 気付けば同じサイズの銅像が5体も出現しており、ニースレイの前にズラリと整列する。

 

「フフ、驚いたかしら? わたくしを護ってくれる(たくま)しいガーディアンよ」

「ガーディアン……だと!?」


 扇子で自身を扇ぎつつ、まるで我が子を自慢するように語る。


「ハイドラーの薬のお陰よ。なんでも野心を糧としてガーディアンを生み出せるんですって。知略を重んじるわたくしにピッタリでしょう?」

「…………」


 ハイドラーの薬と聞いて、チョワイツ王国での出来事を思い出す。

 薬を飲んだ代官のレモードルツは凄まじい力を得ていた。

 となれば、このガーディアン達も同等の強さを有しててもおかしくはない。


「この子達の実力を疑うわけじゃないけれど、一度人間相手にテストしてみたかったのよねぇ……」


 そう言ってニースレイは意味深な笑みを浮かべ、手にした扇子をパチリと閉じる。

 その扇子をラーズグロムへと指すと……


「ガーディアン達、わたくしに刃向かう愚か者を始末なさい」


 命令を受けたガーディアンが一斉に殺到する。


「チィッ!」


 ニースレイの意志と連動してるためか2体が彼女を護り、残りの3体が斬りかかってくる。

 1体目の剣を上手く回避したが既に2体目の剣が迫っており、やむ無く剣で受け止めた。

 そこへ3体目が斬りかかってきたのを見て咄嗟(とっさ)に飛び退く。


(1体1体はレモードルツほどの強さは感じない。けれど連携の精度が高いためか、僕一人では荷が重い……だが!)


 今はフールが処置した支援効果のお陰で物理ダメージはやや軽減できる。

 魔法ダメージなら完全に遮断できるところだが、文句を言ってる場合ではない。


「そこをどけぇぇぇ!」


 意を決して飛び上がると、ニースレイに向けて数発の斬撃を飛ばす。

 すると即座にガーディアンが反応し、前列の3体も飛び上がった。


 バスッ! バスバスッ!


 飛ばした斬撃のすべてはガーディアンが身を呈すことで防がれてしまう。

 しかし、その動きは想定内であり、着地と共に突撃を開始する。

 目標はニースレイ本人だ!


「そこだぁぁぁ!」


 前列のガーディアンを突破し、残る障害は2体。

 それだけなら上手く捌けると考え、敢えて無謀とも言える突撃を決行したのである――が、しかし!


「護りなさい、ガーディアン!」

「な、何だと!?」


 なんと、2体のガーディアンが巨大な盾へと変形したのだ!

 盾となった2体は完全にニースレイの姿を覆い隠し、ラーズグロムの突撃を阻む。

 しかし、それだけでは終わらない。


「クッ、何とか距離を――グァッ!」


 背後から3体が斬りかかり、回避しきれずに腕を斬りつけられる。

 一度距離をとり振り出しへと戻ったが、フールによる処置がなければ腕が切断されていたところだ。


 トントン


「……時間か」


 フールが胸を叩いて合図してきた。

 事前の取り決めで、フールの支援効果が切れそうになったら合図するように決めてたのである。


(支援効果が切れたか。これだとさっきのような突撃は行えない……)


 内心で焦りを見せるラーズグロム。

 それを知ってか知らずか、ニースレイが攻勢に出る。


「どうやら万策尽きたようね。精々華々しく散りなさい」

「!?」


 3体のガーディアンがロングスピアへと変形し始めた。

 どうやら言葉通り派手に串刺しにするつもりらしい。


「クッ……」 


 支援効果がない今、これを受ければ確実に死ぬだろう。

 そう考え悔しさを押し殺すと、身を(ひるがえ)して離脱をはかる。


「逃がさないわよ!」


 逃走を図ったラーズグロムを串刺しにしようとロングスピアが襲う。

 投擲(とうてき)されたのと同等のスピードで背後から迫り、このままでは串刺しに――



 ドストスドスドス!


(……ふぅ、危なかった)


 が、間一髪倒れ込むように部屋から脱出し、向かいの壁に突き刺さる長槍を手で払うと、そのまま火が回りつつある通路を突き進む。

 出口が分からないためひたすら走り回ることしかできないが、あの場に留まるよりは100倍マシだ。


「信者達がいない、今なら召喚してもバレないんじゃないか?」

「分かっている。ライザ達と合流するまでは下級で足止めを行おう」


 頷いたフールがすぐに召喚を始め、ラーズグロムの後ろに10体のゴブリンが出現する。

 そこへロングスピアに変形したままのガーディアンが殺到し、次々とゴブリンを串刺しにしていくが、これは想定内。

 当のゴブリンとしてはたまったものではないが、盾として召喚したのでキッチリと役割を果たしている。


「フール、ニースレイは!?」

「しっかりと追ってきてるぞ。俺が誘導してやるから、お前は逃げることに専念しろ」


 木造の見知らぬ施設を駆け抜ける一人と一匹。

 信者と思われる反応をフールが追跡し、それをラーズグロムに伝えることで施設からの脱出を図ろうというのだ。

 幸いにして建物が崩壊する兆しはなく、生き埋めになるまでは時間が有りそうだ。


「フール、行き止まりだ!」

「何だと!? そんなはずは――」


 急に足を止めたラーズグロムに続き、懐からフールが顔を覗かせる。

 目の前は何もない突き当たりで扉のようなものはなく、仕掛けらしい仕掛けもない。


「いや、確かに信者達はここを通っている。恐らく隠し扉のようなものがどこかに――」


 壁に沿って手探りを繰り返す。

 きっとどこかに仕掛けが隠されていると信じ、くまなく探っていくのだが……


「ラーズグロム、ガーディアンだ! 身構えろ!」

「クッ!」


 離脱するよりも先にガーディアンに追い付かれてしまう。

 他の通路もなく完全に追いつめられた一人と一匹に、剣や槍に変形したガーディアンが迫った。


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