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エンダー・ザ・ブラッド

「ハッ、血の気が多いじゃねぇか。やっぱテメェは俺と同類だ、悲劇の英雄(ヒーロー)なんかじゃねぇのさ!」

「黙れと言ったはずだ!」


 ザンッ!


 近距離で放った斬撃がエンダーロックに迫る。

 が、やはり赤装束が盾となってそれを防ぐと、その後方からエンダーロックが飛び上がってきた。


「ヒャッハァァァ! そんなんじゃ血の一滴すら出ねぇぜ、ラーズグロムさんよぉぉぉ!」


 ガキン!


 正面からという理由もあり、片手で振り抜かれたダガーを難なく剣で受け止める。

 しかし、エンダーロックはニヤリと笑うと……


「俺が血の流し方を教えてやるよぉ――こうやって流すのさぁぁぁ!」

「しまっ――ぐぁっ!」


 もう片方に握られたダガーがラーズグロムの頬を掠める。

 上手く身体を捻ることで致命傷を避けたが、接近戦は危険かもしれないと悟り即座に飛び退く。


「ああ惜しい――惜しいぜラーズグロムゥ! そんなんじゃ全然足りねぇよぉ、もっと血渋きをあげなきゃ満足できねぇぜぇ? ヒャッハッハッハァァァ!」


 不気味な奇声もそうだが奴の長い腕は不規則な動きで、正直言って気味が悪い。

 まるで骨が存在しないかのようだ。


「この異常者め、おとなしく滅しなさい!」

「殺れるもんなら殺ってみなぁ!」


 ブンッ!


「チッ!」


 腕が長いためか攻撃範囲が広く迂闊(うかつ)に近付けない。

 Bランクのライザでも危険を感じるほどであった。


「離れろライザ! スプラッシュファイヤーボール!」

「グッ――ゴフ――グガッ!」


 ならば遠距離ならと、詠唱を終えていたリオンが複数の火球を飛ばす。

 さすがに全ては回避しきれず、何発かのファイヤーボールを被弾させることに成功した。


「そこ!」


 怯んだところで透かさずレシルの矢が殺到!

 が、エンダーロックは不適な笑みを浮かべると……


 ザクッ! ザクザクッ!


「――えっ?」

「おっほぉぉぉ、こいつぁ痛ぇぜ! 自分の血を見るのも久しぶりだぁ――アーッヒャッヒャッヒャッヒャッ!」


 なんと、腕を盾にして矢を凌いだ――いや、痛々しく腕に突き刺さっているところは凌いだとは言いがたいが、それでも受けた矢は大した影響はないと言っているかのようだ。


「どういう事だ、コイツは痛みを感じないのか?」

「それはないでしゅ。このキモい男は痛いといってたので、恐らくは痛みを快楽と捉える精神異常者だと思うでしゅ」


 ラーズグロムの疑問にメッツが答える。

 この回答はほぼ正解であり、この世界には痛みを感じて快楽を覚える者が少なからず存在し、そういう者達は精神異常者と位置付けられているのだが、世間一般には認知されていない。


「フヒヒヒヒ、俺が異常者かどうかなんざ知ったこっちゃねぇ。俺はこの快楽を分かち合いたいんだよぉぉぉ!」


 ガキン、ガキガキン!


「くっ、異常者め、貴様は狂っている!」

「ヒャッハハァ! だったらどうするってんだぁ!?」

「そんなの――決まっている!」


 一時的にエンダーロックと押し合いを行う。

 するとやはり、再び空いた手でダガーを振るってくる。


「バカがぁ、今度こそ切り刻んでやるよぉぉぉ!」

「バカはお前だ! 何度も同じ手を食らうと思うか!」 


 ガキン!


「何ぃぃぃ!?」

「甘いですね、戦っているのは一人だけではないのですよ?」


 もう片方で振るわれたダガーはライザがしっかりと防ぐ。

 これにより一時的とはいえエンダーロックの動きを封じることができた。


「グォォォォォォ、この程度でぇぇぇ!」


 しかしエンダーロックも諦めてはいない。

 強引に力を込めて振り払おうと身を捩る。


「クソッ、何て力だ!」

「リオン、早くしなさい!」

「分かっている、一々命令するな――アースバインド!」


 ギチギチギチ……


「ぬぉっ、足が!」


 盛り上がった土がエンダーロックの足に絡み付き、地面へと固定した。

 これですぐには動けないだろうと考え、二人はすぐに距離をとる。


「今です!」

「てやぁぁぁ!」


 ザンッ! ザクザクザクザクッ!


「グォォォォォォ!?」


 背中からライザの飛ばした爪が食い込み、正面からはラーズグロムの斬撃が斬りつける。

 そして詠唱を終えたリオンがトドメの魔法を見舞う。


「くたばれ――フレイムキャノン!」


 炎の砲弾が身動きのとれないエンダーロックに――



「ウルァァァァァァッ!」


 ブチブチブチ!


「な!? コイツ、自分の足を!」


 リオンが驚くのも無理はない。

 エンダーロックは自分の足をねじ切って飛び上がったのだ!

 そのためフレイムキャノンは掠ることもなく、遠くへ飛んでいく。


「ヒャッハァァァ! 最高だ、最高の苦痛だ! 血が滴る足首がたまんねぇぜぇ! 早くテメェも味わえ、ラーズグロムゥゥゥーーーッハハァーーーッ!」

「くっ!?」


 今度は一転、自由になったエンダーロックが攻勢に出る。

 上空から二つの(やいば)がラーズグロムの首を狙ってきたのだ。


「させない!」


 ドスドス!


「ぐぉぉ!?」


 しかしレシルの早射ちにより放たれた矢が腕に当たり、振り下ろされるダガーの軌道が逸れた。

 その間にラーズグロムは距離をとることに成功する――が!


 ダン!


「逃がすかよぉぉぉ!」

「コイツ、片手で着地を!?」


 足首から先の代わりに左手で地面につくと、バネのように伸縮させラーズグロムに追撃を仕掛ける。

 予想外の行動にライザの加勢も間に合わない!


「今度こそ終わ――」

「させないでしゅ!」


 ガキッ!


「クソガァ、邪魔すんじゃねぇ!」


 ラーズグロムの首へと伸びていたダガーを、間一髪でメッツが逸らす。

 勢い余ったエンダーロックは、バランスを崩して仰向けに傾いた。

 そしてここが好機と見たリオンが狙いを定めた。


「今度こそ終わりだ――フレイムキャノン!」


 着地のタイミングに合わせて炎の砲弾が放たれる。


「クソガァァァァァァ!」


 ズドォン!


「グォェァッ!」


 回避行動がとれないエンダーロックへとフレイムキャノンが直撃!

 そのまま炎の砲弾に連れ去られるように平原の奥へと飛んでいった。


 タッタッタッタッ――


「レシル?」

「あたしがトドメを刺す!」


 ラーズグロムの脇をすり抜け、平原の奥へとレシルが駆ける。

 暗闇の中に大の字で倒れ所々が燃えているエンダーロックを見つけると、上空へと飛び上がり……


「皆の仇――死ね!」


 ドスドスドスドスッ!


「ゴォ! オ、オ……」


 放った全ての矢が心臓へと命中し、さすがのエンダーロックもその後は口を開くことはなかった。


「レシル!」

「ラーグ……兄ちゃん?」


 ラーズグロムを始めとする他の面々が駆け寄ってくる。


「よくやったレシル。これで死んだ皆も安らかに眠れるだろう」

「うん……」


 皆の視線がエンダーロックへと集中する。

 身体を焦がしていた火の粉は殆ど収まり、もう間もなく消えようとしていた。


「……して、どうするレシルよ。この男の首を墓前に晒すか?」

「ううん、それはいい。こんな奴の首を晒したら、里の皆が迷惑する」


 先ほどはついカッとなって墓前に晒すと言い放ったが、それは止めておいた。

 寧ろ一分一秒でもこの場に留まりたいとは思わない。


「それなら首だけ斬り落として放置しておきましょう。こんなゲスでもカラスの餌くらいにはなるでょう」


 念のため首を落としてその場を後にする一行。

 墓を作ってやる義理もないので、火葬をせずに放置した形だ。

 こうして狂気のエンダーロックはここで命の灯火を消す羽目に……




「……ッククク――」


 しかし、死んだはずのエンダーロックが口を開いたではないか!


「クヒヒヒヒヒ、アーーーッヒャッヒャッヒャッヒャッ! 中々快感だったぜぇ、もう少しで先祖と対面しちまうかと思ったがなぁ!?」


 更に失ったはずの下半身が再生し、首を持ち上げ接合した。


「まさか俺のレアスキル――ウィルスハートを使うことになるたぁ思わなかったぜ」


 ウィルスハートとは、身体の中から任意の場所へと心臓を移動させられるスキルである。

 しかも心臓が無事なかぎり、例え頭部を失っても再生するという恐るべきスキルなのだ。

 そのためエンダーロックは多少の部位欠損は問題ないと考えるようになり、まさに強靭で狂人なバケモノと化したのである。


「今回は失敗したが……クックックッ、次はねぇぜラーズグロムさんよぉ! ゲェアッハッハッハァ!」


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