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誘われし貴族 僕は再び返り咲く!  作者: 北のシロクマ
第2章:ベストパートナー
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感動と苦痛の再会

8/11

バニッシュが発動させた雄叫びで、レシル達3人が影響を受けていないことが判明したので修正しました。

ストーリーに影響はありません。

「この前はしてやられたが、今度はそうはいかねぇ。俺様に勝てたら逃げてもいいぜ?」


 ブンブンブン――――――ダン!


 片手で戦斧を豪快に振り回してみせてから足を踏み鳴らす。

 鋭い犬歯を覗かせニヤリと口の端を吊り上げている顔は、再戦を楽しみにしてたかのようにも思える。


「ハッ、俺に勝てたら――なんて台詞は無敗の奴が言うもんだぜ?」

「フッ、そうやってほざいてられるのも今のうちだ――」


 ハットの挑発を軽く受け流したバニッシュは、戦斧を地面に突き刺し大きく息を吸い込み始める。

 それを見たラーズグロムが即座にノアーミーへ働きかけた。


「ノアーミー、奴の口を封じてくれ!」

「っ! 分かったよ!」


 ただ事じゃないと察したノアーミーは即座に詠唱を行う。

 しかし、既に息を吸い込み終わっていたたバニッシュには追い付かず、未然に防ぐのには失敗。

 耳が貫通するかのような雄叫びが、辺りに放たれた!


「グウォォォォォォォォォォォォ!」

「ぬぉ!?」

「……むぐっ!?」


 バニッシュの特殊スキルの影響を受け、ハットとカンマに異常が表れる。

 突然身体が言うことを聞かなくなったのだ。


「奴の雄叫びは、動物や魔物を操る効果を持つんだ! 獣人の二人にも不完全ながら影響を及ぼしてるはずだ!」

「チッ、厄介な……。とりあえずコイツは封じとくよ!」


 詠唱を終えたノアーミーがバニッシュに向けて放つ。


「ミュート!」

「ふぐぅぅぅ!?」


 突然喋ることが出来なくなったバニッシュが激しく動揺し、口に手を突っ込んでもがき出す。

 これで少しは時間が稼げるだろうと、その隙にカズヨが動く。


「二人とも大丈夫!?」

「すまねぇ。何とか動けるが、長丁場はキツイな……」

「……同じく。気を抜くと意識を乗っ取られそうになる感じだ」


 注意深くバニッシュを警戒し二人の容態を確認すると、あまり楽観視はできなそうだ。

 少なくとも次々と現れる構成員の足止めをし、機を見て脱出する以外にないだろう。


「あっぶな~。ジュリア達を洗脳するとかマジでキモいんだけど!」


 そんな彼らの後ろでは、獣人少女3人が耳を塞いで凌いでいた。

 バニッシュの姿を見たラーズグロムが、レシル達3人に耳を塞ぐよう伝えていたためだ。

 そのためノアーミーに知らせるのが遅れてしまったが。 


「ラーグ、ここは引き受けるから先に行って!」

「し、しかし――」

「増援が増えるほど脱出は困難になる。私達のことは大丈夫。逃げようと思えばいつでも離脱できる。だから早く!」


 恐らく逃走手段は残してあるのだろう。

 逆に留まり続けると、彼らの足枷になりかねない――そう考え即座に頷いた。


「分かった、死ぬなよカズヨ?」

「うん! ――あ、一つだけ注意しなきゃならない事があったんだ……」


 ゴソゴソと道具袋から一枚の紙を取り出して、ラーズグロムの手に握らせた。


「クライムの街までの地図。赤で囲ってる所は絶対に近付いちゃダメよ? 強力な魔物がいるらしいから。じゃあ気をつけて」

「うん、カズヨもね」


 地図を受け取ると、カズヨに背を向け走り出す。

 今も尚構成員がわらわらと集まって来ており、時間を食うのは避けなけらばならないのだが……

 


「ヒャッハー! ここは通さねぇぜ!?」

「チッ!」


 新手に正面へ回り込まれ、逃げ道を防がれてしまう。

 が、ここでカンマが未知の武器を取り出すと……


 ズダダダダダダダダッ!


「ゴボォ!?」

「ギィェェェ!」

「ガハァッ!」


 包囲を狭めつつあった構成員に向かって発砲し、なす術なく男達は血塗れになって倒れていく。

 結果あっさりと包囲に穴が開いた。


「……早くいけ」

「ありがとうカンマ!」


 突破口が開けたことで再び彼らは走り出す。

 見たこともない武器を複数所有してることから、カズヨ達が負ける可能性は低いだろう。

 そう考え後ろを振り返ることなく走り続け、いよいよ街の東門が見えてきた。


「ラーグ兄ちゃん、門が閉まってるよ?」

「無理にでも開けてもらうしかないな」


 夜間という事もあり、賊や魔物の侵入を防ぐため門は閉ざされているようだ。

 今は警備も必要最低限とされてるようで、外壁の上と門の前との二ヶ所――それぞれ一人ずつが配置されている。


「止まれ、街を出るなら手荷物を検査させてもらおう」

「すまないがそれどころじゃない、賊に追われてるんだ。早く開けてくれ!」

「賊だと? いったいどこ――「グァッ!」――な、なんだ!?」


 突如上から叫び声が聴こえてきたため、全員が外壁の上へと顔を向ける。


 ドサッ!


「なっ!?」


 すると門番の目の前に別の兵士が落下してきたのだ。

 この兵士は外壁上で街の外を見張っていた者であり、ラーズグロムは瞬時に()()()の名を叫んだ。


「クソッ、奴だ! カタコンベ三本柱のスピニーに違いない!」


 兵士の首に刺さっているボーガンの矢は、見覚えがありすぎたのだ。

 この矢にやられ、フールとはぐれてしまったのは記憶に新しい。


「早く門を開けるんだ!」

「わ、分かった!」


 ラーズグロムの剣幕に圧された門番が、手動による開門装置を動かし始めた。


(クソッ、奴はどこにいる!?)


 怯えているレシル達を匿うように、暗闇に染まった周囲をくまなく見渡す。

 しかし、身を低くして構えてるであろうスピニーを発見するには至らず……


 ドスッ!


「ギャッ!」

「しまった!?」


 今度は開門していた門番の背中にボーガンの矢が突き刺さる。

 いまだ門は1割も開いておらず、とてもじゃないが通れない。

 やむ無くラーズグロムが動かそうとするが、勝手が分からなく思うように動かない。

 と、そこへ背後から聞き覚えのある声が聴こえてきた。


「そろそろ年貢の納め時だなぁ?」


 振り向けば、葉巻をくわえてテンガロンハットを被った男が他の構成員を引き連れて近付いてくるところだった。


「……やはりお前か」


 ラーズグロムが煮え湯を飲まされた相手――スピニー。

 狙撃手である奴が姿を現した理由は一つだけ。

 もはや敗北はないと確信している時だ。



「被害がデカ過ぎてボスもカンカンだぜ? これ以上の犠牲が出るなら元凶を始末しても構わねぇんだとよ」

「くっ!」


 奇しくも貴人の密会と同じ流れになってきた。

 さすがにラーズグロム一人で太刀打ちできる相手ではなく、ジリジリと詰め寄られるのを許すばかり。


「――つ~訳だ。悪いがテメェには消えてもらうぜ」


 蛇に睨まれた蛙の如くボーガンを向けられたまま動けない。

 門が閉じている以上逃げ道もなく、もはや絶体絶命――が!




「それは困るわ」

「――誰だ!?」


 またしても聞き覚えのある声が上空から聴こえてくる。

 邪魔をされたスピニーは怒声を上げ、ラーズグロムも声の主を探して夜空を見上げた。

 全員の視線が上向く中、ラーズグロムの前にフワリと降り立つその人物は、真っ白なローブに身を包んだ()()女であった。


「フルスト……か」

「はぁ~ぃ、お久しぶりね♪」


 弾んだ声とともに手を振ってくるその人物は、聖プリムラ教の宣教師フルストだ。

 ひとまず寿命は延びたものの敵であることには変わりない。

 更に言えば、スピニーにとっても邪魔者であり……


「……今さら一人増えたところで状況は変わらん――死ねぇ!」


 パキンッ!


「チッ、障壁か……」


 スピニーが放ったボーガンは障壁によって阻まれる。

 それを分かってたかのようにスピニーに対して背を向けたまま、ラーズグロムの肩へと触れた。


「はい、捕まえた♪」

「ガ……ア……」


 すると硬直したかように身動き一つしなくなり、まともに声も出せなくなる。


「あ、あんたいったい何したのよ!?」

「何って、ちょっとの間ジッとしててもらうだけよ。というか邪魔だからどきなさい」

「ちょ――」


 抗議するジュリアを押し退けて、スピニーに向けて歩き出すフルスト。

 そんな彼女が気に入らないスピニーは、すぐさまボーガンを構え……


「余裕こきやがって……、すぐに後悔させてやらぁ!」


 ヤケクソ気味に連射を始めた。

 が、やはり障壁が矢を防ぎ、バスッバスッという音を立てて障壁の前に落ちていく。


「芸がないわねぇ。そんなんで闇ギルドの幹部な訳?」

「……俺は大道芸人じゃねぇ。だが、火付け役くらいならこなせるぜ?」


 何発かのボーガンを撃ち終えたスピニーが、仕事後の一服のように葉巻をふかす。

 その余裕な態度にフルストが立ち止まり眉を潜めたのを見て、葉巻を手に取り告げるのであった。


「既に()()()()()()()()んだ。じゃあ――あばよ」


 火のついた葉巻をフルストの方へと放り投げる。

 それが地面に落下すると……




 ボォォォォォォォン!


「くっ!?」


 フルストの足元が爆発炎上を起こし、炎が障壁を包み込んでいく。

 スピニーは闇雲にボーガンを放ったのではなく、矢の先に火薬を仕込んでいたのである。

 結果それが地面に散らばって、火付けに一役買ったのであった。


 炎に包まれたフルストを見て、スピニーは他愛もないと鼻を鳴らす。

 レシル達からみても、さすがに生きてはいないのではと感じ始める。

 が、しかし!




「ふ~ん? ちょっと驚いたけれど、中々やるじゃない」

「な、何だと!?」


 炎上が収まると、そこに居たのは全くダメージが通ってる感じのしないフルストであった。

 ローブすら燃えていないところを見ると、本人も無傷なのだろう。

 これにはスピニーも驚愕し、一歩二歩と後ずさる。


「まぁ大道芸人じゃなかったけれど、一発芸人としては上々よ。気に入ったから、報酬に()()を見せてあげるわ――」


 スピニーに向けて手をかざすと、みるみるうちに掌へ光が集まってくる。

 そして光の上から炎が覆い被さったところで、フルストがニヤリと口の端を吊り上げた。


「受けてごらんなさい――全てを焼き尽くすマットプロミネンス!」


 ジュワァァァァァァーーーッ!


「ギャ!」

「ガッ!」

「グッ!」


 炎の光線が地面を溶かしながら一直線にスピニーへと向かい、彼に当たると一瞬で全身を溶かしてしまった。

 当然近くにいた構成員も巻き添えを食らい、僅かな断末魔をあげて消滅してしまう。


「な、何なんですかあの人。あんなの化け物じゃないでしゅか!」


 フルストの魔法を見たメッツが、全身を震わせて驚愕する。

 傍らのレシルとジュリアは言葉を失い、身を寄せ合うのが精一杯だ。

 何せスピニー達だけでなく地面や建物までもが溶かされたのだ、自分はそうなりたくないと思うのが普通であろう。

 

「さ、待たせたわね。降参してくれた方が面倒が減って有り難いんだけれど、試しに相手してみる? あ、言っとくけど、クロカゲとかいう奴は当てにしない方がいいわよ? 今回はちょっと細工をしてあるから、今頃ゴブリン共と戯れてるんじゃないかしらね」


 そう言えばと、フルストに言われて一行は気付く。

 フルストのような強敵は決まってクロカゲが駆逐しにくるのだが、今はそんな感じは全くしない。


「こ、こ、ここはあちゃしが……」


 何とか恐怖を押し殺し、白ローブの化け物を睨み付けるメッツ。

 が、もはやそれが精一杯で、そこから踏み出す事は出来ないでいた。


「あらあら、そんなに震えちゃって。可哀想だから、痛みが感じないように終わらせてあげるわ。それじゃあ――『ズガガガガ!』――チッ、また邪魔者か!」


 メッツへと迫っていたフルストに対し、空から爪が飛んできた。

 透かさず飛び退き回避したフルストは、飛来した方を睨み付ける。

 一方でその爪はレシルもジュリアも見覚えのあるものであり、目を輝かせて星空を見上げると、待ちわびた名を叫ぶ。


「「ライザ!」」

「よく耐えましたね。後はわたくしに任せなさい」


 メッツの前に着地するとフルストに向かって対峙し、懐から飛び出したフールはラーズグロムの頭へと飛び乗った。


「フン、あんた一人で私の相手を? 随分と舐めた真似をするのね?」


 フルストもライザの力量は把握しており、現状だと負けるとは思っていない。

 だがライザは自信に満ちた顔を見せると、それと同時にもう一人の見慣れない女性が舞い降りライザの隣に立つ。

 色黒の肌に長い耳を持つことからダークエルフであることが伺える彼女は、ライトブルーのログヘアーを夜風に(なび)かせロッドを片手に凛と(たたず)む。


「残念でしたね、お相手するのはわたくし一人ではありません」

「……また余計なのが増えたわね。つ~かあんた誰よ? 見たところダークエルフのように見えるけれど、今まで居なかったわよね?」


 レシルやジュリアも、ついでに言うとラーズグロムも知らないその女性が、高らかと名のる。


「貴様に答える義理はない。だが特別に一度だけ名乗ってやろう。――我が名はリオン、我が(あるじ)に楯突く不届き者は全て始末する!」


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