エゴイズム
5年前、信吾は副社長に採用されてから、3年が経っていた。
そのころ、株価は最低水準を下回った。一ドル80円を切った。倒産会社が次々と出て、リストラの人数も過去最多、定期雇用人数は過去最低をマーク。それなのに、社長、池内孔太は何もしなかった。
経営状況は最低になり、信用度もかなり下がり、赤字経営が暫く続いていた。
ようやく動きだした時にはもうギリギリの状況にあった。その時に打ち出されたのが、リストラだった。
3000人の社員の中、1200人をリストラした。
信吾は池内にあまりではないかと、進言したのだが、毛頭、エゴイズムの塊が言うことを聞くはずも無い。
その時は、「私の会社だ。私が自由にして何が悪い。それ以上言うなら、貴様をクビにすることもできるのだぞ」と言われ、引き下がってしまった。
そして行われたストライキ。
もう、ほとほと社員達は信吾を含め、社長の横暴さに耐えきれなくなった。
そのストライキを提案したのは他でも無い、信吾自身であった。
一ヶ月に渡るストライキに加え、経営はほぼ破綻しかけていた。そして、リコールは成功。
あっさりと池内は引き下がった。
こうして、エゴイズムの塊は姿を消し、信吾が社長代理として暫く働くことになった。
「早いものですね。あれから5年とは」
コンコンー。
回顧していると、ノックの音で我に返った。
「はい、どうぞ」
「失礼します。社長、新幹線のチケットの予約はもういっぱいで無理らしいです。申し訳ありませんが、普通の電車しか」
「そうですか。わかりました。西園寺さん、お疲れ様です。もう上がっていいですよ。もうこんな時間ですし。私も帰ります」
「はい。ではお言葉に甘えて、失礼いたしました」
西園寺が去ると、ザッと周囲を見回して社長室を後にした。
「さて、帰りますか」




