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厄日
変わらない日常、流される人、人、人。
不景気と嘆きながら、それでも金持ちは存在する。
そしてその金持ちの一人、大岬 信吾は新宿駅の真ん中で迷子になっていた。
無論彼は普段公共の乗り物など利用しない。普段ならお抱えの運転手がいるのが常だ。
今日は信吾にとって厄日だった。朝から使用人にお茶を溢され、通勤ラッシュに巻き込まれ、部下の失敗の後処理をし、客の苦情に対応。
ようやく帰れると思った時には夜12時を回っていた。そしてお抱えの運転手を呼ぼうとした時だった。
「 社長、運転手から先程連絡があり、大雪のために車をだせないそうです」
部下の一人、西園寺史織が申し訳なさそうに報告する。
「雪か。それじゃあしょうがないね。じゃあ、西園寺さん、すみませんが新幹線のチケットをとっといてくれませんか?」
基本、信吾は怒る、苛立つということは無かった。
西園寺はそれを聞くとホッとしたように「わかりました」と呟いて、社長室を後にした。
「そんなに私が怖いのですかね」
誰もいない社長室で一人ボヤく。
たしかに一昔前、信吾は『鬼の副社長』として名を轟かせてきた。
だが、5年前、大規模なリストラを結構されたのであった。
信吾が勤める株式会社『ノーマライゼーション』の前の社長はエゴイズムの塊の様な人物だったのだ。




