OL?
外に出ると街の明かりだけでなく、雪のせいもあり、何時も以上に明るく見えた。
「寒いですね」
さすがに身体に堪える。
降り積もった雪は脚元からジワジワと熱を奪っていく。
「普通の電車なんて、乗るの久しぶりです」
どうやら最近妙に独り言が多くなってきた。これも歳のせいかと考えているうちに新宿駅までついてしまった。
一時間後、信吾は新宿駅の中で方向感覚がサッパリ分からなくなっていた。
「困ったものです」
時刻は1時を過ぎていた。
どうやら次が最終ですね。と時刻を見ると、電車が来ている時刻になってしまった。
「今日は野宿ですか。流石に辛い」
諦めて壁に背をあ付けていたら、20代前半であろう若い女性が歩いて来た。
「電車、行ってしまいましたよ」
おそらくOLだろうと思われる格好から見て、この女性も残業だろう。
「そうだな。ところでさ、新幹線なら、この後もう一本来るらしいよ。あたしさ、新幹線のチケット持ってんだけど、使わない?あたし、迎え来るし」
「まさか、そんなことできる筈も無いでしょう。あなたが男性ならともかく、女性なのですよ!」
少し強めの口調で言うと、女性は黙り込んだ。
と、思ったら、
「あはは。あはははははははは!こりゃ、面白い爺さんがいたもんだ。まさか、私を知らないとはね」
ー ⁇何のことでしょうか。私の知り合いにこの様な人がいるとは聞いたことないのですが。
「すみません。少々情報に疎くて。それに、爺さんは手厳しいですよ。私はまだ、おっさんくらいですから。惑いはまだなくなっていません。まあ、人生に惑いが無くなったらそれこそ凄いですよね。そんな人生なら楽だったのでしょうか」
「あたしは、でも、ここでバレるとかっこ悪いか。明日にでもTVでんじゃね?そーゆーあんたは?あんた、TVに出ないでしょ。だからわかんね。それに、やっぱ、あんた爺さんだ。発想が!迷いだか惑いだか知らないけど、迷うことは生きることに直結してんじゃん?例えばさあ、最初から全部決まっていたら可能性と言う言葉は存在しなかったよ。人間迷って、惑って、それでも答えなんか出ないことのが多いじゃんね。だからさあ、もう悟ったようなこと言うには、後5000年くらい生きてからにしな。それまでは、惑って、迷って、生きていけばいい。もし、周りが違うなんて言っても、あんたが信じていればいいの。あんたが自身持って言えるなら、それでいいじゃん」
ー なるほど。
信吾には考えつかなかった、いや、幼いころならまだそのような発想を持てたかもしれないが、今の錆び付いた信吾の頭では、新鮮な考え方であった。
ーそれでも、そんなエゴイズムでは昔のようになってしまう。私が私だけの意見を通していれば、おそらくあの会社は倒産でしょうね。もっと悪ければ破綻ですか。
「失礼、私としたことが名乗り忘れるなんてね。私は大岬信吾です。一介のサラリーマンです。申し訳ないのですが、おそらくTVを見る時間が無さそうなので、名前教えてもらいませんか?」
「しょうがねーな。橘 七海。これでも東日本トップの橘組組長だから、よろしく」




