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第九話 二度目の生

俺はボタンを押した。それはこの先の"ある"ゲームをクリアするために確認が必要だったからだ。


凪『試したいことがあるんだ。だからもう一度投票しようか』


そう言いながら俺はボタンを押した。投票が始まる。周りのみんなの俺を見る目がまるで狂った怪物を見るかのようだった。無理もない。あと1分待てばこのゲームは終えられたんだ。

けど俺はまだ終わらせはしない。


ピコン!


『投票が開始されます。裏切り者だと思う人間を指差してください。最も選ばれた人間は処刑されます。また投票をしなかったプレイヤー、自らを投票したプレイヤーも処刑されます。』


アナウンスが終わり 、俺への追及が雷鳴のように飛び交った。


翔『どういうつもりだ凪‼︎内通者などいないのではなかったのか!』


筋肉質の体をもつ翔。キレると血管がはち切れるんじゃないかってほど浮き出ている。迫力がありすぎて腰が抜けてしまいそうだ。


亮太『どないすんねん‼︎投票始まってしもうたやんけ。投票せんと殺されてまう!』


俺に対する誹謗の嵐。この投票をみんなの納得できる内容で終わることができなかった場合、俺はきっとこの先孤立し、矛先を向けられるだろう。人も死ぬことになるしな。けど俺には確信に近い根拠がちゃんとある。これは95%勝てるギャンブル。


凪『最初に死んだデカブツ。あいつは死んだのになぜまだこのゲームで席が用意されてると思う?』


亮太『そりゃ…なんでや?』


崇人『死んだ人間の分のイスを取り除く時間がなかっただけじゃねーのか。』


崇人がみなの考えを代弁するかのように言った。


悠馬『それはねーはずだろ。運営側の人間は複数人いる口調だった。それにあいつが死んだのは初手のゲーム。時間はあったはずだぜ。』


冷静に悠馬が返答する。しかも悠馬はもうデカブツに投票してる。俺の考えを信じてるんだ。


凪『そう。つまり死んだ人間はプレイヤーとしてはまだ"生きてる"んじゃないかって話だ。』


そう。俺の賭けた可能性は死んだ人間はまだプレイヤーとしては生きているということ。つまり投票で最初に死んだデカブツを選択できるんじゃないかってことだ。


a『そんなこと確認するために投票を始めたのか⁉︎』


歩夢『凪それはあまりにも無責任だ。全員の命がかかってることをちゃんと自覚してるのか?』


罵声が止まらない。あぁうるさい。勝手に騒いでろ。どうせゲームは次でラストなんだ。しかも次のゲーム、この俺の賭けが合ってた場合あいつらを救うこともできる。


凪『早く投票しないと時間切れちゃうよ?』


俺はみんなを急かした。時間はあと15秒。投票しなかった者は死ぬというルールがある以上みんなデカブツに投票した。


舞『凪君にはちゃんと考えがあってこの選択をしたんでしょ?』


舞の瞳は不安と絶望で曇っていく。手を見ると微かに震えていた。


凪『大丈夫。事例がある。』


俺はそう言い舞を落ち着かせる。舞は困惑していた。それと同時に俺について疑りの目を向けるようになった。


『投票を終了します。岡崎武10票、天宮凪2票。最も投票された岡崎武の処刑が確定しました。』


アナウンスが流れた。そしてイスが回りだす。それとほぼ同時にゲームのタイマーが部屋中に鳴り響く。そのタイマーを合図にイスは回るのをやめた。

やっぱり俺の賭けは合ってた。


???『クリアおめでとう。まさか死んだ人間を選ぶなんて賭けをするとは。君はギャンブルが好きなのかな?天宮凪君。』


突然声が聞こえ、あいつは俺に問いかける。


凪『俺はギャンブルなんてやったことない。』


悠馬『はは!ビギナーズラックってやつかもな!』


悠馬はあんな危険な賭けをした俺にまだ気さくに話しかけてくれた。


???『まぁ何はともあれクリアだ。次のステージに進んで。次がラストのゲームだ!』


そう言い終わるとあいつの声は消えた。そして次のゲーム会場に続く扉が開かれた。


プレイヤー達は次のゲームで最後という事実に衝撃を隠せていない様子だった。喜びを見せる者や気を引き締める者。表現はみなバラバラだった。だが一つだけ共通することがあった。それは俺への憎悪。勝手に自分の命を賭けられたことにひどく腹が立っている様子だった。

プレイヤー達は背を向け次のゲーム会場に進んで行った。

俺はなぜあんなことをしたのか。そして俺が何者なのか。それを最も信頼できるあいつらに話しておきたい。


凪『悠馬、舞。ちょっと話いいかな?』


俺は舞と悠馬を呼び止めた。記憶が戻った俺はこいつらがどんな罪を犯して少年院にいたのか。どんな人間なのかを知っていた。だからこそ死なせたくない。俺にはこいつらが必要だから。


悠馬『なんだ凪?愛のメッセージならゲームが終わった後にしてくれや。』


凪『そんなんじゃないよ。お前らに伝えておかなきゃいけないことがあるんだ。』


舞『私たちに伝えなきゃいけないこと?』


俺は深呼吸し、落ち着いて話せるかどうか不安を抱えながら打ち明けた。



——俺はこのゲームを一度クリアしたことがある——



は?って顔をしてた。数秒の沈黙。当たり前だ。だってこのゲームのルールに一度参加した人間は再びゲームに参加することができないってルールがあるから。


舞『えっと…つまり凪君は初めてじゃないの?』


舞は相当信じられないようで事実確認を再びしてきた。


凪『あぁ。だから次のゲームも攻略法を覚えてる』


悠馬『それを俺たちに伝えるために呼んだのか』


急にこんなことを信じろなんて言う方が無理な話だ。それは自分でも分かっている。だからといって俺は自分の口を止めない。


凪『今のゲームで分かった通り死んだ人間もプレイヤーとしてはまだ生きてる。それを利用する』


舞『次のゲームってどんなゲームなの?』


凪『説明したいけどそんな時間はもう残されてない。急いであいつらの“死体“を次のゲーム会場に持って行くぞ。』


舞は困惑していた。しかし少し考えた後悠馬はすぐに裕樹の死体を躊躇なく担いだ。肩や服には裕樹の顎から溢れ出た血がべったりと付着していた。顔色を変えず俺らを急かした。流れ出る血。冷たくなった肌。先程話してた茜とはまるで異なる冷たくなった肉の塊。舞は抵抗はありつつも茜の死体を背負い、弥の死体を持った俺と共に次のゲーム会場に進んだ。

次のゲーム会場に着くと周りのプレイヤーは俺たちを頭のおかしい人間の見た目をした何かを見るような目で見てきた。

ゲーム会場は最初からずっと変わらず白色の壁で囲まれた部屋だった。しかし部屋の壁に茶色に変色している箇所がいくつもあった。会場には天秤の形をした物が置いてあった。天秤の上には開閉可能な屋根があった。


???『最後のゲームはバイキング。まぁ名前はこんなんだけどルールは比較的簡単。自分の命の価値を題材に一対一で議論してもらう。議論を通して優位が変わっていく様をバイキングとかけたらしいよ』


あいつの説明したゲームのルールはこうだ。

自分の命の価値を天秤にかけ、どちらの命が生きる価値のある物なのかを議論し合い、その議論を元に生きている人間が価値のある命を選ぶ。選ばれた者は生き残り、選ばれなかった方は死ぬ。このゲームで生き残ったプレイヤーの半分が確定で削れる。


???『制限時間は1組5分。そこで自分の価値を精一杯表明するんだ。誰と組んでもいいし誰から天秤に乗ろうと構わない。さぁ存分に命の価値をぶつけ合うんだ。』


ゲームが始まった。それとほぼ同時に俺は舞の背中を押して舞を天秤の上に立てた。その逆には茜の死体を前傾姿勢になるよう乗せた。天秤には足を固定するための器具が付いたあった。お互いが見合うような形にした。天秤はどちらにも傾くことなく静止した状態を保っている。


俺はみんなの前で立ち、手を上げ、大きくパンッ!と手を鳴らした。


みんなの視線が俺に集まる。誰も口を開かない。注意が全て俺に集まる。


そして俺は口を開きプレイヤーに問いかけた。


『死体と生きてる命。どっちが価値がある?』

見てくださりありがとうございます!よかったら次の話も楽しみにしててください!

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