第十話 命の価値
どっちが価値があるか。それは誰にとっても明白だった。みんな私を選んだ。別に茜ちゃんに価値がないと言っているわけではない。ただどちらを殺すかってなった時にもう死んでる茜ちゃんが選ばれたってだけ。みんな私を選んだ。
天秤が私に傾く。そして私の天秤が限界まで傾いた時、上の天井が開き船を止めておくのに使われる錨のような物が出てきた。錨は茜ちゃんの死体の上で、プラーン、プラーンと左右に揺れ出した。徐々に錨が揺れるスピードは上がっていき、そのまま茜ちゃんの死体を背中から胸にかけて串刺しにした。茜ちゃんを突き刺した錨の先には赤く煌めく臓器が刺さっていた。錨はそのまま上に戻っていく。茜ちゃんの死体を貫いたまま。天井に戻る時茜ちゃんの死体が引っかかる。だが錨はあたかも何もないかのように強引に戻ろうとする。茜ちゃんの死体は
バキッボキッ
と人間から鳴ってはいけない音を鳴らしながら折れていく。そしてそのまま錨から抜け地面に叩きつけられた。その死体はもう人間とは到底いえない見た目をしていた。
私は生存した。私は凪君によって生かされた。ラストのゲームをクリアした私はデスゲームをクリアしたことになる。
私はこの先ゲームによって死ぬことがなくなった。
だから私は仕事を果たす。
観測者として最後まで結末を見届ける。
私の次は悠馬君が天秤の上に立たされた。しかし私と同じようにはいかなかった。死体を持っている者はこのままクリアできる。
じゃあ“持ってない人"は?
当然言い合いになった。では茜ちゃんの死体をもう一度利用すればいいじゃないかって?結論から言うとそれは不可能だった。天秤に乗せるのはある程度の重量があり、かつ足を固定できるものだけだった。茜ちゃんの死体には血や臓器は溢れ出ていて集めるのは困難。足なんてぐちゃぐちゃになりすぎててどうやって固定するんだって感じだった。死体を利用できるのは一回きりだった。裕樹君と宮迫君の死体の奪い合いが始まった。醜かった。まさに地獄絵図。死体の返り血を浴びながら死体にしがみつこうとするプレイヤー達。奪い合いはついに殴り合いへと変わっていった。次々とプレイヤーが倒れていく。その中でも凪君、翔君、睦君、悠馬君は奪い合いに参加しなかった。最終的に死体はb君と亮太君に渡った。他のプレイヤーは全員ダウンしていた。
亮太『よっしゃ‼︎空手やっててよかったでほんま。俺な、思い出してん。凪君の言葉で。俺、不良3人殺してたわ。空手の道場で俺は強くなるために毎日必死に練習しとった。でもな。俺より強いやつが3人もいてん。どうにか追いついてやろうとあの時は必死やった。努力は報われるんや‼︎って本気で思いながら練習しとったわ。でもな、あの3人はちゃうかった。努力なんてしとらんかってん。センスだけで成り上がった。裏では未成年なのにタバコを吸い、しまいには暴力で金を巻き上げる始末。俺はそれがどうしても許せんかった。なんで努力しとる俺があんなカスどもより弱いんやって。なんであんなクズに才能があるんやって。そこで思てん。あいつら消せば俺が一位やって。それで俺は1人ずつナイフで心臓を刺して殺した。まぁすぐバレてんけどな。それを完全に忘れとった。でもなんやろか。記憶が戻って闘争心?っちゅうやつが湧き出てきてん。今の俺なら誰にも負ける気せーへんわ!ほなお先失礼するで!』
自分の過去を話した亮太君は満足気な顔をしながら天秤に立った。片方には宮迫君の死体がセットされた。亮太君は勝ち誇ったような素振りを見せ大きく手を広げていた。
亮太君の番が終わらない。
亮太『あれ?なんでや?なんで終わらへんねん。』
焦りながら故障かと天秤を触る亮太君。そこに凪君が言った。
凪『いっぱい減らしたな。で、誰が選ぶんだ?』
亮太『は?お前らに決まっとるやないか!はよう選べ!』
キレながら手を上げる素振りを見せるが足が固定されているので近づけない。
凪『人を殺してヘラヘラしてる奴を誰が選ぶんだよ。』
悠馬『さっさと変われ。そこはお前の席じゃない』
悠馬君は腕を組みながら見下ろす。
亮太『おい!睦!お前はよ俺を選ばんかい!すっと黙って立ちやがって!なんとか言えコラ‼︎』
標的は睦君に変わった。睦君はずっと閉じていた口を開き言った。
睦『クソ野郎が』
そう言うと睦君は宮迫君の死体を指差し選んだ。
天秤が死体に傾く。誰も亮太君を庇わない。誰も亮太君を選ばない。そして死体が乗った方の天秤が限界まで傾いた。天井から錨が落ちてきて、ユラユラと揺れ始める。
亮太『まて、いやや!死にたくない。なんでや!命やぞ。生きてる命やぞ!お前ら俺と何がちゃうねん。同じ人殺しやないか!ゲームに参加する前だって人殺して少年院に入ったくせに!』
そう言いながら錨に貫かれた。口から血が大量に吹き出た。腕には力が入らなくなり垂れ下がった状態に。頭はガクッと落ちた。そのまま錨に連れていかれた。あとは茜ちゃんの死体と同様…やっぱり何度見ても慣れる気がしない。
睦『はは…人を……殺しちゃった』
睦君は自分が命を奪ったという責任感から気が滅入っていた。手は震え、今にも倒れそうだった。
翔『気を落とすな睦。我も主と同じ行動をした。主の責任だけではない』
慰めるように翔君は言った。
その後b君は諦めたように死体を悠馬君に渡した。そのまま悠馬君、凪君は死体を使った。翔君と睦君がクリアしてほしいと渡したのだ。無事私たちはゲームをクリアした…
結論から言う。
生き残ったのは
・桜音舞
・天宮凪
・宮谷悠馬
・小島崇人
・世良歩夢
・藍良聡太(b)
・花山総一郎(d)
だった。
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