第十一話 『クリアおめでとう』
ここから話すのは私たちの現在に至るまでの流れだ。
あの後、翔君と睦君は
『人を犠牲にしてまで生きようとは思わない。自分の命で誰かを救えるならそれは本望だ。そして藍良と花山を許してやってほしい』
なんて言って藍良君と花山君を庇って死んだ。私は知っている。
確かに翔君と睦君は少年院にいた。どちらも無罪だった。冤罪と言った方がいいだろうか。それを知っていたのに私は2人を止められなかった。ゲームをクリアした部外者だからってのもあるが、1番は彼らの覚悟の決まった眼差しを見て、意思を尊重してしまった。彼らの気持ちを優先してしまった。この世界で無くなってはいけない命が二つもこの瞬間に亡くなった。
藍良君も花山君のことも思い出した。藍良君は殺人未遂。花山君は強盗で少年院に入れられた。死んだあの2人は少年院にいた頃の彼らは決して悪い奴ではないということを思い出しており、あんな行動をした。
もう2人の歩夢君と崇人君は殺人罪だった。
理由は定かではないが間違いなく人を殺していた。情報を開示していたか否かでここは決められた。罪の重さがあまり変わらなかったからだ。
ゲームが終わった後、天秤は赤黒い色で染め上げられていた。死体には赤黒い色以外にも黄色やピンクなど人間から初めて見る色をこの目に収めた。
私は結局ゲームが終わっても全ての記憶を思い出すことはできなかった。
???『ゲームクリアおめでとう。ルールの時にも言ったがこれがラストゲーム。つまり君たちはゲームで生き残りクリアしたんだ。素晴らしい!君たちにはこれから選択肢が与えられる。そのことについては次の部屋で話すよ。そしてゲームの運営代表からの祝辞もあるよ。もちろん殺し合いはもう終わりだ!本当にお疲れ様。』
アナウンスが流れた。終わり。私たちはゲームをクリアしたんだ。
舞『終わったんだね。全部。』
私は呟く。
悠馬『結局何の目的でこんなことしたのか分かんねーままだったな。』
凪『次の部屋で選択肢の話があるっぽいからそこで色々分かるのかもね。』
凪君はこのゲームを一度クリアしたことがあると言った。何かゲームについて知らないのだろうか。聞きたい気持ちはあったが、そのことは私と悠馬君にしか話していない内容だったため今聞くことはできなかった。
最後まで自分の情報を開示しなかった藍良君、花山君は気まずそうに私たちの会話を聞いていた。
悠馬『選択肢か…最初に言ってた職や住に困らねーみたいなやつか?』
崇人『生き残るのに必死で忘れてたわ。あったなそんな話。』
そっか、そんな話あった気がする。
クリアしたのに何だろうこの気持ち。私はゲームを通して人を間接的に殺した。そんな業を背負ってこれから生きていく。そんなことができるんだろうか。
舞『ねぇ。報われるかな。これまでの選択は正しかったんだよね。』
気づけばそんなヒステリックな質問を凪君にしていた。
凪『うん。きっと報われる。生きる意味を見つけることができればきっと全てが報われるはずだよ。』
思えばずっと凪君に助けられていた。初めて話した時から最後までずっと私を気にかけてくれた。いや、私だけじゃない。他のプレイヤーにも気をかけていた。なるべく死なないようにと。生き残れるようにと。途中から人が変わったのか疑うほど変化が見られた気がしたがきっと気のせいだったんだと思う。ゲームを通してできた仲間の死に気が滅入ってておかしくなってただけだ。
次の部屋に続く扉が開かれた。
私たちはゆっくりと次の部屋に向かった。ゲームをクリアした。全てが終わった。
部屋に着くといつもとなんら変わらない白い壁に囲まれた部屋が私たちを待っていた。何もない部屋だった。そう。何もない部屋だった。
——私の脳が理解を拒んだ——
その光景に私は思考が追いつかなくなった。頭の中がぐちゃぐちゃになった。私の中で何かが崩れる音がした。
部屋に着いた時ある"音"が耳に入った。
パチパチパチパチと手を叩く音だった。その音が部屋中に響き渡る。後ろからだった。私は後ろを振り向いた。そこには拍手している凪君の姿があった。
凪君…
—いや
彼は拍手を続けながらゆっくり、ゆっくりと歩き出した。私たちの間を通り一歩、また一歩と前に進んでいく。私たちの前に立った時、足を止めると同時に鳴らしていた不穏な拍手をピタリとやめた。
彼は振り返って私たちの顔を見た。
目が合った。
ほんの数秒。2秒にも満たないほど短い間彼と見つめ合った。それが私にはとても長い時間に感じた。
彼は口を開き言葉を放った。
それは私の思考を吹き飛ばした。めちゃくちゃになった。言葉でどう表せばいい。理解できない。いや、したくなかった。
彼は濁ることのない瞳で私たちに言葉を突きつけた。
たった一言
『クリアおめでとう』
と。
書きたかったとこまでやっと書けました。ここから楽しくなりそうです♪




