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第十二話 ヌル

言葉の意味をまだ理解できてない人に現実を突きつけるように告げた。


『君たちはやり遂げたんだ。僕が主催したこのデスゲームを』


静かな空間で凪の言葉が響く。一人称がまた変わっていることなど気にもならない。それほどまでにプレイヤー達は混沌の渦に呑まれていた。


『…お前が?どういうこったぁ凪!』

『ねぇ…冗談だよね?』


舞や悠馬の問いに凪は少し微笑みながら答える。


『残念だけど本当だよ。ゲームを開催した。君たちをプレイヤーとして参加もさせた。これは全部僕の仕業だ』


『そゆことぉ。君らが仲間と思っていた凪は俺ら運営側の人間でしたと。これが真実だよ』


入り口の方から声が聞こえた。

軽薄な声。その声はゲームが始まった時からずっと聞いていた声だった。振り返ると金髪の青年が立っていた。全体的にスッキリとしており、目にかかるほどの髪をセンターで分けている髪型。青色のスーツに灰色のネクタイを締めた細身の男。年齢、外見はプレイヤー達と同年齢だ。


『お前か。ずっと俺らに話しかけてくれた張本人はよぉ』


悠馬が金髪の青年に殴りかかった。青年が深くしゃがみ視界から消えた。その瞬間足をはらわれ、転倒させられた。


『これは正当防衛。だから堪忍してね』


ニコッと笑いながら青年は言った。尻餅をつきながらも敵意を剥き出しにし、男を睨みつけた。


『話をしたい……君たちにとっても、僕にとっても大事な話だ』


凪が少しずつ近づき話し始める。


『こっちも話を聞かなきゃ納得できない。じっくりと話をしようぜ凪』


裏切られたことに腹を立てている様子の崇人。今にも拳同士が火花を散らしそうになっていた。


『凪、あいつがこっちに気づいた』


突然意味のわからないことを青年が口走った。

プレイヤー達にはこの言葉の意味が分からなかった。だが凪は違う。

その言葉で表情は一変した。目を大きく開き、歯をギリッと食いしばる。憎悪や殺意。そんな禍々しいものが詰まったような表情だった。


『ヌル‼︎』


話そうとしていたことを中断し、入口とは反対側にある扉に向け歩き始める。狙っていた獲物がようやく罠にかかった感覚が全身を駆け巡る。逸る気持ちを抑えきれず、歩みは自然と速くなっていく。


『待てよ凪。行かせるわけねーだろ。ちゃんと説明しろ』


悠馬の言葉にピタリと立ち止まり振り向く。


『……ついてこい。お前たちは見ていろ。説明も話も後だ』


プレイヤー達は困惑しながらも先を急ぐ凪の後をついて行った。

扉を開け部屋から出るとそこには通路があった。通路は薄暗く、床と壁の境目から漏れる青白い光だけが一直線に続いていた。光は濡れた床に反射し、静まり返った空間をぼんやりと照らしている。先の見えない闇が奥に広がり、足音だけが冷たい壁に反響した。

気味の悪い通路を通り凪が別の部屋の扉を開けた。プレイヤー達も後に続きその部屋に入る。その部屋はモニター室だった。モニターから出る白い光が視界を埋め尽くした。モニターにはゲーム会場が映し出されている。部屋には見知らぬ顔の人が3人いた。

一人は女の子だった。首筋がよく見えるボブヘア、目だけで人を黙らせるような鋭い目だった。彼女の服は黒を基調とした厚手のアウター。襟元で口元を隠していたためほとんど見えなかった。

もう二人は男だった。一人は細身の高身長の男だった。手も足も首も全てが長い。異様な立ち姿の男だった。

もう一人は異様に身体のデカい男だった。とにかくデカい。服についてあるボタンが今にもはち切れそうだ。二人の見た目は真逆だった。

真ん中のモニターには他の画面とは違い、異様なマークが映し出されていた。そのマークは一本の鋭い槍を中心に、左右へ広がる二枚の翼が書いてある。左翼は白く、美しい。まるで天使の羽のように整っていた。だが、右翼は違う。無数の鎖に縛られ、羽根は裂け、所々が崩れ落ちている。今にも風化して消えてしまいそうなほどボロボロだった。

気味の悪いマークだ。


『久々だな。クソ野郎。お前は今どこで何してる。答えろ。すぐそっち行って殺してやるから』


突然凪がモニターのマークに向かって話し始める。


『情熱的なアプローチありがとぉ天宮凪君!見ない間に随分と口調が変わったねぇ。』


聞いたことのない男の声が凪に応える。その声には奇妙な威圧感があった。老人のような穏やかさと、底知れない悪意が同時に混ざっている。ゆっくりした口調なのに、一言ごとに空気が重く沈んでいく。


『本来できるはずのない二度にわたるゲームへの参加。不思議に思っていたが——そうか。人格の分岐でエラーが起き、再度ゲームへの参加を可能にしたのか!あれはセンサーからキャッチした心拍や脳波により検知するからね。いやぁこれは驚いたよ!』


男は淡々と納得していく。システムや凪について異様に詳しいようだった。只者ではないと瞬時にプレイヤー全員が察した。


『そんなことどうでもいい。約束だ。さっさと吐け。それともあれか?今更怖気付いたか?』


煽る凪。顔には苛立ちと焦りが見えはじめていた。


『まぁまぁそう焦るなよ。急に再会したんだぞ?土産の準備ができてるわけないだろぉ。う〜ん、そうだなぁ。二ヶ月だ。二ヶ月後再びここに僕は現れる。そこで居場所を伝えよう。念願の再会はそこで行うとしよう!楽しい舞台になるよう準備するから君たちも準備しておくんだね。』


そう言い終わるとモニターに映っていたマークが消え、何も映っていない白色一色の画面が映し出された。


『待て!クソッッッ!!』


凪は感情的になり机を殴った。鈍い音と共に机が大きく揺れた。


『…今のは?』


感情的になっている凪に少し怯えつつも舞は質問する。


『……このゲームを作った黒幕だ。名前は分からない。俺たちはアイツを"ヌル"って呼んでる』


血まみれになった拳を握りながら凪は答えた。


『どういうことだ。お前がゲームを主催したんじゃねぇのか』


『ゲームの創設者はヌルだ。俺はあいつの作りあげたゲームを借り、二回目のゲームを主催した。全てはあいつを殺すために』


その説明足らずの言葉に全プレイヤーが呆気に取られた。殺すためにゲームを運営した。それは言い換えれば"殺すためだけに"ゲームをしたということになる。ゲームでの凪では考えられない。人の命を物のように利用していたのだ。


『その話も気になるがヌルが言っていたお前の人格についても知りたい。詳しく話せ』


崇人が問う。ゲームを主催するまでの経緯、そしてヌルが口から漏らした凪の人格についてを。


『……ごめん。ただ場所を変えよう。長い話になると思うから』


また人が変わったように落ち着きのある雰囲気になった。


『みんな、ついておいで』


金髪の青年はそう言い、施設を案内してくれることになった。皆を連れ、先頭に立ち先導した。

通路は狭く三列ほどになって進んだ。


『会場はあんなんだけど中は案外広いんだ。施設も結構整ってる』


『お前らもヌルの仲間なのか?』


歩夢が金髪の青年に聞いた。その質問に青年はピタリと止まり答えた。


『まさか。俺達も君達と同じゲームの被害者。ヌルは俺達の宿敵だよ。』


青年の声と表情には微かに苛立ちを感じさせられた。


『ついたよ。ここがパーソナルルームだ』


青年は扉を開けた。部屋の中はゲーム会場とはまるで違う。部屋に足を踏み入れた瞬間、まるで貴族の私室に迷い込んだかのような感覚。天井には豪奢なシャンデリアが吊るされ、壁には精巧な装飾が施されている。王侯貴族の住まう部屋そのものだった。深紅の絨毯と重厚な木製家具が並び、部屋全体から上品な高級感が漂っていた。真ん中には異様に長い机が置かれ、その両脇には何脚もの椅子が並んでいた。

青年が席に着き、その流れに従うように全員が席に着いた。


凪は拳を握り静かに口を開く。


『じゃあ話すとするよ。僕。天宮凪について。そして、このゲームについて』

色々勉強しながら書いてたらめっちゃ遅くなっちゃいました泣。励みになりますので評価やブックマークなどお願いします!

余談: 最近初めてブックマークをいただけました。やったね!

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