09 ブラウン神官とマイル神官
09 ブラウン神官とマイル神官
その様子を見送っていたのはマイル神官だった。
信じられなかった。
魔力がないと言われていた余分が、平然と高度な魔法を使ったのだ。
しかも――収納魔法。
それは本来、上級神官でも扱える者は限られている。
(……これは、教会にとって大きな意味を持つ)
マイル神官はすぐにブラウン神官を訪ねた。
ノックももどかしく、
「マイルです!」
と声をかけ、ドアを閉めるのも忘れたまま言った。
「オオヤナギは高度な魔法を使えます!」
はっとして口を押さえ、慌ててドアを閉めた。
ちょうどブラウン神官と話そうとミツルギが来ていた。
ミツルギはマイルの言葉を聞いて固まったが、すぐにドアに耳を当てた。
「オオヤナギがですか?」
ブラウン神官の驚いた声。
「はい。この目で見ました。床の水を魔法で窓から捨てました。それから掃除道具を収納して部屋を出ました。おそらく片付けるつもりでしょう」
ブラウン神官は眉をひそめた。
「……収納魔法は、神子様以外では久しく見ていません。あれは本来、神殿の宝と呼ばれるほどの才能です」
マイル神官は頷いた。
「はい。しかも彼は魔力量が測定不能と言われた余分です。これは……」
「王家に知られれば、間違いなく取り込まれるでしょうな」
ブラウン神官の声が低くなる。
「神子様の力を王家が独占しようとしている今、もう一人“特別な存在”が現れたとなれば……」
「教会の立場が強くなる」
二人は同時に言った。
「ある意味、ミツルギ様より重要です」
ミツルギは扉の向こうで息を呑んだ。
「そうだとして……なぜ隠すのでしょう」
ブラウン神官が問うと、マイル神官は静かに答えた。
「余分と言われ、虐げられてきたからでしょう。力を見せれば、さらに面倒が起きると考えたのかもしれません」
ブラウン神官はこめかみを押さえた。
「あぁ……私はなんと心無い言葉を彼に……」
「彼は背を丸め、いつも伏し目がちです。あんな素晴らしい才能があるのに……」
マイル神官も続けた。
「彼と話をしなければ……しかし、騒ぎにするのは良くないですね」
「王宮、王子殿下には当分内緒ですね。オオヤナギをしっかりと神殿に取り込まないと」
ブラウン神官は深いため息をついた。
「彼の扱いを誤れば、教会と王家の均衡が崩れます。慎重に動かねば」
「私は彼が無事に掃除道具の片付け場所を見つけたか確認します。失礼します」
マイル神官がドアを開けたときには、ミツルギは物陰に隠れていた。
ミツルギは本来、オオヤナギが神官見習いをいじめていると告げ口に来たのだった。
だが、そんなことはどうでもよくなっていた。
そっと部屋に戻りながら、ミツルギは考えた。
――オオヤナギが魔法を使える?
――しかも収納魔法?
――教会が彼を宝と呼ぶほどの存在?
これは、放っておけない。
むしろ――利用できる。
ミツルギの目が、静かに、冷たく光った。
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