74 フェルナンドと騎士団長と騎士団長
74 フェルナンドと騎士団長と騎士団長
フェルナンドは、木剣を振る三人の姿を眺めていた。
汗だくになりながらも、誰一人として手を抜かない。
隣にはアガペーナ騎士団長、その反対側にはハイタック騎士団長が立っていた。
「拾い物だったな」
アガペーナ騎士団長が感心したように言う。
「ああ」
フェルナンドもうなずいた。
視線の先では、ケントたち三人が必死に剣を振っている。
「最初はどうなることかと思ったがな」
ハイタック騎士団長が苦笑する。
「俺たち三人が揃って宿に迎えに行った時の顔は見ものだった」
「引きつっていたな」
フェルナンドが思い出し笑いを浮かべた。
あの夜、扉を開けて、ルークの後ろを見た時の三人の表情は忘れられない。
ルークの後ろに立つフェルナンドを見るまでは笑っていた。
その後ろを見た時は、びっくりしていた。
明らかに危険を察知していた。
「騒ぎ出すかと思ったぞ」
「俺もだ」
「逃げる可能性も考えていた」
三人は小さく笑った。
だが実際には違った。
驚き、戸惑い、明らかに緊張していた。
それでも三人は騒がなかった。
質問を浴びせることもなかった。
無理やり平静を装い、荷物を持ってついて来た。
「面白かったのは、あの三人がお互いに目配せしていたことだな」
ハイタック騎士団長が言った。
「『落ち着け』『落ち着け』と必死に言い聞かせていた」
「違うと思うぞ」
フェルナンドが笑う。
「『ルークがいるから大丈夫だ』と自分に言い聞かせていたんだ。多分」
「ああ、確かにそんな顔だった」
三人は再び笑った。
しばらくしてアガペーナ騎士団長が尋ねる。
「しかし、人が悪いな。いきなり試すとは」
フェルナンドは肩をすくめた。
「試したくなったんだ」
「ほう?」
「ルークを逃がした三人だぞ」
その言葉に、二人の騎士団長の表情が少し真面目になる。
ルークは神子だ。本人はその呼び方を嫌がるが、間違いない。
捕まりそうになったとルークは言う。
ルークも気が付いているように、ミツルギがルークを陥れようとしたようだ。
それを逆手にとって、騎士団はルークの身柄を確保しようとしたそうだ。怪我をさせないように、神官長やミツルギと王子と一緒に包囲したが、見事にルークは逃げたとか……
この話題になるとハイタックの騎士団長は居心地が悪そうだ……
おかしなことに、封鎖状態の王城から、彼は逃げおおせた。
そして、ルークを逃がすために動いた者たちがいた。
あの状態の王城から逃がしたことをハイタックの騎士団長は評価している。
警備していたのは騎士団だったからだ。
騎士団を出し抜いたのは、目の前で木剣を振っている三人だ。
「実力はあとから鍛えられる」
フェルナンドは静かに言う。
「だが、人間性はそう簡単には変わらん」
訓練場から掛け声が聞こえた。
ケントたちが必死に木剣を振っている。
「だから見たかった」
フェルナンドは続ける。
「もし駄目だったとしても、生活の面倒を見るつもりではいた」
フェルナンドはそう言った。
「ルークの恩人だからな」
そして視線を三人へ向ける。
「だが、あれなら違う」
「鍛えれば伸びる」
「鍛えがいがありそうだ」
アガペーナ騎士団長が豪快に笑った。
「同感だ」
「みすみす失ったな我々は。神子も、有用な人材も」
ハイタックの騎士団長がため息まじりに呟いた。
「そこ! 腕だけで振ってるぞ! 腰を入れろ!」
という教官の怒鳴り声が響いた。
するとルークが心配そうにそちらを見た。
「ルーク。人の心配はいい」
「……はい」
三人は顔を見合わせる。
そして、だれからともなく笑い出した。
どうやら、本当に当たりを引いた。




