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「神子の余分」と言われましたが、中身は最強の神子でした ~入れ替わり召喚で捨てられた僕が、木の実と石で世界を浄化するまで~  作者: 朝山 みどり
第四章

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73 神子直属

 73 神子直属


 翌日も、三人はいつも通り働いた。

 荷物を運び、片付けなどの雑用をこなす。

 昨日の出来事が夢だったのではないかと思うほど、普段通りの一日だった。


「本当に誘われたんだよな」


 昼休み、ビルが小声で呟く。


「ご馳走を食べて、本当に『来い』って言われたんだよな?」

「夢みたいだ」

「夢だと言われたほうが、まだ信じられる!」


 三人は声を揃えて笑った。フェルナンドから「来い」と誘われたのは現実なのだ。


「人生、何が起こるか分からんな」


 ジョンが肩をすくめた、その時だった。

 ふらりと見覚えのある男――アンディが現れた。


「おう」


 アンディは何事もないような顔で近づいて来る。


「返事を聞きに来た」

「ああ」


 三人で話し合った結果は決まっている。ルークがくれた機会を掴みたい。


「行く」


 短く答えると、アンディはにやりと笑った。


「そうか。じゃあ手続きをする。荷物をまとめておいてくれ。迎えに行く」


 それだけ言い残し、彼は去っていった。


「早いな!」

「早すぎるだろ!」


 三人は顔を見合わせた。



 少ない荷物はすぐにまとまった。

 それから数日ほど待った、ある夜のこと。部屋の扉が優しくノックされた。


 コン、コン、コン、コン。


「いる? ルークだよ」


 三人は慌てて立ち上がり、ドアを開けた。

 そこには笑みを浮かべるルークがいた。その後ろにはフェルナンド、さらに見たこともない威厳のある男が二人、そしてアンディが控えている。


「迎えに来たよ」


 ルークはまるで散歩にでも誘うような口調で言った。


「行こう」


 三人は荷物を抱えて宿を出た。

 フェルナンドはともかく、あの見知らぬ男二人は一体何者なのだろう。誰も説明してくれない。だが、今はついて行くしかなかった。

「説明してくれ」とルークに取りすがりたい気持ちを必死に抑え、三人は無理やり平気な顔を装って歩いた。



 翌朝、「これから剣の稽古だけど、一緒に行こう」

「は?」「剣?」「いきなりかい!」


 驚く間もなく連れて行かれたのは、広大な訓練場だった。

 最初は姿勢の正し方から、剣を正確に振る動作まで細かく指導された。

 見ると、ルークはもちろん、他の冒険者たちも姿勢や足の動かし方を厳しく指導されている。

 並んでいる騎士たちは制服を着ているが、全員が同じではなかった。

(おっと、集中だ)と三人は気を引き締めた。


 ルークの素振りは、見惚れるほど綺麗だった。

 少し離れた場所では、フェルナンドが腕を組んで全体を見渡している。

 たまに誰かのところへ歩み寄っては、一言二言と言葉を交わしていた。


 アンディの剣筋は強そうだが、綺麗とは言えない。だが、それを直してはいない。

 たまにフェルナンドがそばに歩み寄り、二人で真剣な顔をして共に剣を振りながら話し合っている。


 三人は汗だくになるまで剣を振り続けた。

 しかし、その後に始まったのは、なぜかスリングショットの練習だった。

 子どもの頃に遊んだ感覚を思い出しながら狙いを定めると、指導の騎士に「三人とも上手いな」と褒められた。


 翌日、全身が筋肉痛だった。動けない。


「そうだろうね。余計な力が入っていたし……でも、その痛みは治さない方がいいらしいから、今日は、このまま頑張って」


 ルークはそう言いながら、彼らの痛む体に歩調を合わせてゆっくりと歩いてくれた。


「いててて……」

「腕が上がらん」

「なんでこんなところが筋肉痛になるんだ」


 訓練場でも三人が痛みにうめいていると、指導の騎士たちが笑った。


「そこは普段、使ってなかった筋肉だからな」


 後になって知ったことだが、そこはアガペーナ王国とハイタック王国の騎士団が合同訓練を行う、極めて重要な場所だった。

(なぜ自分たちがこんな場所にいるんだ?)

 疑問は深まるばかりだった。



 そして数日後、三人は王宮にいた。

 ルークに「行くよ」と言われてついて来ただけなのだが、案内されたのは会議が行われるという豪華な部屋だった。


 ルークに言われるまま隣に座ったものの、あまりの場違い感に身の置き場がない。

 部屋には、一目で強者だと分かる自信に満ちた冒険者たちや、異様な威圧感を放つ制服姿の騎士たちが並んでいた。

 そして中央に座るフェルナンド。その隣に、ルークと自分たち。


「神子様だから参加するのは分かる」


 ビルが小声で囁く。


「俺たちは?」

「おまけだろ、きっと」


 ケントが苦笑交じりに答える。

 難解で退屈な会議が進む中、面白かったのはルークが、時々こっそり欠伸をしていたことだ。

 それを見て、三人も欠伸を噛み殺した。


 だが、最後に放たれたフェルナンドの一言で、眠気は完全に吹き飛んだ。


「現在、瘴気だまりを捜索中だ。発見次第、出発する。各自、鍛錬を怠るな。特に弓とスリングショットの練習を重点的に行え。得意ではない者もいるだろうが、瘴気に対しては極めて有効だ。各自の奮闘に期待する」


 ――スリングショットって言ったか? どういうことだ?



いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。

よろしくおねがいします。


書籍を出すことができました。

挿絵(By みてみん)




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