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「神子の余分」と言われましたが、中身は最強の神子でした ~入れ替わり召喚で捨てられた僕が、木の実と石で世界を浄化するまで~  作者: 朝山 みどり
第四章

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75  ルークの反対

 75  ルークの反対


 瘴気の探索に出ていたパーティーが、次々と戻ってきた。

 机の上の地図には、次々と赤い印が書き込まれていく。


「ここだな」


 フェルナンドは地図を見下ろした。

 報告された場所にはわずかなズレがあったが、どれも同じ一帯を指している。

 ついに瘴気の中心地を突き止めたのだ。


「間違いない」

 二人の騎士団長も、真剣な面持ちでうなずいた。


「待っていても被害は増えるだけだ。今、叩く」


 フェルナンドの声に迷いはなかった。

 目的地までは二日ほどの野営が必要になる。騎士団二隊と冒険者部隊、計三方向から包囲する形で進軍することが決まった。


 その話を聞いたルークは、当然のようにジョン、ビル、ケントの3人は留守番だと思っていた。

 ところが、

「え?」


 参加者名簿に3人の名前がある。

 ルークは思わず紙を二度見した。


「これは、どうしてですか?」


 真顔でフェルナンドを見上げる。


「3人も行くんですか?」

「ああ、そうだ」

「だめですよ!」


 ルークが珍しく大きな声を出す。周囲の大人たちが思わず苦笑した。だが、ルークは本気だった。


「まだ剣を習い始めたばかりです。そんな危ない場所に行くなんて……!」

「それがなぁ」


 アンディが困ったように頭をかいた。


「ルーク、3人とも行く気満々なんだよ」

「スリングショットの腕前は凄まじいぞ。足手まといにはならん」


 フェルナンドの言葉にも、ルークは納得がいかない。相手は大切な恩人なのだ。


「やぁ、ルーク」


 振り返ると、ジョンたち3人が歩いてくるところだった。ケントが笑いながら手を上げる。


「一緒に行けるな」

「いきなり実戦とか、手が震えるぜ」

「なに言ってるんですか!」


 ルークが鋭く遮ると、3人はびっくりして目を丸くした。


「え? ルーク? どうしたんだよ」

「どうした、じゃないです! 危ないって言ってるんです!」

「危ない? なにが?」


 ビルが不思議そうに首をかしげると、ルークは一歩詰め寄った。


「行くこと自体が危ないんです!」

「危なくないよ。ルークも一緒だしさ」


 ジョンが言うと、他の二人もうなずく。


「ルーク、大丈夫だ。俺も問題ないと判断して連れて行くんだ」


 フェルナンドがルークの肩を抱くようにして言った。


「えぇ……」


 ルークが不満げに声を漏らす。すると、ケントが静かに、だが芯のある声で言った。


「俺たちは、アガペーナでやっていくと決めたんだ」

「いつまでも雑用係じゃ終われないからな」

「それに、こんな大きな討伐に参加できる機会なんてそうそうない。足を引っ張らないように頑張るからさ」


 ジョンも真剣な目をしている。3人には、それぞれしっかりとした覚悟があった。

 ルークは3人の顔を見回し、しばらく黙り込んだあと、小さくため息をついた。


「……危ないところには行かない?」

「行かない」

「無茶もしない?」

「しない」

「勝手に前へ出ない?」

「出ない」


 3人が口を揃える。

 ルークがまだ疑わしそうな顔をしているので、フェルナンドたちは笑いをこらえるのに必死だった。


 やがて、ルークはこれ以上ないほど真剣な顔つきになった。3人を順番に見つめ、静かに告げる。


「じゃあ……僕のそばにいてね」


 その声音には、冗談がいっさい混じっていなかった。

 3人は一瞬圧倒されたように目を丸くしたが、すぐにケントがルークの目を真っ直ぐ見返した。


「わかった。約束する」


 ルークは、少しだけ安心したようにうなずいた。


 出発の準備が早かったのは、やはり場数を踏んでいる冒険者たちだった。

 夜明け前には荷物の確認を終え、武器の手入れも済ませている。今回の部隊は大きく回り込むルートを取るため、移動距離が長い。そのぶん早い出発が必要だったため、先行は自然と冒険者たちの役割になった。騎士団との連絡役もそこに同行する。


 フェルナンドが全員を見渡した。


「出発する」


 号令とともに隊列が動き出す。

 朝霧の残る草原を抜け、一行は深い森へと足を踏み入れた。

 鳥の声が響き、木漏れ日が揺れる。一見すると平和な景色だった。

 だが、奥へ進むにつれて魔獣の気配が濃くなっていく。


「来るぞ!」


 斥候の叫び声とともに、最初の牙猪ワイルドボアが現れた。

 だが、慌てる者は一人もいない。

 先ず、放たれた矢が突き刺さり、間髪入れずに石が唸りを上げて飛ぶ。体勢を崩した魔獣を、前衛の剣士が一撃で切り捨てた。


「よし、次だ!」


 誰も気を抜かない。そのまま進み続けた。


 しかし、しばらくして全員が妙な違和感を覚え、足を止めた。

 静かすぎるのだ。森の音は聞こえるし、風も吹いている。なのに、肌を刺すような不気味な気配が漂っていた。周囲への警戒を強める。


「何だ?」

「気配が上から……」


 その時だった。

 ピィーッ! ピィーッ! と、鋭い鳴き声が静寂を切り裂いた。


「鳥だ!」


 上空から黒い影が猛スピードで飛び込んんでくる。小型の鳥型魔獣だ。

 速すぎる。弓で狙いを定める暇もない。剣士が跳び上がるが、魔獣はひらりと翼を翻して上昇していく。


「くそっ! 高すぎる!」


「速いし、小さい」


 鳥型魔獣は木々の間を縫うように翻弄する。二羽、三羽、四羽……。数はまたたく間に増え、冒険者たちの顔に焦りが浮かび始めた。


 ――ドッ!


 鈍い衝撃音が響き、羽が派手に飛び散った。鳥型魔獣がそのまま地面へと落下する。


「当てた!? 誰だ!」


 驚きの中、ジョンはすでに次の的へスリングショットを構えていた。

 ――ドッ!

 二羽目がきりもみ状態のまま落ちていく。ビルはもう次の獲物に狙いを定めていた。


「よっしゃ!」

「やるじゃねぇか、お前ら!」


 さらに三羽目、四羽目。

 小気味いい衝撃音が響くたびに羽が舞い、魔獣が地面へ叩き落とされていく。そこからは完全に3人の独壇場だった。


「右だ!」

「任せろ!」

 ――ドッ!

「後ろ!」

「おう!」

 ――ドッ!

「上から来るぞ!」

「落とす!」

 ――ドッ!


 落ちた魔獣を、地上の剣士たちが素早く仕留めていく。

 やがて、最後の一羽が地面に落ちると、森に静寂が戻った。


 誰からともなく、拍手が沸き起こる。


「すげぇぞ!」

「助かった! 鳥相手じゃ手も足も出なかった!」

「連れてきて大正解だったな!」


 ジョンは照れくさそうに頭を掻いた。

「いやぁ、たまたまですよ」

「たまたまで何羽も落とせるかよ!」


 冒険者が笑い、ビルも嬉しそうに顔をほころばせる。ケントは少し得意げに肩をすくめた。

「練習した甲斐がありました」


 そこへ、ルークが歩み寄ってきた。本当に驚いたような顔をして3人を見つめ、それから、心の底からほっとしたように笑った。


「よかった。……いてくれて、本当に良かった」


 その言葉に、3人は顔を見合わせた。


 ルークはずっと反対していた。それは自分たちの身を案じてくれているからだと知っていた。


 だからこそ、認められたその言葉が、何よりも嬉しかった。


 少し離れた場所で、フェルナンドが口元を緩める。


「拾い物だったな」


 騎士団の連絡役も、深くうなずいた。


「ええ。あれは立派な戦力です」


 森の奥では、まだおぞましい瘴気が待ち受けている。だが、この仲間と一緒なら恐れるものはない。彼らは力強く、再び前を向いて歩き出した。

いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。

よろしくおねがいします。


書籍を出すことができました。

挿絵(By みてみん)




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