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「神子の余分」と言われましたが、中身は最強の神子でした ~入れ替わり召喚で捨てられた僕が、木の実と石で世界を浄化するまで~  作者: 朝山 みどり
第四章

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71 神子の力

71 神子の力


今回同行したアガペーナ王国の冒険者たちは、瘴気の探索を得意とするパーティだった。


彼らは地元の冒険者を案内役につけ、森や丘陵地帯へ散って調査を開始した。



集まった報告はどれも似た内容だった。


「瘴気の影響を受けた魔獣を確認」


「こちらも同じです」


「群れは形成していません。広範囲に散らばっています」


「どこかへ向かっている様子もありません」


地図の上に印が増えていく。


フェルナンドは腕を組み、額を押さえた。


「面倒だな」


魔獣が一か所に集まって、こちらに向かってくれば全員で戦えた。


だが実際は逆だった。


森にも丘にも谷にも散らばっている。


一匹ずつ、あるいは小集団ごとに潰して回るしかない。


机の横ではルークが石や木の実、それに矢へ次々と付与を施していた。


淡い光が指先から流れ込み、石がほのかに輝く。


その作業を続けながらルークが顔を上げた。


「フェルナンド」


「どうした?」


「順番に片づけるしかなさそうですね」


フェルナンドは苦笑した。


「結局それか」


「はい」


ルークはこくりと頷いた。


「急がば回れです」




ギルド職員が入って来た。


「ルーク殿」


「はい」


「王都のギルドの冒険者が集まりました。付与をお願いします」


「集まったのですね。わかりました」


ルークは立ち上がった。


するとアンディが自然な動きで隣へ寄ってきた。


「付き添う」


「お願いします」


ルークが微笑んで、アンディは肩をすくめた。


「任せろ」


そして二人は部屋を出て行った。


「行ってきます」


その姿を見送りながら、フェルナンドは長く息を吐いた。


「こんな役目は嫌だ。護衛をしたい」と呟いた。


結局、会議の結論はひとつだった。


地道に討伐していくしかない。


半信半疑のハイタック騎士団は、命令に従ってスリングショットの練習を始めた。


最初は失敗ばかりだった。


石があらぬ方向へ飛び、狙った木にも当たらない。


それでも何度も繰り返し、少しずつ命中率を上げていった。


そして数日後、アガペーナ騎士団との合同討伐が行われた。


森の中、先頭を進む案内役の冒険者が手を上げる。


全員が足を止めた。


「もうすぐです」


小声で告げる。


「前方百メートルほど」


緊張が走った。


草むらの向こうから低いうなり声が聞こえる。


ハイタック騎士団の若い騎士が唾を飲み込んだ。


初めて見る瘴気に侵された魔獣だった。


赤黒い毛並みと異様に膨れた筋肉。


黄色く濁った目、ただ立っているだけで禍々しい。


「弓の方、お願いします」


案内役が囁いた。


弓隊が前へ出る。


弦が静かに引き絞られる。


アガペーナ騎士団の隊長が手を上げた。


全員が息を止める。


そして、振り下ろした。


ヒュッ!


付与された矢が飛ぶ。


一本、二本、三本。


魔獣へ突き刺さった。


「ギャアアアア!」


魔獣が絶叫する。


そのままこちらへ突進してきた。


「今だ!」


号令が飛ぶ。


全員がスリングショットを構えた。


パンッ!


パンッ!


パンッ!


付与された石が次々と命中する。



魔獣がよろめく。


怒り狂っているはずなのに動きが鈍い。


勢いが目に見えて落ちていた。


そして隊長が叫ぶ。


「かかれ!」


アガペーナ騎士団と冒険者たちが、嬉し気に一斉に飛び出した。


ハイタック騎士団は思わず息を呑んだ。あれにかかっていくのか!


剣が閃く。


槍が突き出される。


斧が振り下ろされる。


あんなに容易く。


やがて、巨体が地面へ倒れていく。


ドシン、と重い音が響く。


群れが沈黙した。


討伐完了だった。


若い騎士が呆然と呟く。


「こんなに……簡単に……」


その言葉を聞いたアガペーナ騎士団の隊長が振り返った。


表情は厳しい。


「勘違いするな」


その一言で空気が引き締まる。


隊長は倒れた魔獣を剣先で示した。


「これが浄化の力だ」


誰も口を挟まない。


「石も矢も、そして我々の武器もだ」


隊長は周囲を見渡した。


「戦いやすくなる付与が施されている」


ハイタック騎士たちは真剣な顔で聞いている。


「今見て、効果は理解できただろう」


隊長の声は低かった。


「だが」


そこで言葉を切る。


「いきなり切りかかるのは無謀だ」


森が静まり返る。


「まず矢で削れ、次に石で弱らせろ、それから近接戦闘だ」


一人ひとりを見据える。


「順番を守れ」


若い騎士が背筋を伸ばした。


隊長はさらに続ける。


「付与があるから勝てた」


「お前たちが急に強くなったわけではない」


その言葉は重かった。


「強くなったと勘違いするな」


誰も反論できない。


「いいか」


隊長は最後に念を押した。


「決して間違うな」


森の中で、ハイタック騎士団は無言でうなずいた。





いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。

よろしくおねがいします。


書籍を出すことができました。

挿絵(By みてみん)




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